企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

審査

【本】業種別審査辞典―取引審査・与信審査の手がかり探しにこれ9冊

 
取引審査・与信審査にあたり、審査対象会社が営むビジネスが許認可取得の必要がないのか、許認可事業であればどのような規制があるのかなど、その業種ならではの業法の規制などは調べておくべきです。

ですが、これが一体何から調べていいのやら、結構“手がかり”が見つからなかったりするわけで。

そんなときはこの本、『業種別審査事典』。


第12次業種別審査事典〈第1巻〉農業・畜産・水産・食料品・飲料第12次業種別審査事典〈第1巻〉農業・畜産・水産・食料品・飲料
販売元:きんざい
(2012-03-02)
販売元:Amazon.co.jp



金融機関の与信審査のための「辞典」なので、業法などの法規制のみならず、業界の市場規模、需給動向、その業界特有の担保、標準的な支払いサイトの長さなども調査して書いてあるという優れもの。

詳細は出版元のきんざいさんのサイトをご覧あれ。

ただし、全9巻セットで約16万円と安くはない代物ですので、会社の図書費で買っていただくのがよろしいかと思います。

【本】与信管理の実際 ?財務分析―勘定科目に潜む「包蔵損失」を見破るプロの技&お手軽なEXCEL分析ツールをセットでどうぞ

 
前回紹介した『与信管理の実際〈1〉与信管理業務全般』の続編となるこの『与信管理の実際〈2〉財務分析』。


続編ではありますが内容は?とは独立しており、決算書を使った財務分析の手法論のみに絞って解説している本です。

与信管理のためには、決算書を読み込む能力が必要不可欠。一方で「決算書の読み方」本は、私がこれまで紹介しているものだけでもいくつかあります。
「俯瞰」でわかる決算書
決算書の暗号を解け!
経営の大局をつかむ会計 健全な”ドンブリ勘定”のすすめ

本屋にいけばこれらに限らずいくらでもありますし、皆さんもすでに1冊ぐらいはお持ちでしょう。別にこの本を買わなくても与信管理はできそうですが、そんな中でもこの本ならではの特色が2つあります。


1)勘定科目の細部に隠される「包蔵損失」を見破る技

一つは、日商簿記2級レベルの簿記知識があることを前提として、勘定科目の細部にまで突っ込んでいくところ。

対象企業の意図的な仕訳によってその勘定科目の中に「包蔵損失」がどのように隠されていくのかをパターン化して例示し、その見破り方を伝授してくれます。

対象企業の事務所にお邪魔して決算書・帳簿を見ながら審査できるシチュエーションなどでは、相手企業の社長や経理部長クラスに相当なプレッシャーを与えるハイレベルな質問を次々と繰り出せるようになるはず。

ここまでできてこそプロの審査マンとして営業担当の信頼を得られるようになるのだろうなと、読みながら反省した次第です。


2)EXCELを使った財務分析ツール

もう一つは、著者オリジナルの分析ツール「EXCEL版財務分析表」を提供してくれているところ。

1)の技の数々は、まだ簿記知識を身につけていない新任担当者にはどうにもこうにもハードルが高すぎるわけですが、こちらは明日から早速使えるということで即効性が高いですね。

ツールのダウンロードは以下の商事法務のサイトの下の方にあるリンクから無料でできるようになっています。ただし、肝心の使い方はこの本を読まないと分からないかもしれません。

EXCEL版財務分析表(商事法務)

実際にこの表を使って、著者が取引中に倒産にいたった国内・中国の上場企業の分析事例も紹介してくれており、リアリティを感じながら読み進められると思います。

【本】与信管理の実際 ?与信管理業務全般―「買ってもらう立場」と「支払いを融通する立場」の狭間で問われる与信管理担当者のセンスとは

 
伊藤忠商事で国内・中国の与信管理業務に長年携わられている現役のベテラン審査マンによる与信管理業務の教科書、『与信管理の実際 ?与信管理業務全般』。


一体何年前に出版された本ですか?と思ってしまう古めかしい表紙デザイン。ところがなんと2008年7月と意外にも出たばっかり。

銀行や商社であればまだしも、通常の事業会社で与信・企業審査だけを専門に担当する部署をもつ企業は少ないと思います。
そんな会社において、貸し倒れが連発して回収不能に陥ると怒られるのは、なぜか決まって法務だったり(泣)。

怒られるだけで終わらず、経営者から「会社の与信管理体制について考えて提案しろ」というような無茶振りを受けた時にも、この1冊があると非常に心強いです。


与信とは、取引先に金を貸す行為である

同書P53より以下引用。
与信取引
商品を買ってもらうこと+金を貸すこと
与信
信用を与えること=金を貸すこと
与信管理
与信をする前に、相手先を十分調査して回収に不安が無いことを確認し、必要に応じて保全措置を講じること、ならびに与信をした後で、期日どおりに確実に金を回収するための必要十分な管理をすること

「与信」とか「与信管理」という分かったようで良く分からない言葉を、もっとも的確に定義していると思います。

商品やサービスを提供してから、請求書を発行し、1〜2ヶ月後の期日に払ってもらうという、社会人になるとまるで常識のように無意識に繰り返されるこの光景が、実は「金融」そのものであるということをまず自覚することが大事。

このことに気づいていないビジネスパーソンがたくさんいるということが、与信管理の最大の課題と言っていいかもしれません。


銀行の与信と事業会社の与信の違い

一方で、「金を貸す」立場なんだから強気に出ていいかというと、そうでもないのが難しいところ。

「商品・サービスを買ってもらう」という、銀行とは異なる立場であることの取引上のバランスも考えて、実施するリスクマネジメント行動を必要最小限に絞り込んでいくことが、与信管理担当者に求められる“センス”。

この本のいいところは、単なる法的テクニックだけでなく、そういった販売とのバランスを取る実務的な視点を常に見失っていないところにあります。

一部に伊藤忠商事というバーゲニングパワーの高さゆえに成せる業かな・・・と思ってしまう部分もあるものの、ここまで与信管理を本質論からじっくり語っている類書もなく、与信管理というテーマに何らかの課題を持っている方であれば、必ず参考になる本だと思います。

【本】商社審査部25時―重油の債権回収のために船まで差し押さえちゃうわけですね

 
発刊当時、三井物産の現役審査マンだった高任和夫さんのデビュー作。BUSINESS LAW JOURNAL 2月号の特集でも紹介されてましたね。

「“審査”とは、財務諸表とにらめっこして取引にブレーキをかけるばかりの業務ではなく、時に営業以上に高度なクリエイティビティを求められる業務である。」

審査業務に対するそんな熱い思いが込められた、ビジネス小説です。



審査業務の醍醐味を鮮明に小説化

架空の商社・畿内商事の審査課長である千草が、取引先の信用不安・会社更生の申立に立ち向かう姿を通し、商社審査部というところがどのように情報を集め、営業とともに債権を保全・回収していくのかを描きます。

そして小説の中盤からは、会社更生手続の中で、主たる取引先であり債権者でもある畿内商事に対して過酷な負担を強いてくる裁判所との戦いを通じて、単なる保全・回収を超えたクリエイティビティを発揮し始める主人公の千草。

途中、船に積まれた重油の債権を回収するため、どこかの海を航海する船の行方を探し出し、動産売買先取特権に基づく物上代位を行使すべく船そのものを差し押さえに行くあたりは、やっぱ商社の審査部ならではだなあなんてロマンを感じてみたり、実はこの船の話が後の展開のうまい伏線になっていたり・・・

何度かこのblogでも書いてきたとおり、私は親会社に大手商社をもつ企業に育てられましたので、商社の審査部というところがどんなアグレッシブなことをしているのかは耳にしていたのですが、そうでもない限り、審査マンに対するイメージがこの本で大きく変わるのではないでしょうか。

そして日ごろ「取引審査業務はつまらない」と思っている審査担当の方にも、モチベーションアップのカンフル剤になると思います。
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