Googleの方から、Google発の公共政策情報誌『g-SPHERE』をお分けいただきました。一般配布はされていない貴重な冊子とのこと。特別にこのブログでのご紹介をご快諾くださいましたので早速。

バックナンバーとしていただいた2013.Octの創刊号ご挨拶を読むと、
インターネットの世界を最先端の技術で牽引することを自ら使命とするグーグルとしては、技術がもたらすそのような経済・文化・社会の変化についても常に広く視野を保ち、技術がよりよい社会を作っていくための諸条件を検討し、その結果を社会に還元していくことも同様に重要な任務と考えています。
インターネットと社会の接点に関わる様々なステークホルダーの方々と共同研究や情報交換・意見交換を行っており、その成果も社会とインターネットの在り方を考える上で非常に貴重な知見・経験となっています。こういった情報を少しでも日本の政府・学会・業界の方々と分かち合うために、この度不定期の政策情報誌『g-SPHERE』を創刊いたしました。
とあります。察しの良い方はお分かりかもしれませんが、昨年末ご紹介した『パブリック・アフェアーズ戦略』を、グーグルはこの日本においてもすでに実践している、というわけです。
私は、Googleという会社はAppleと違って、思想を自らの口で語って世の中を動かそうというよりは、誰もが使える便利なサービスをシンプルかつ洗練された形で提供することによって、結果的に行動ベースで世の中を変えてしまう、“無機質な革命者”というようなイメージを勝手に抱いていました。そのGoogleが、紙冊子という超ローテクな手段をあえて採用し(現段階ではまだウェブ上でも見られないそうです)、「私たちはこう思います」という意志を特定のステークホルダーに届けようとしていることに、まず驚きました。
最新号である2014.Feb号には、一昨日のNHK-WEBの記事も話題となっている今がまさに旬なお二人、慶応義塾大学の新保先生とヤフー株式会社の別所氏によるプライバシー対談が掲載されています。学会と産業界(しかもある種競合会社)の大御所を、このような一企業の広報誌に招いて対談させているところもすごいですが、本誌自体がある一定の知識と理解力のある読者層を想定しているとあって、一般紙よりもハイレベルな次元で、お二人が本当の意見交換をしている様子が伺えて、読み物としてかなり貴重なものとなっています。

――日本のプライバシーないし個人情報に関する法制度は、イノベーションの阻害要因になっているとお考えですか。
新保 私は阻害しているとは思いません。その理由は、現行の個人情報保護制度は、それほど事業者にとって厳しい法律ではないからです。例えば「第三者提供の制限」については原則本人同意ではありますが、オプトアウト(規定の適用除外)の手続きで本人の同意なく提供できるからです。これは、おそらく日本と米国の金融サービス近代化法など一部の法律に限られます。ですから、例えば検索エンジンについて言えば、過去に著作権法によるイノベーションの阻害があったと思いますが、個人情報保護法について言えば、現行制度はイノベーションを阻害していません。もし阻害している面があるとすれば、いわゆるレピュテーションリスク(風評リスク)と言われる社会の非難に対する萎縮効果はあるでしょう。
別所 制度や仕組みの面からすると新保先生がおっしゃる通り、イノベーションの阻害はないと思います。ただ、実態面では制度設計通り、影響が出ずに済んでいるかというと、そうではないと思います。確かに多くの企業はレピュテーションリスクを意識しています。また、自分たちで法律を読み込んだ上で線引することができず、白黒はっきりさせられない企業も少なくないのが現状です。それが結果としてイノベーションの促進に影響していると言われる素地になっていると理解しています。
冒頭、こんなパンチの打ち合い(笑)からいきなりはじまったかと思えば、
別所 今の個人情報保護法は、いわゆる「個人情報」という記号を保護する法律で、プライバシーを保護する設計はされていません。現行の法律は記号がパブリックの要でありながら保護対象になっているのです。そこのところは非常にバランスが悪い。
一方で、プライバシーは公になっている情報に関して一定のバランスで自分の情報が秘匿されるべきというところから発達した概念です。そのバランスの取り方が制度設計に入れられるかが重要で、定義だけではバランスが取れませんから、そこは企業がきちんと考えて調整する必要があると考えています。
と、最近発言のたびにネット上で炎上を招きがちな別所さんのヤフージャパンとしての主張も、この対談だとクリアに言いたいことが伝わってきますし、また、マルチステークホルダープロセスを採用できるのか?という問いについて、
新保 これは国の考え方と私の考え方は違います。国の考え方は、民間の自主的取組みを尊重する形のマルチステークホルダープロセスではありません。なぜそうなるかというと、日本にはステークホルダーがマルチに存在しないからだと思います。そもそもステークホルダーが偏っていてバランスの取れた議論ができない。まずはマルチステークホルダープロセスを実現する前段階として、個人情報、プライバシー関連のステークホルダーをきちんと育てる。そこから始めない限り、今までのガイドラインの検討と変わらなくなってしまうと思います。
と、話しやすい媒体だからということもあるのか、いつもはいかにも学者然とした新保先生の物言いも率直かつ明快。とにかく、読んでいてスリリングかつ大変ためになるハイレベルな本音の対談になっていて、この対談記事だけでも参考になる方は多いのでは、という感想を持ちました。バックナンバーだけでも、ウェブで公開されるようになるといいですね。
私も、人づてにではありますが省庁の方に意見を聞いていただく機会が最近増えており、民間が困っていること・将来について不安に思っていることをどうしたらそういった方々にご理解いただけるかを考えるようになりました。私が所属する企業はまだまだ『g-SPHERE』のような大々的なアプローチを取る予算もなければ規模でもありませんが、このような民間サイドの動きに協調して、企業として伝えるべきことを伝えていきたいところです。また、私個人で言えば、このブログも微力ながらその一手段であれたらなとは思っていますので、そういう視点からの記事も少し意識して書いていきたいと考えています。










