リオで開催されているオリンピックも、21日(日本時間明日8月22日)の閉会式をもって終了。4年後の2020年に我が国で開催予定の第32回大会に向け、抑えておきたいキーワード「アンブッシュ・マーケティング」が正確に理解できる本がでていましたので、ご紹介しておきます。





アンブッシュ(ambush)とは、「待ち伏せ」の意味。スポンサーの協賛によって世界規模で開催するイベント(オリンピックやFIFAワールドカップサッカーなど)に便乗し、そこで用いられる著名又は周知な商標の顧客誘引力を当該イベントの運営団体に許諾なく利用する表示・販売活動のことを、アンブッシュ・マーケティングといいます。

私も知らなかったのですが、オリンピック開催国(都市)として立候補するにあたっては、IOCに対しこのアンブッシュ・マーケティングを行わない・行わせないことを誓約する必要があり、すでに日本国政府としてこれを保証している状態だそうです。実際、過去開催国の中国が2001年に・英国が1995年と2006年に・ブラジルが2009年に、いずれもそのためだけのOlympic Actを特別立法しているとのこと。本書では、これら各国の立法状況と内容を分析し、日本においてそのような特別法を立法する必要の有無を検討します。

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その結論は、

我が国においては、商標法又は不正競争防止法により出所表示機能を果たす態様の使用の場合を除き、著名又は周知な商標の【原文ママ】使用した場合であっても、顧客誘引力を有する商品・役務その事業者と関連があるかのような表示、あるいはその事業者から承認、許諾、支援等を受けているかのように表示する行為について、不正競争防止法、景品表示法及び独占禁止法のいずれも行為規制の対象と考えることは困難であり、他国で制定されているアンブッシュ・マーケティング規制法の基礎となる法や法理は存在しない(P163)

ということで、政府保証をきちんと担保したいのなら立法が必要であると。しかし一方で、IOCが要求する押し付けともいえる内容をそのまま法文化すると過剰な規制となることは明白であり、そうならないよう、厳格な要件を付した適切な範囲での行為規制とすべきである、と主張します。


2020年の東京オリンピックのアンブッシュ・マーケティング規制については、この8月に入ってからもJOCが新たにガイドライン「大会ブランド保護基準(Ver3.1 2016 August)」を出しています。これを見ると、上述のとおり現時点の日本においては法的な根拠がないにもかかわらず、さもそれがあるかのように、「2020年という年号に引っ掛けてカウントダウンを行うような表現もアンブッシュである」とまで踏み込んでいます(P13)。権利を守りたい当事者側の発言とはいえそこまで言ってしまうセンスに疑問を感じざるを得ませんが、著者が懸念しているように、明らかに萎縮効果を狙ってのものでしょう。

JOCguide


表現の自由を守る者として少なくとも中立的な立場であるはずの報道機関の記事なども、こういったIOCやJOCのガイドラインに盲目的に従うべしという偏った論調が妙に目立ち違和感を感じていたところですが、パートナー一覧(P04)をみて納得。読売・朝日・日経・毎日といった報道機関自身がスポンサーになってるんですね・・・どうりで(ry。

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著者のいう適切な立法がTOKYO2020に間に合うかどうかはかなり怪しいところだと思いますが、法務パーソンとしては、法律に基づいた冷静な判断に努めたいものです。