企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

国際課税

国際課税ルールの大転換とデジタルコンテンツ取引への影響

 
ジュリスト6月号の特集は「加速する国際課税制度の変容」。税法にはあまり興味関心がなかった法務パーソンも、自社ビジネスに影響がでないか、これを読んでチェックされたほうがよいかも。





「総合主義」から「帰属主義」への転換


一番のポイントは、これまで、国内に恒久的施設(PE)を有する場合にのみ日本源泉の所得に対して内国法人や居住者と同様にその全所得を総合合算する、いわゆる「総合主義」を採用していたところを、これからは
  1. PEの果たす機能や事実関係に従って外部取引・資産・リスク・資本を PEに帰属させ、
  2. PEと本店等との内部取引をも(文書化して)認識し、
  3. その内部取引が独立企業間価格で行われたものとしてPE帰属所得を算定する
というOECD承認アプローチ(Authorised OECD Approach)を採る、いわゆる「帰属主義」へと大きく転換させることが決定したという点。

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こうすることで、国際取引における二重課税や二重非課税をなくし、競争環境を公平にしようというのが世界の潮流となっており、おくればせながら日本においてもその方針が徹底されることになったというわけです。

越境デジタルコンテンツに対する課税の徹底


またこの流れを受け、デジタルコンテンツの越境取引における付加価値税・消費税の徴税について、
  1. BtoB取引においては、仕入事業者が国外からのサービス提供等に関する税を申告(国外事業者に代わって天引き)する「リバースチャージ」方式を採り、
  2. BtoC取引においては、国外のサービス提供者がコンテンツの消費地において課税当局に登録して納税する
という方針で各国が協調して動いているとのこと。

上記1に関連して、先日、EUをサービスの最終提供地と想定したライセンス契約の交渉場面においてロイヤルティ分配の計算式の定め方で先方と会話が咬み合わず、スタックして困った事態がありました。実はこれ、EUにおいてはすでにこのAuthorised OECD Approachが徹底され、付加価値税が決済サービス事業者によって天引きされているという事実を当方が知らなかったのが原因という、お恥ずかしい事態だったわけです。まさに「無知は罪」。先方にはこの場を借りて(こっそり)お詫びします。

また上記2に関連して、あくまで現行法の枠内での議論ではありますが、以下のような記事からも国税当局がすでにこういった国際取引の課税問題に注目していることが伝わってきます。

海外販売までも消費税、スマホアプリの受難(東洋経済)
各社が急きょ集まって情報交換した問題とは、グーグルプレイを通じた販売についての消費税課税問題。国税当局が、本来は消費税が不要であるはずの海外向けの売り上げについても、過去にさかのぼって消費税を課し始めたのだ。
なぜグーグルプレイに限って課税されるのか。国税当局の理屈はこうだ。

アップストアの場合、アプリ会社は地域別に設置された直営代理店(日本の場合はアイチューンズKK)を通してアップルにアプリを納めるという契約形態。そのため、国内向けと海外向けの取引は明確に区別できる。アイチューンズKKとの取引のみが課税対象となり、海外販売については、問題なく消費税法の輸出免税が適用される。

一方、グーグルプレイではアプリ会社がユーザーに直接販売する契約形態。アプリ会社にはグーグルから国別売上高の情報が提供されている。

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ところが、現状の法律では海外ユーザーとの取引に輸出免税が適用されず、全取引が課税対象となってしまう。なぜなら、輸出取引の証明には「販売先の氏名と住所が必要」と消費税法施行規則第5条1項で定められており、国別売上高の情報だけでは足りないのだ。課税を回避するため、あるアプリ会社はグーグルに氏名と住所の情報提供を求めたが、個人情報保護を理由に断られたという。

法務として税務にどこまでタッチすべきか、すべきとしても実務レベルでどこまでキャッチアップできるのかはとても悩ましい問題ですが、このあたりの背景や潮流については早めに理解して影響を想定しておかないとまずそうです。
 

GoogleやFacebookが採用する節税スキーム “Double Irish with a Dutch Sandwitch” の絵を見ていたら、納税地=裁判管轄地になる未来が見えてきた


Googleの有償サービスの規約Facebookの利用規約を見ると,契約当事者がなぜかアイルランド法人になっています。

これはどうやら節税のためらしいという話は耳にしていたのですが,西村高等法務研究所『アジア進出企業の法務』の中で,その種明かしを図解とともにしてくれていましたので,勉強がてらそのポイントをメモ。

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  • Double Irish with a Dutch Sandwitchと呼ばれる手法。アイルランドに二つ会社を設立し(図中IrXとIrY),その間にオランダ法人を挟み込むスキーム
  • まず,アメリカ本社からIrXに対し,IPなどの無形資産を“実質的”譲渡(アメリカ国外のグローバル市場における使用権のみをIrXに譲渡するコストシェアリング契約を締結)することにより,海外事業に関するIPを無形資産としてIrXに切り出す
  • グローバル市場からの収入は,海外事業の拠点として設置されたIrYが事業所得として得,その大部分をライセンス料という形でIrXに移転させるが,IrYからIrXのライセンス料にアイルランドの源泉税がかからないよう,アイルランドとの租税条約によって使用料などに係る源泉税が免除されているオランダ法人を経由して支払う
  • さらに,IrXの事業の本拠は英領バミューダ(またはケイマン)に設置する→アイルランドの租税法上は管理支配地主義のため,IrXに集まる利益に対して課税されないこととなる

これにより,グローバル市場の収益に係る実効税率は2.4%まで圧縮されていると言われています。さらにアイルランド現行税制では,一定の条件を満たせば外国親会社への特許使用料支払いに源泉税が課税されなくなっているそうなので、IrY to ダイレクトにアメリカ本社への支払いも可能になりはじめているとのこと。

このようなことができる税制をなぜアイルランドが設けているのかといえば,ある種の企業誘致策であり少額でいいから税金を稼ぎたいという思惑があるから。その一方で「脱税」されるアメリカとしても黙っているわけにもいかず,同様のスキームを採用しているアップルに対し,10兆を超える利益の課税逃れを行っているとして,今年の5月に入ってから議会上院が追求をはじめています

日本の税法では,英領バミューダに実質的に利益を集積させているとしてタックスヘイブン対策課税を適用することが可能であり,この節税スキームは通用しないようです。とはいえ,契約のグローバル化が進み海外での売上シェアが高まっている企業,かつ“事業の本拠地”“恒久的施設(PE)”が捉えにくいIPやクラウドを用いたビジネスに関わる法務の方は,このあたり研究されると面白いんじゃないでしょうか。

ちなみに個人的なアイデアですが,企業単位ごとに税金を納めるのではなく,プロジェクトや契約ごとに税金を収めるようにしてはどうかと。そうなると,契約書上の裁判管轄地がその案件の納税地ということになるのでしょう。案件で紛争がおきなければ税収が入り,揉めたら裁判所がその紛争解決の面倒をみてやらなければならないという徴税国目線でみたリスク・リターンの関係で考えると,とっても合理的なような気がして悪くないアイデアだと思うのですが,いかがなものでしょうか?本当にそうなったら,裁判管轄条項の契約交渉が国の利益を代表した戦いにもなるわけで,法務担当者としては新しいやりがいもでてくるというものです(笑)。
 



 
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