企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

労働者派遣法

日本版PEO(共同雇用)制度と労働者派遣法第35条の5・第40条の9(追記あり)

人材業界の有識者たちが、「これって法的に大丈夫なの?」とざわついているのがこのニュース。

従業員を転籍、元の職場に派遣 リンクトブレイン(日本経済新聞)
人材派遣のリンクトブレイン(東京・千代田)は顧客企業の従業員を部門やプロジェクト単位で転籍させ、派遣社員として元の職場に送り込むサービスを始める。従業員には転籍前と同額の給与を保証する。利用企業は人件費を変動費にできるほか、派遣人材の質に悩まされなくなる。事業再編のペースが速いIT(情報技術)業界やゲーム業界での利用を見込む。
人材会社が人事管理や教育を受託する米国のPEO(共同雇用)制度を参考にした。米国のPEOは日本の職業安定法に抵触する可能性がある。しかし「労働者派遣の仕組みを使えば職業安定法の『労働者供給事業の禁止』を離れて日本でもPEOと似た人材サービスが可能」(アンダーソン・毛利・友常法律事務所の上田潤一弁護士)という。
日本版PEOの導入では、リンクトブレインは顧客企業と最短で12カ月間の契約を結ぶ。契約期間の終了後、顧客が契約更新を断れば、リンクトブレインは派遣社員を別の企業に送り込む。

PEO(Professional Employer Organization 共同雇用)制度を日本にもってくるというアイデアについては、2008年8月に当ブログでもご紹介したことがあります。しかし、実際にそれをサービス化したのは、本邦初なのではないでしょうか(この点について追記)。

共同雇用=元企業・PEO会社双方との二重の雇用関係を維持する米国版PEOをそのまま日本において実施すると、職業安定法第44条で禁止される労働者供給事業に該当し、違法となります。そこで、本人の同意のもとPEOサービス提供企業に転籍をさせ(つまり元企業との雇用関係は切断させ)た上で、特定労働者派遣に切り替えるスキームで元企業に派遣労働者として派遣する手法ならば適法となるのでは、と考えられていました。記事中の「顧客企業と最短で12カ月間の契約」などの記載から、リ社もこのスキームを前提としているように見えます。

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しかし、従来は可能と思われたこの特定労働者派遣切替スキームを使った日本版PEOも、その後、2012年の労働者派遣法改正で導入された第35条の5と第40条の9により、原則禁止されるに至っています。

(離職した労働者についての労働者派遣の禁止)
第三十五条の五  派遣元事業主は、労働者派遣をしようとする場合において、派遣先が当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第四十条の九第一項の規定に抵触することとなるときは、当該労働者派遣を行つてはならない。
(離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止)
第四十条の九  派遣先は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする場合において、当該労働者派遣に係る派遣労働者が当該派遣先を離職した者であるときは、当該離職の日から起算して一年を経過する日までの間は、当該派遣労働者(雇用の機会の確保が特に困難であり、その雇用の継続等を図る必要があると認められる者として厚生労働省令で定める者を除く。)に係る労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。

例外としてカッコ書きされる「厚生労働省令で定める者」とは、60歳以上の定年再雇用者が前提のかなり狭い範囲に限られています。この条文の追加により、現状日本でPEOサービスを提供しまたは提供を受けるのは、ほぼ不可能となってしまったように思われます。

個人的には、規制緩和と強化の間をフラフラしながら「働き方改革」なるどっちつかずの標語を掲げて混迷を深めている日本の労働行政にも様々問題はあるように感じているのですが・・・。条文上は何らか抵触してしまいそうなリ社のこのサービスが何か別の解決策を用意しているのか、また行政がどのような反応をするのか、続報を待ちたいところです。
 

2017.8.6 10:00追記

株式会社アウトソーシングとその子会社株式会社PEOでも、日本版PEOをサービスとして提供しているようです。twitterのたにやんさんのつぶやきで知りました。



 
 

派遣法改正案審議入り ― あなたの会社に迫る「みなし雇用リスク」にお気づきですか?(追記あり)

 
21日に党首討論=派遣法改正案、16日審議入り(時事通信)
製造業派遣の原則禁止を柱とする労働者派遣法改正案について、16日の本会議で首相が出席して、趣旨説明と質疑を行い審議入りすることで合意。

2月12日のエントリで「このまま派遣労働への締め付けを厳しくしていいの?困るのは派遣先会社なのでは?」と問題提起した件、

その後(予想通り)労働局が「専門26業務派遣適正化プラン」を水戸黄門の印籠の如く振りかざし、派遣法51条を根拠にした立ち入り検査を乱発、
・電話1本取っただけで「5号業務範囲外で違法」との指導
・派遣社員を8時間拘束してヒアリング
・聴取書への署名押印を強制
など、かなりやりたい放題の取り締まりをしているとの話も聞かれる中、

製造業派遣・登録型派遣の原則禁止を謳う派遣法改正案が、明日16日からいよいよ国会で審議入りします。


・・・が、みなさんの会社では、もう対策はお済みなのでしょうか?

ここでいう「対策」とは、製造業派遣や一般事務派遣の方の直接雇用へのリプレイスを完了させることを言っていますが、私が知る限り、特に一般事務派遣の方の直接雇用へのリプレイスは、全く進んでいないようにお見受けします。

今回の改正案の恐ろしさは、派遣会社というよりも派遣先企業こそが真の“被害者”になりうる点にある、ということにまだお気づきでない・他人事だと思っていらっしゃる会社が多いのではないか、と危惧しています。

労働者派遣法:改正案閣議決定 「みなし雇用」に評価 「偽装」排除へ一歩(毎日新聞)
これまでは、禁止業務への派遣や偽装請負など違法行為があっても、派遣先の責任を問えなかった。告発すると仕事を失う恐れがあり、泣き寝入りする例も多かった。制度導入で、違法状態で働かされていた派遣労働者は派遣先と労働契約を結んでいたとみなされ、派遣先に直接雇用されることになる。

これはつまり、
・一般事務派遣を、専門26業務(5号業務の事務用機器操作・8号
 業務のファイリング業務従事者)であるかのように偽装して
 受け入れている
・一般事務派遣を、自由化業務として正々堂々受け入れているが、
 事業所単位でみて、一つの派遣会社から最長3年以上継続して
 派遣社員を受け入れている
場合は、この改正法が施行された瞬間に、その時に(違法状態で)在籍する派遣社員の方がみなし雇用となるリスクを背負う、ということです。

大手企業では、すでに本気で一般事務派遣を使わないで業務を回す方法を考え、対応をとりはじめています。
もしあなたの会社の人事の方が、「派遣会社も大変だね〜」とのんきに構えているようだったら、そろそろ本気で対策した方がいいよ、と教えてあげてください。
 

2010・4・17追記

人事労務をめぐる日々雑感さんのエントリで気付かされたのですが、閣議決定された法律案をよく読むと、製造業・登録型派遣が完全禁止になるまでは3年ー5年の猶予があるのに対して、「みなし雇用制度」については6ヶ月以内の施行対象に入ってるんですね。

「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」について(厚生労働省)
施行期日:公布の日から6か月以内の政令で定める日(登録型派遣の原則禁止及び製造業務派遣の原則禁止については、改正法の公布の日から3年以内の政令で定める日(政令で定める業務については、施行からさらに2年以内の政令で定める日まで猶予))

「そろそろ」ではなく、「今すぐ」の対応が必要であることが判明しましたよ・・・。
 

【本】請負・労働者派遣とこれからの企業対応―労働者派遣法が非正規雇用を守ると思っているあなたは大間違いです

 
労働者派遣法は、派遣労働者を保護するものであると誤解されがちです。
労働者派遣法が第一次的に保護するのは、正社員です。
日本の雇用社会は正社員中心で成り立ってきました。この正社員の職場を保護するために、労働者派遣法が規制をかけているのです。つまり、労働者派遣法は、労働者派遣を拡大しないために存在するとも言えます。

一見するとカドが立ちかねないこんな物言いをあえて選んだ著者。

しかし、この本を読んだ人は、このスタンスで条文を読み下してはじめてわかる派遣法の「本音」に気づかされるはずです。

請負・労働者派遣とこれからの企業対応



こんなにも凛とした使用人側弁護士がいるんですね

普通の派遣・請負問題を取り上げた教科書には見られない、「派遣法は正規雇用を守るためにあるのだ」という思い切った逆説的な視点をとりながら、説得力をもって本質を理解させる著者。

それができるのは、“格差是正ブーム”にのった軽薄な世直し論者とは一線を画し、派遣と請負という問題に悩みに悩み抜いてきた使用人側弁護士だからこそだと思います。

しかも、この方は使用人側弁護士といってもただの「御用聞き」的な弁護士ではないなということも、言葉の端々から伝わってきます。

労働組合員である若手の正社員は、36協定などを遵守することを労働組合が主張することで保護されています。その分のしわ寄せが、他社労働力である派遣や請負の労働者にも及びます。技術派遣などは特にそういう傾向が強く、恒常的な長時間労働が見られます。これらの問題点を行政も適切に押さえていますので、そのようなところにメスが入ってきます。グレーゾーンの中でも大きいところに行政が介入するのです。
このように偽装請負騒動を理解すれば、グレーゾーンへの対応も変わってきます。日雇い派遣については、企業も襟を正さなければならないでしょう。しかし、グレーゾーンでもこれ以外は請負でいけるのではないでしょうか。むしろ、請負でいくべきでしょう。
行政はグレーゾーンすべてに突っ込んでくるわけではないという点を冷静についた絶妙なバランス感覚で、派遣法と業務処理請負とのグレーゾーン問題に大胆に踏み込んでみせたかと思えば、

偽装請負騒動で派遣に切り替えた多くの企業は、このクーリング期間を使おうと考えているのかもしれません。つまり、この3か月超の期間だけ直接雇用、すなわち契約社員にすれば、派遣受入期間がリセットされることを狙います。そしてリセットされたら、新たに派遣を始められると考えます。しかも新たに最大3年です。
3か月リセット方式を使うとしても、「Aさん、Bさん、Cさん」」とすることが適当です。労働者を変えるのです。「Aさん、Aさん、Aさん」というように同じ人を低廉にずっと長く使おうという発想は、労働者というよりも、その人の人生を潰しかねません
企業として、どれだけこの人と付き合い、そしてどこまで守ってやれますかという視点です。「Aさん、Aさん、Aさん」という3か月リセット方式で法を遵守していますという姿勢は、CSRやコンプライアンスから一番遠いところにあります。
と、派遣期間上限・2009年問題に脱法的な対応をとる企業に対しては、人を育てる社会の公器としての役割を担うべきという観点から、毅然とした態度でコンプライアンスを説きます。

この大胆かつ凛とした態度に、顧客のことを考え抜きながらも守るべきものは守る、という真のプロ意識を感じます。
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