企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

著作隣接権

【雑誌】サイゾー 2017年6月号 ― 音楽・映像ビジネスにかかわる著作隣接権を理解するための業界構造基礎知識

 
久しぶりの雑誌紹介。しかも法律雑誌ではなく、まさかの「サイゾー」(笑)。ですが、今号の特集「芸能界の(禁)基礎知識」は、エンタメロー・知的財産を実務で取り扱う方には一読の価値ありな特集になっています。





法務パーソンが著作権法の勉強をしている中で、わかりにくさ・もやもや感を最も感じるのが著作隣接権であることは間違いないでしょう。試しに、著作権法の基本書の中で読者フレンドリー度No.1な中山『著作権法』で著作隣接権の概説をひもといても、

著作物の伝達には物流と異なった特性があり、法で特に保護する必要性が高いものもある。(略)そこで著作権法は、実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者の四者につき、著作隣接権という特殊な権利を与えて保護している。(P537)
1961年にユネスコとベルヌ条約同盟と国際労働機関(ILO)の共同開催による隣接権条約外交会議において「実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(略)が締結され、1964年に発効したが、わが国は1989年(平元)に加入書を寄託し加盟した。わが国がこの条約に加盟した時期はかなり遅いが、条約加盟に先立ち、条約の考え方自体は現行の当初から著作権法に取り込まれており、昭和45年著作権法全面改正で著作隣接権制度が創設された。(P538)
著作隣接権の根拠としては、著作物の伝達行為の準創作性を挙げる者が多い。(P539)
著作隣接権が必要となった必要となった最大の要因は、情報伝達技術の発展である。(略)例えば実演がレコードに複製され、それを放送で利用するという関係において、実演家・レコード製作者・放送事業者等の間での利益をいかに分配するかという問題を巡り、それらの間の権利調整のための複雑な規定が設けられている。(P540)

と、法律書らしからぬふわふわとした解説が延々と続きます。真剣に法律を勉強しようとしているこちらとしては、「必要だから法律になったのだ」と言われても、どの教科書を読んでもどうしてこれが必要になったのかという経緯も詳しく説明されないだけに、本当にこんな複雑な規定を設けてまで権利を認める必要があるのか?という疑問が先立ってしまい、なかなか頭に入ってこないわけです。少なくとも私はそうでした。

ご紹介のサイゾーの特集は、田辺エージェンシーの田邊社長が、GSブームの先駆けとしてスパイダースを結成し、自らバンドプロデュースをしながらトップ芸能プロの社長として名を上げていく過程を中心に描きながら、芸能プロダクション・レコード会社・テレビ局がそれぞれどういう立ち位置でイニシアティブを争ったかという芸能の近代史をおさらいした上で、彼ら著作隣接権者の団体である芸団協や音事協が権利処理団体として運営にかかわるCPRA・aRma・BEAJ・sarahなどとJASRAC・RIAJをはじめとする周辺法人との関係を概説してくれています。

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この手の業界基礎知識を知ったうえで著作隣接権の理解を深めたいと思っても、無味乾燥な当該団体の自己紹介、正確性に欠けるゴシップ誌、ネット記事等の断片的な情報を読みつなぐしかありませんでした。どうしても法律的な背景を正確に理解したい部分があれば、私の場合は『アプリ法務ハンドブック』でもご一緒したエンタメロー分野に特にお詳しい鎌田真理雄先生や東條岳先生をお訪ねし、無理を言って教えていただいたりしていました。いつもはブラックジャーナル臭がかなり強いサイゾーさんですが、今回の特集は比較的冷静に淡々と事実をまとめている印象です。

というわけで、著作隣接権の背景を深く理解したいという方にぜひ。

沖野修也が完全合法ストリーミングDJという夢を実現してくれた夜を、私は決して忘れない

 
2週間ほど前に、こんな記事を書きました。

Ustreamなどのストリーミングサービスを使ってDJをすることの違法性をどう解消すべきか(企業法務マンサバイバル)
レコード・CDになっている音源を使ってDJプレイをし、これをインターネットにストリーミング配信で流すということになると、これは上演権・演奏権の問題ではなく
  • 著作者(曲の作曲・作詞者)が持つ楽曲の「公衆送信権」
  • 実演家(曲の演奏者)が持つレコードに収録されている実演の「送信可能化権」
  • レコード製作者(レコード会社)が持つレコードの「送信可能化権」
が働くため、この3者からそれぞれ許諾をもらわなければならないのです。
DJは、役割上たくさんの曲を次々に掛けることが求められます。しかも、その時のお客さんの反応にあわせて曲を変えていくため、どの曲を使うかあらかじめ分かるはずもありません。従い、許諾を一人一人・一社一社からあらかじめ許諾を得ておくというやり方は、あまりにも非現実的です。
権利者側で権利処理を不便なままにしておきながら、権利に基づく差止・損害を主張するようなことはやめて頂きたいですよね。是非この一元管理事業を個人も対象に構築して頂き、1日も早くUstDJを合法的に行えるようにして欲しいところです。

書きながら、もしかしたら、日本では著作権管理者側の怠慢のせいで一生合法なストリーミングDJは聞けないのかもな・・・と思っていたのですが、2週間経つか経たないかのうちに、この超えられないかに思えた壁を超えて下さった方がいます。

まさにその歴史的瞬間を捉えた画像がこれ。

s-syuyaokino_ustdj

(Ustreamに保存されている動画はこちらから)。


“原盤権の壁”を乗り越える力がこれからのプロDJには必要

渋谷のクラブ“The ROOM”から、深夜0:00〜1:00のUstream生中継。
DJは、このクラブ“The ROOM”を自身で主宰し、『DJ選曲術―何を考えながらDJは曲を選び、そしてつないでいるのか?』という本(ニッチですが名著です)も書かれている、日本でも指折りのプロDJ、沖野修也さん。


その沖野さんが著作権管理団体登録前の曲のみを使ってDJプレイをする、という予告を見て、twitterでこんなつぶやきをしたところ、


すかさず沖野さんから直接回答が! つまり、著作権はもちろんのこと、一番のネックである(通常レコード会社が持ってしまう)著作隣接権をもきちんとクリアする曲だけを使ってDJするという、超模範的試み。誰もが考えはするものの、簡単には真似のできない手法です。

いやしかし、もしかすると、これからのDJには、こんな風に著作権管理団体やレコード会社に世話にならずに原盤を自分で集めたり作ったりするコーディネート&パブリッシング力も問われていくのだろう・・・なんて考えているうちに、いよいよ迎える深夜0:00。


後ろめたさのない気持ちよさ

そこに参加する全てのtwittererが驚くストリーミングとは思えないクリアな音質。ちょっと切なめJazzyなハウス曲を中心としたストライクゾーンな選曲。そうこうしているうちに、Ustの視聴者数は上の写真を撮った0:30時点で1、200人、最終的には1、600人を超え、twitter上でもハッシュタグ#theroomshibuyaを中心に祭りが起こり、私のtwitter上のTLにいた(普段はクラブに行かないような)皆さんも巻き込んで、

私自身も、渋谷ROOM=本物のハコで行われている沖野修也=本物のプロDJのプレイが無料かつ自宅で聴けるという幸せを噛み締めながら、思わず出た言葉。


もちろん、音圧があり・酒があり・仲間がいるクラブにはクラブの良さがあるけれど、どちらかといえば限られた一生の中で少しでも多くの良い音・曲・DJに出会いたいという私のような人には、一番自分にあった音の環境(自宅)で、世界のDJがプレイする“擬似クラブ”をMacBook片手に気軽に渡り歩けるこのストリーミングスタイルクラビングがやっぱり最高。完全合法で後ろめたさがない点も、この気持ち良さに拍車をかけたに違いありません。

そして、大盛況の中午前1:00ジャストに終了。クラブ生中継型UstDJのもう一人の敵、風営法にも完全対応(苦笑)。


色々な困難を乗り越え、こんなにも早いタイミングで、クラブ生中継スタイルの完全合法ストリーミングDJを実現してくださった、UstDJの鑑、プロ中のプロDJ、沖野修也さんに感謝します。
「今後もThe ROOMから色々仕掛けていきたい」とおっしゃっていたので、本当に期待してます。
 

Ustreamなどのストリーミングサービスを使ってDJをすることの違法性をどう解消すべきか

 
みなさん、Ustream(通称Ust)という無料のストリーミング動画配信サービスをご存知でしょうか。

iPhone1台(もちろんPCでもok)あれば、世界どこにいてもネットを使って生放送ができてしまうというサービスのこと。
元々は2008年のアメリカ合衆国大統領選挙で候補者達が双方向ディベートをストリーミングしたのがブレイクの始まりで、日本でも、昨日の小沢幹事長の検察任意聴取に対する会見を(地上波がどこも中継しないなかで)このUstを使って中継したことで、メジャーになりそうな感じが漂ってきました。知らなかった皆さんは名前だけでも覚えておくことをおすすめします。

で、私が今ハマっているのが、このUstのサービスを通して、夜な夜な自宅からDJプレイの模様を中継されている人を見ること。

UstでDJしているところを画面で見るとこんな感じ。

s-ustdj2

今何人視聴しているかがわかるだけでなく、画面右側に視聴者のtwitterのつぶやきを表示することもできるので、インタラクティブ性も確保できるというところもUstの特徴です。こんなのが無料というところが凄い。

UstDJの法的問題


ところが、このストリーミングDJという行為は、お察しのとおり著作権法上は真っ黒なわけでして・・・。

クラブでDJするだけであれば、JASRAC管理曲のレコード・CDを掛ける限りにおいて、JASRACのこの手順に従ってお店が申請をし面積・集客に応じたお金を払うことで「上演権・演奏権」の処理がなされ、ほぼ著作権上の問題はクリアになります(著作者の名誉を汚すようなことの無いように曲を利用する「著作者人格権」への配慮も念のためお忘れなく)。

しかし、レコード・CDになっている音源を使ってDJプレイをし、これをインターネットにストリーミング配信で流すということになると、これは上演権・演奏権の問題ではなく
  • 著作者(曲の作曲・作詞者)が持つ楽曲の「公衆送信権」
  • 実演家(曲の演奏者)が持つレコードに収録されている実演の「送信可能化権」
  • レコード製作者(レコード会社)が持つレコードの「送信可能化権」
が働くため、この3者からそれぞれ許諾をもらわなければならないのです。

天下のJASRACも、著作権者の「公衆送信権」をライセンスする権限はあるものの、著作隣接権者の「送信可能化権」までは管理をしていないんですね。
たまに「JASRACに申請を届け出て金を払えばいいじゃん」と言う方がいるんですが、それではライセンスは1/3しかクリアできないわけです。ここがUstDJにおける最大の課題です。

商用配信と割り切れば、公衆送信権はクリアに


ではまず、著作権者の公衆送信権の処理から。

これ、UstDJでお金を頂こうとは思わない限り、非商用配信の申請をお考えになるのだと思います。

ところが、この非商用配信の契約ではこんな落とし穴があることが、しらっとQ&Aに書いてあります。
ストリーム形式の場合、許諾手続き以降も内国曲しか利用しない場合に限り、同規程第7節ビデオグラムの手続きは不要とします。
一方、外国曲を利用する場合、ほとんどの外国曲(洋楽)については、基本使用料(=映像に音付けすることに関する使用料および映像に同調させて録音することに関する使用料)が、JASRACの規定どおりではなく、権利者の言い値になります。
したがって、外国曲を利用する際には、事前に日本で窓口となっている権利者(サブ音楽出版者)に直接お電話していただき、基本使用料額を取り決めたうえで、その額を私共JASRACにお支払いいただくことになります。
がっかりな規定ですが、まあ色んな権利調整の末、こんな例外規定が置かれてしまったようです。

これをなるべく面倒無くクリアするには商用配信の無料提供という考え方でJASRACに利用申請→許諾を得るのが近道っぽい。料金は非商用配信とそれほど変わらないようですが、なんかイマイチな感じなので、JASRACには、権利者側と相談頂いて早期にこの非商用配信の規定の改善をお願いしたいところです。

著作隣接権者の包括許諾を容易に取得できる仕組みが必要


そして、残る著作隣接権である送信可能化権の処理について。

再びJASRACのQ&Aより。
市販のCDを音源としたデータをインターネットラジオで流す
→著作権の手続きの前に、レコード製作者、アーティストなどの著作隣接権について許諾が必要です。ご利用になる楽曲ごとに直接レコード会社へお問い合わせいただき、許諾を得られない場合は、その音源の利用を控えてください。

DJは、役割上たくさんの曲を次々に掛けることが求められます。しかも、その時のお客さんの反応にあわせて曲を変えていくため、どの曲を使うかあらかじめ分かるはずもありません。従い、許諾を一人一人・一社一社からあらかじめ許諾を得ておくというやり方は、あまりにも非現実的です。

なんとかスムースに実演家やレコード製作者から著作隣接権の包括的許諾を得る方法がないものか?探したところ、日本レコード協会と日本芸能実演家団体協議会が06年からネット配信許諾業務を代行しはじめていたのですが、これが完全に放送事業者向けの規約になっていて個人では使えず。きっと個人相手は面倒過ぎて放棄したんでしょう。

と諦めかけていたところ、ネット配信する際の著作隣接権を一元管理する著作権情報集中処理機構なる団体が出来ていることを発見。今年の4月から活動開始とのことなので、ここが個人でのストリーミングの権利処理までを対象にしてくれれば、著作隣接権の問題がすべてクリアになる可能性が出てきました。
著作権情報集中処理機構は音楽著作権管理事業者と利用者の間に立ってコンテンツ流通促進のため権利処理負荷を軽減するための団体であり、著作隣接権の一元化を担う機能はないとのご指摘をtwitter経由で頂きました。あわせて、映像コンテンツの著作隣接権処理に関わる業務の一元化を担う映像コンテンツ権利処理機構が発足予定との情報も頂きました(22:55追記)。

いずれにせよ、これまで権利者側で権利処理を不便なままにしておきながら、権利に基づく差止・損害を主張するようなことはやめて頂きたいですよね。是非この一元管理事業を個人も対象に構築して頂き、1日も早くUstDJを合法的に行えるようにして欲しいところです。

参考:
ストリーミングのDJに著作権処理は必要?(Sound & Recording)
著作隣接権て何ぞや(「ハック」〜インターネットラジオ便乗サイト。〜保存庫〜) 
【本】マルチメディアと著作権?DJ兼ビジネスブロガーな私が「創作者とユーザーが紙一重な時代」の著作権法を考えてみた(企業法務マンサバイバル)
 
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