企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

商社

【本】与信管理の実際 ?与信管理業務全般―「買ってもらう立場」と「支払いを融通する立場」の狭間で問われる与信管理担当者のセンスとは

 
伊藤忠商事で国内・中国の与信管理業務に長年携わられている現役のベテラン審査マンによる与信管理業務の教科書、『与信管理の実際 ?与信管理業務全般』。


一体何年前に出版された本ですか?と思ってしまう古めかしい表紙デザイン。ところがなんと2008年7月と意外にも出たばっかり。

銀行や商社であればまだしも、通常の事業会社で与信・企業審査だけを専門に担当する部署をもつ企業は少ないと思います。
そんな会社において、貸し倒れが連発して回収不能に陥ると怒られるのは、なぜか決まって法務だったり(泣)。

怒られるだけで終わらず、経営者から「会社の与信管理体制について考えて提案しろ」というような無茶振りを受けた時にも、この1冊があると非常に心強いです。


与信とは、取引先に金を貸す行為である

同書P53より以下引用。
与信取引
商品を買ってもらうこと+金を貸すこと
与信
信用を与えること=金を貸すこと
与信管理
与信をする前に、相手先を十分調査して回収に不安が無いことを確認し、必要に応じて保全措置を講じること、ならびに与信をした後で、期日どおりに確実に金を回収するための必要十分な管理をすること

「与信」とか「与信管理」という分かったようで良く分からない言葉を、もっとも的確に定義していると思います。

商品やサービスを提供してから、請求書を発行し、1〜2ヶ月後の期日に払ってもらうという、社会人になるとまるで常識のように無意識に繰り返されるこの光景が、実は「金融」そのものであるということをまず自覚することが大事。

このことに気づいていないビジネスパーソンがたくさんいるということが、与信管理の最大の課題と言っていいかもしれません。


銀行の与信と事業会社の与信の違い

一方で、「金を貸す」立場なんだから強気に出ていいかというと、そうでもないのが難しいところ。

「商品・サービスを買ってもらう」という、銀行とは異なる立場であることの取引上のバランスも考えて、実施するリスクマネジメント行動を必要最小限に絞り込んでいくことが、与信管理担当者に求められる“センス”。

この本のいいところは、単なる法的テクニックだけでなく、そういった販売とのバランスを取る実務的な視点を常に見失っていないところにあります。

一部に伊藤忠商事というバーゲニングパワーの高さゆえに成せる業かな・・・と思ってしまう部分もあるものの、ここまで与信管理を本質論からじっくり語っている類書もなく、与信管理というテーマに何らかの課題を持っている方であれば、必ず参考になる本だと思います。

【本】商社審査部25時―重油の債権回収のために船まで差し押さえちゃうわけですね

 
発刊当時、三井物産の現役審査マンだった高任和夫さんのデビュー作。BUSINESS LAW JOURNAL 2月号の特集でも紹介されてましたね。

「“審査”とは、財務諸表とにらめっこして取引にブレーキをかけるばかりの業務ではなく、時に営業以上に高度なクリエイティビティを求められる業務である。」

審査業務に対するそんな熱い思いが込められた、ビジネス小説です。



審査業務の醍醐味を鮮明に小説化

架空の商社・畿内商事の審査課長である千草が、取引先の信用不安・会社更生の申立に立ち向かう姿を通し、商社審査部というところがどのように情報を集め、営業とともに債権を保全・回収していくのかを描きます。

そして小説の中盤からは、会社更生手続の中で、主たる取引先であり債権者でもある畿内商事に対して過酷な負担を強いてくる裁判所との戦いを通じて、単なる保全・回収を超えたクリエイティビティを発揮し始める主人公の千草。

途中、船に積まれた重油の債権を回収するため、どこかの海を航海する船の行方を探し出し、動産売買先取特権に基づく物上代位を行使すべく船そのものを差し押さえに行くあたりは、やっぱ商社の審査部ならではだなあなんてロマンを感じてみたり、実はこの船の話が後の展開のうまい伏線になっていたり・・・

何度かこのblogでも書いてきたとおり、私は親会社に大手商社をもつ企業に育てられましたので、商社の審査部というところがどんなアグレッシブなことをしているのかは耳にしていたのですが、そうでもない限り、審査マンに対するイメージがこの本で大きく変わるのではないでしょうか。

そして日ごろ「取引審査業務はつまらない」と思っている審査担当の方にも、モチベーションアップのカンフル剤になると思います。
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