公開会社法なる法律を作り、上場会社に従業員代表から監査役を選任させることで、労働者を軽視する株主偏重の経営を見直させよう、という考えをお持ちの政治家が少なくとも何人かいらっしゃるようです。
▼公開会社法、11年立法化 監査役に従業員、経済界は反発も
千葉景子法相は4日、上場企業を主な対象に情報開示や会計監査の強化などを促す「公開会社法」(仮称)について、2月にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する方針を固めた。監査役に従業員の代表を選ぶよう義務づけることや、社外取締役を親会社や借入先から選べないようにすることなどが論点となる見通し。
私は、労働者でもありますが、時に株主でもある一人間として、これに反対します。
その理由は、1つは単純に株主が監査役を選任する際の自由(選択肢)を奪うものであるから。そしてもう1つは、従業員代表が1人監査役として入ったところで、ブレーキはかかりこそすれ会社の意思決定が良い方向にドライブするものではないと確信するから。
そんな遠まわりなバランスの取り方ではなくて、もっと直接的に、経営者と対峙しながらも会社を支えているビジネスパーソンの働き方そのものを見直すことで(行き過ぎた株主資本主義があるならそれをうまく修正し)、日本を元気にすることはできないのだろうか。
このことは、私が今いる人材業界に飛び込んできた4年前からずっと考えてきたテーマだったのですが、私が答えを言語化できずのろのろしている間についに本になって出ちゃった、というのがこの本。私にとってはこの4年間で一番の本になってしまったわけです。
『大企業サラリーマン 生き方の研究
サラリーマンの働き方を変えるというアプローチがある
面白いのが、この著者を書いた著者は労働法学や労働経済学の専門家でもなんでもなく、野村ホールディングスのグループHR企画長であるということ。
とはいっても、野村HDの宣伝をするような目的で書かれた本ではなく、著者がその仕事を通じて感じていた「なぜ日本の“サラリーマン”のイメージはこんなにも悪く、しかも企業経営と相容れないかのような存在になってしまっているのか。」という自問自答に会社を離れて回答を出そうとしたものであることが、読んでいて分かります。
そして、その結論としての具体的提案も、私が言語化しようと思って上手くできなかった点を、(さすが野村HDというカネを扱うスペシャリスト集団の人事企画マンだけあって)企業の貸借対照表への影響と労働法実務の両方を踏まえながら練られたものになっており、
・アメリカ型コーポレートガバナンスは、株主のリスク調整後の
キャッシュフローの現在価値を極大化することを目標としている。
・この原理が運営の前提とする財務諸表と日本の労働法を考え合わ
せると、会社にとってサラリーマンに対する賃金の支払は「長期
債務」であり、サラリーマンは「長期債権者」となる。
ということを、キャノン等の企業の貸借対照表を使って示した上で、
1)人的資産と人的債務の双方を(これまでの人件費=費用として
でなく)長期の債務・債権として貸借対照表に載せることで、
経営は「人が資産である」を名実ともに認識すること
2)サラリーマンに対する賃金の後払い的構造を見直し、早期退職
制度を活用すること
3)労働法における契約社員等の曖昧な取り扱いを明確にし、雇用
形態の選択肢を増やすこと
を提案しています。
私も4年間という短い間ではあるものの、労働市場をおもに法律面から見つめてきましたが、著者の主張2)3)に異論はまったくなく、これに1)を組み合わせるという大胆なアイデアには、敬服するばかり。
後は誰がどうこれを実行するか。
人材業に携わる私の立場からは、ビジネス面から主に3)を、あわよくば2)も世の中に提案することはできそうです。しかし、1)を変え、そして2)や3)について法制度面からドライブをかけるためには、政治に携わる方々の力も発揮していただかなければなりません。
公開会社法以外の選択肢も含めて、日本の株主とビジネスパーソン双方にとっての最良の政策を検討していただきたいと、切に願い訴えたいと思います。









