リスクマネジメントは、攻めと守り、リスクとリターンをどうバランシングするかという経営戦略と表裏一体の関係にあります。

間違い無く成功する経営戦略などあるわけもないですし、ましてやリスクをどのようにマネジメントするかという自社の経営戦略をあけすけに公開する企業もありません。コンプライアンスのお手本は手に入っても、リスクマネジメントのお手本が手に入らないのは、リスクマネジメントが経営戦略そのものであって、正解があるわけでもなければ外部に漏らすべきことでもないからなのですね。

そんな拠り所の無い暗闇を手探りで進むリスクマネージャーに、貴重なヒントをくれる本を見つけたので、ご紹介します。

企業のリスクマネジメント



日本の2大企業が門外不出なはずの“お手本”を公開

1章から7章まで、各章を別々の著者が分筆しているのですが、脳機能学者、保険会社取締役、証券会社営業本部長・支店長、経済学者、リスクマネージャー、経営企画担当と、これがまた多彩な面々。

中でも、これは・・・!と目を見張ったのが、松下電器(現パナソニック)のリスクマネージャーと三菱商事の経営企画担当が自社のリスクマネジメントの考え方をかなり詳細に教えてくれる6章と7章。

松下電器からは、
・経営理念とリスクマネジメントの紐付け
・リスクマネジメント方針
・リスク分類
・緊急報告ルート
・危機レベルの分類
・リスクの担当部署一覧
・リスクマトリックス
と、およそリスクマネージャーが知りたいトコロが全部あけすけに披露されています。これって会社的には公開OKだったんですか?とこちらが心配になるほどに。

三菱商事からは、リスクマネジメントの観点を導入した「MCVA」と呼ばれる経営指標を導入するまでの赤裸々な経緯(きっかけはムーディーズによる日本の総合商社批判に対応するためだったそうです)を語ってくださっていて、リスク指標を業績指標と結びつける際の考え方・ポイントが参考になるとともに、読み物としても面白く読ませてもらいました。

慶應義塾大学出版会から出ていることもあり、あまり世の中に数が出ていない本だと思います。絶版になる前の入手をお勧めします。