自社だけでない、グループ企業を含めたリスクマネジメント・内部統制をどう設計するか。
Amazonで検索してもいい参考書がしばらく見つからなかったんですが、そのものずばりをテーマにした本をついに発見。
企業集団の内部統制
事業会社で法務・監査に携わる実務家が執筆
「“企業集団”とは果たして法令上どこまでを含むのか」といった、基本的なことでありそうで実はいっぱしの法務パーソンでも反射的には答えられないような部分からスタートしつつ、
一番知りたかったグループならではのリスク管理・内部統制の特異性についても、当然おさえてくれた上で、
そしてこれは期待以上だったのですが、23ページに渡る具体的な「グループ監査用チェックリスト」まで掲載された本書。
このかゆいところに手が届くお役立ち感は、新日鉄、フィデリティ投信、新生銀行、T&Dホールディングス、三井物産といった名だたる事業会社で実際に法務や監査に携わっている実務家が分担して書いたこの本ならでは。子会社を1社でも持っている企業の法務パーソン・内部監査部門の方にとっては、本書が丸ごと役に立つことは間違いありません。
親会社における子会社の管理権限という本質論まで切り込む
しかし、そんな本書のお役立ち感も霞むようなインパクトを私に与えたのが、「子会社管理の権限をどこに求めるのか」というパートのこの記述。
子会社管理においては、通常は、株主としての支配権をその根拠として説明される。
一方で、実際の企業集団に置いては、子会社管理のためだけでは説明のつかない各種の情報の受け渡しが多く行われていることであろう。
大株主の権限として、多少の情報量の多さも認められるべきという考え方も心情的には理解できるが、法的な説明が難しい以上は慎重を期し、親会社と子会社の間で経営管理に関する契約等を締結することで、子会社として情報提供の正当さを担保しておくことが望ましいと思われる。
グループ企業を持つ会社の法務パーソンであれば、日ごろからうっすらと思っていたはずです。
「グループ統制において、株主権による支配とは何なのか・どこまで及ぶものなのか」と。
親会社から見れば子会社は言うことを聞いて当たり前の存在ですが、株主として取締役(会)の構成を支配しているとは言っても、それが委任している取締役の権限を超えて直接にああだこうだと指示できてしまうほどの支配力を持っていいのかと。
一方で子会社から見れば、親会社とは都合のいい時は「教えてください〜」と甘えることができ、一方都合の悪い時は放っておいて欲しい存在なわけですが、そのように子会社が都合良く親会社に情報を提供したりしなかったりというのは、親会社の株主権を冒涜する行為ではないかと。
しかし、株主としてのグループ管理権限が会社法上明確に規定されていない以上、突き詰めて考えると法的な実効性を担保するものがどこにもないというのが、グループのリスクマネジメント・内部統制という問題をややこしくしているのです。
「経営管理契約」による親会社内部統制権の設定
本書はこの点につき、その曖昧な親子の間の統制関係を契約で明らかにすることを勧めています。
すなわち、
・親会社が子会社をモニタリングする事項
・子会社経営にあたり、親会社と協議すべき事項
・子会社からの報告義務
・親会社としての子会社への指導・助言義務
を明文化した「経営管理契約」を結び、会社法上実は明らかでない親会社として子会社に対し統制を働かせる権原、子会社としてそれに応じる義務を明らかにしておくべきということです。
(ちなみにこの本の205ページには、その「経営管理契約」に定めるべき項目事例のサンプルまでついています。)
法的なことに関心が薄い役員クラスの方には、「親子でそんな堅苦しい契約を結ぶとは、なんて荒唐無稽な」と一蹴されるかもしれませんが、グループの内部統制の実効性を法的にどう担保するかという問題について、何度か逡巡したことがある法務・監査担当者であれば、納得感のある解決策と感じられるはず。
そんな本質的な問題提起から具体的な解決策までをも提示するこの本に、内部統制を担当する者としてこの先何度か助けてもらうことになりそうです。









