著作物に関する文書やライセンス契約書をドラフティングする際に気を使う「利用」と「使用」の語の違いと使い分け方について、メンバーにレクチャーしようと思い、教科書に指定している中山『著作権法 第2版』にその説明を探し求めたところ、はっきりと説明しているページがなく、はてと困ってしまいました。
さらに、有斐閣『法律用語辞典 第4版』にもなし。新日本法規出版『契約用語使い分け辞典』にはあったものの、その説明には少々怪しげな雰囲気が・・・。
そこで、蔵書する先生方の基本書に加え、この際持っていなかった基本書も買い漁り総当りでチェックしてみた結果、岡村久道『著作権法 第3版』P154ー155のこの解説がベストでした。
4.1.2.5 支分権の対象となる法定利用行為の総称―利用
各支分権の対象となる法定利用行為(主として対象著作物の種類と対象利用態様の組み合わせ)を、本法は全体として「利用」(例:32条)という言葉で総称していると解されている。
これに対し、いずれの支分権にも該当しない行為は、原則として自由に行うことができる。これを本法は「使用」という言葉で総称して(例:113条2項)、前記「利用」と区別している。
その例外として、支分権に該当しない一定の行為を侵害とみなす規定(みなし侵害規定)が置かれている(113条)。その結果、支分権よりも、さらに著作権が及ぶ範囲が実質的に拡張されている。他方では、制限規定・みなし侵害規定によって、支分権が及ぶ範囲が縮減されている。したがって、より正確には、各支分権(制限規定・みなし非侵害規定に該当する場合を除く)と、みなし侵害規定の、どちらにも該当しない行為が、著作権に抵触することなく自由に行うことが可能な行為の範囲となる。
ただし、本法は20条2項3号・4号、47条の3第1項、113条6項のように「使用」の前記意味で「利用」と呼ぶ場合もあるので、この区別は厳密とはいえず、一応の概念整理にとどまる。

岡村先生のこちらの本、大変失礼ながら今日まで購入に至っていなかったのですが(恥)、この件に限らず非常に有益な記述・図表が多いことを知りました。弊ブログでまた機会を改めてご紹介させていただきたいと思います。
さて、今回いろいろな書籍をひっくり返してみて、「利用」と「使用」の使い分けは著作権法学において自明なことなのかと思っていたところ、中山先生や加戸先生の本をはじめとしてそもそもこの区別について言及していない書籍が多く、また言及されているものの中でもかなり温度差があるということもあらためて知りました。読んだ限りでは、上記岡村説が中立的な立場、一方で最も使い分けに積極的なのが斉藤先生で、最も消極派だったのは作花先生であるようにお見受けしました。これらを含め、具体的に「利用」と「使用」の違いについて言及があった基本書を、以下タイプ的に分けてみます。
■岡村説以上に厳密な使い分けを推奨する立場
■区別は流動的・政治的なものであるとする立場
■法的な差異はあまりないとしつつ、著作権を無体的に用いると「利用」・有体的に用いると「使用」であるとする立場
また、岡村先生の本でも紹介されている下記文献は、ネットでも確認できます。
▼著作権審議会 マルチメディア小委員会ワーキング・グループ(技術的保護・管理関係)中間まとめ(コピープロテクション等技術的保護手段の回避について)(平成10年2月20日 文化庁)
「利用」とは、複製や公衆送信等著作権等の支分権に基づく行為を指す。
「使用」とは、著作物を見る,聞く等のような単なる著作物等の享受を指す。
その他、信頼のおける実務家の記事としては、@redipsjp先生のこちらの記事があります。
▼著作権がないと困るのか(Footprints)
著作権法では,著作物の「利用」と「使用」は区別されている。「利用」とは,上述のとおり,著作権者の許諾なくして行えない行為であり,著作権法21条から28条に列挙された行為をいう。具体的には,システムに関するところでは,複製(21条),公衆送信(ネットを通じた配信,23条1項),翻案(改良・修正等,27条)などである。他方,「使用」とは,著作物の効果を享受する行為で,プログラムであれば,コンピュータ上で実行させる行為であるし,本であれば読む,音楽であれば聴く行為を指す。














