企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

相場観

【本】慰謝料算定の実務―非財産的損害に対する慰謝料の相場は、100万円がいいところという現実を知れ

 
千葉県弁護士会が、慰謝料をテーマに価値ある資料をまとめて下さっています。

慰謝料算定の実務



死傷事故でもなければせいぜい100万円

個人相手のサービスをしていれば、お客様に対して迷惑・損害をおかけする不幸な事故やミスは発生します。そのミスに対し、容赦なく慰謝料を請求されるお客様もいらっしゃいます。

その慰謝料の相場とは、いかほどなのか。

男女関係、名誉毀損・プライバシー、医療、相隣関係・公害、労働・・・と、14種類の紛争類型ごとに裁判例を一覧表にまとめたうえで各裁判例を検証し、慰謝料額の決定要因にみられる法則を洗い出そうという試み。

裁判所における慰謝料の算定にあたって、特に死傷を伴う事案においては交通事故慰謝料算定のスタンダードとなっている通称「赤い本」(東京三弁護士会交通事故処理委員会による『民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準』)や「青い本」(日弁連交通事故相談センターによる『交通事故損害額算定基準』)によって立つところが大きいと言われています。

一方で、
人格権等の非財産的損害の場合については極めて低額である。離婚事件、名誉については、その社会的地位等によって高額な慰謝料が認められる場合もあるが、多くの場合、このように非財産的損害について、高額な慰謝料が認められることは無く、精神的損害として100万円を下るような低額な慰謝料しか認められない
(同書P10より)というのが日本の慰謝料の現実。

死傷事故損害は「赤い本」に右へならえ、そのような基準が定まっていない分野の損害は算定しようがないから総じて軽視、というように見える裁判実務の判断基準に批判的な立場も表明しながら、今後の展望を述べます。

個人のお客様を相手にするご商売にたずさわる方は、現実の相場観を知るための資料として価値ある本ではないでしょうか。

【本】刑事と民事 こっそりと知りたい裁判・法律の超基礎知識―訴訟社会の相場観

 
冒頭刑事ドラマを引き合いにしながら、刑事裁判と民事裁判の違いという基礎的な部分から訴訟がどういう仕組みと流れで行われるのかを解説してくれる本。

刑事と民事―こっそり知りたい裁判・法律の超基礎知識



「○○なトラブルで訴訟になると××になります」式

タイトルから、そして弁護士が書いている本ということから、裁判上の手続の違いの解説がずっと続く硬派な本かも・・・と思っていたところ、意外にも本の中盤以降はビジネスと日常生活でおきがちな訴訟のケースをいくつも紹介しながら、弁護士の視点で判決の相場観を教えてくれる読みやすい本でした。
仮に時給換算で2,000円の賃金を得ている人が月平均20時間のサービス残業をしていたとしたら、支払われるべき残業代は2年間(24ヶ月)で120万円にもなる。会社側は、裁判の口頭弁論終結時までに、残業代を任意に払わないと、さらに2年分の残業代と同額の「付加金」が加算され、その付加金には5パーセントの利息がついてくる。本来の残業代にも6パーセントの利息がつき、退職した場合はさらに利息は上がり、14.6%の利息がついてくるのである。かなり多額になる。
受けるのが行政処分か刑事処分かは、切られるのが「青キップ」か「赤キップ」かによって決まる。交通違反は種類ごとに「点数」が決められており、程度が重いほど点数も多い。その点数が1〜3点なら青キップ、6点以上なら赤キップだ。
どの程度の痴漢なら迷惑防止条例で済むのかというのはきわめて微妙な問題だが、一般的には、「下着」の外側なら迷惑防止条例、内側なら強制わいせつということになっている。世間の常識と合致しているかどうかはわからないが、少なくとも、われわれ法曹関係者にとってはそれが「常識」だ。
被害者が警察に通報したからといって、ただちに逮捕されるというわけではない。あまりに悪質な場合はいきなり刑事罰の対象となることもあるが、基本的には、まず警察からストーカー行為に対する警告が出される。それに従わず行為をくり返せば、次は公安委員会からの禁止命令。これはいずれも役所からのものだから、行政処分である。その禁止命令にも従わなかったときに、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という刑事罰が待っているのだ。

こんな調子で、弁護士としての経験から行政罰を超えて刑事罰になる一線や、訴訟になった場合の判決の相場観を教えてくれます。
言葉の使い方に気を配らないととたんに難しくなる法律の話を、テンポよく、身近に感じられるネタを取り上げて、とても読みやすく仕上げていると感心します。私もブロガーとして大いに見習わせていただきたいです。 

なお、どちらかというと刑事系の話が多いので、法務パーソンとして業務に役立つ知識というよりは、お酒の席で話すと喜ばれる雑学的な知識が中心にはなっています。

著者の元榮太一郎さんは、アンダーセン毛利から独立され法律事務所オーセンスを開所、それだけにとどまらず弁護士ドットコムの立ち上げ、その他著作活動も活発に行われている若手弁護士。おそらく、この本を書かれたのも、訴訟社会化と法曹人口拡大が進む中で、そういったご自身の活動を世に知らしめるマーケティング活動の一環と思われ、失礼を承知で申せば、商魂逞しい方なのかもと。

溢れるバイタリティをもてあまして、とにかく思いつくことを確実にやりきっちゃうタイプなんでしょうね。
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