企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

源泉所得税

【本】取引スキーム別 契約書作成に役立つ税務知識Q&A ― 検討すべき税目の漏れをまずなくそう


タイトルがすべてを言い表していて、説明が必要なさそうな本ではあるのですが。





よくあるタックスコンサルが書くM&Aの会計・税務に法務目線を絡めた本とも、官公庁OBの方が書く印紙税だけを取り扱ったような本とも違い、
・株式譲渡
・株式引受
・事業譲渡
・組織再編
・ローン
・組合
・匿名組合
・信託
・ライセンス
・サービス提供
・販売代理
・不動産
・雇用・出向・SO
・和解
の取引スキームと契約ごとに、契約書作成に当たって必要な税務知識を横断的にまとめた大変便利な実務書。しかも森・濱田松本法律事務所の大石篤史先生らが執筆されたと聞けば、それだけで買いでしょう。

帯の宣伝文句には「法務部員が“税”を知ると強くなる!」とありますが、すでに必須と言われるようになってきている気もします。とはいえ、契約書起案・レビューに必要な税務知識とは何か?と聞かれて、自信をもって即答できる人はまだまだ少ないんじゃないでしょうか。この本のQ1−1は、その問いにあっさりと回答をくれます。

Q1−1 法人間の取引に関する契約書を作成するにあたり、検討すべき主な税目について教えてください。

A1−1 法人税、源泉所得税、復興特別所得税、消費税、登録免許税、印紙税、不動産取得税、固定資産税などについて検討することが必要です。

クロスボーダーライセンス契約の消費税一つとっても自信がいまいち持てていないレベルの私には、国内/国外取引両方の目線で、かつこれだけの税目をカバーしてもらえるのは、検討すべきことの漏れを無くすという意味で大変ありがたいものです。

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Q&A形式の書籍の限界として、総論と各論の間でどうしてもこぼれてしまう部分が出たり、深堀りが足りないところは出てしまうものの、それでも、この本に掲載された多数の類型と具体的設例を読み通すことで、不課税と非課税、源泉徴収、租税条約、PEの評価ポイントといった税務のキーワードとカンドコロが理解できれば、実務での吸収スピードは格段に早くなると思います。
 

【本】メディア、エンターテイメントビジネスの税務 ― 有料デジタルコンテンツの普及が、新たな源泉所得税問題を引き起こす

 
webによって、誰もがデジタルコンテンツを世に発表できる時代になってだいぶ月日が経ちました。そして、こんな個人ブログでも、広告収入・アフィリエイト収入が得られるのが普通になっています。しかし、これまでは、あくまでも無料コンテンツによって集まったアテンションを広告収入に変えて回収するというモデルがほとんどでした。

それが今、スマートフォン・iPad・Kindleの普及によって、電子書籍・デジタルコンテンツとしてストレートに有料課金するモデルへと変貌してきています。日常はサラリーマンをしているアマチュアライターに有料メルマガの原稿を依頼したり、アマチュアエンジニアにスマホゲームの作成を委託して制作費を支払うような企業も増えていることでしょう。こうして、有料デジタルコンテンツをプロデュースする事業者と、そういう人からの依頼を受けて新たに書き手・クリエイターとなる人は激増していくことと思われます(どれだけ売れるかどうかは別として・・・)。

その際に問題になるであろう法律上の問題が、源泉所得税の徴収です。税の確実・効率的な徴収を行うために、書き手に報酬を支払う立場の事業者に徴収を義務付けているこの税金。電子書籍を始めとする有料デジタルコンテンツの普及によって乱立するであろう“新興デジタルコンテンツ出版社”と“アマチュアクリエイター”が、これまでの無料+広告モデルでは馴染みのない源泉所得税の徴収をめぐって混乱することが、それして課税当局の監視の目も厳しくなっていくことが予想されます。

そんな混乱に巻き込まれる前に、有料デジタルコンテンツをプロデュースする事業者側としての税務を理解しておきたいところ。

Q&A メディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税Q&A メディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税
著者:久川 秀則
販売元:大蔵財務協会
(2008-11)
販売元:Amazon.co.jp



税務の本は数あれど、源泉所得税について絞って述べている本自体がレア。なおかつ、この本では、
・広告代理店
・ゲーム業界
・新聞・出版
・アート・イベント
・芸能プロダクション
・音楽業界
・映画業界
・実演・パフォーマンス
・テレビ・ラジオ
・スポーツビジネス
と、業界ごとに実際に起こりそうなQ&Aを分けてまとめてくれています。デジタルコンテンツというキーワードにこれらの既存業界軸を掛け合わせることにより、源泉徴収という言葉が最近自分の業界でもニオうなあとご心配の方にも、役立つこと請け合いです。

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私はこの本を読むまで、恥ずかしながら、源泉所得税というものが居住者/非居住者の別にこれほどまでにピンポイントで指定されているものであることや、最もポピュラーな原稿料について1回に払われる額が100万円以上になると税率が10%→20%に跳ね上がることなどすら、よく理解していませんでした。

法務部があるような立派な会社ですと、印紙税の貼付判断を経理がするか法務がするかで押し付け合いが起こったりするのが日常茶飯時です。税金については知ったこっちゃないという態度をとっている法務部門も少なくないと聞きますが、やはり契約のあり方によって課税判断が変わる以上、契約文書を司る法務が無関心でいるというのは無責任に過ぎないかと思っています。
 
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