“ビッグデータ“や“行動ターゲティング”という言葉がバズワード化し、また政治においても税・社会保障のための共通番号制導入に向けた動きが活発になるなど、なんだかプライバシーまわりのニュース・話題が増えてきたような気がする今日この頃。これらのイマドキなキーワードや話題を一気にフォローするのにもってこいの1冊があります。

デジタル社会のプライバシー―共通番号制・ライフログ・電子マネーデジタル社会のプライバシー―共通番号制・ライフログ・電子マネー
著者:日本弁護士連合会
販売元:航思社
(2012-02)
販売元:Amazon.co.jp



「ITビジネス vs プライバシー」に関わるキーワードをこれだけ広範囲にカバーし、かつその法規制について海外判例(アメリカ・カナダ・ドイツ・オーストリア・韓国が中心)も含めてまとめて読める書籍はそうそうないので、目次をご覧になって興味があるキーワードが複数あるようでしたら、迷わず読むが吉かと。

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なお、弁護士会編著、そして人権擁護のシンポジウムの内容がベースになっているということもあって、市民の味方という立場から、共通番号制のあたりなどは行政に対する個人のプライバシー保護の視点からかなり明確に否定的な立場をとっているあたり、「多少のリスクは飲んでも世の中を便利に・効率的にすべき」と考えがちなビジネスサイドの視点からは、読んでて違和感を感じられる方もおられるかもしれません。とはいえ、プライバシーに関してはビジネスサイドに立ちがちな私も、共通番号制に関しては、仕事や人事がまだまだ縦割りな各省庁がわかれて所管し続ける以上、番号をそろえただけで「お役所仕事」のスピードやコストが劇的に改善するとは思えないので、弁護士会の意見には賛成だったりするのですが。


さて話はそれましたが、イマドキのキーワードをしらみ潰せる他に私が思うこの本のもう一つの売りがあります。それはローレンス・レッシグの『CODE2.0』からの引用が多く、レッシグ理論を現実のビジネスに適用するとどう考えられるかについての言及が多い点。それはまるで『CODE2.0』の解説本か、もしくは『CODE3.0 実務応用編』と読んでも過言ではないほど。例えばこんな記述。

まず、レッシグ氏は、高度情報化社会において、プライバシーが危機に陥ることにつながった要因は、技術の向上のおかげで「永続的で安上がりな」監視が可能となったことであると指摘する。
実際、あなたが、何年何月何日の何時何分にどこの道路上にいたかとか、どこからどこに向かう電車や飛行機に乗っていたとかといったデータが集約されれば、これは、誰がどう考えても重要なプライバシー情報である。だから、公共の場においては、プライバシー問題が生じないなどということは明白な誤りである。
とはいえ、かつでは、こうした事実を収集、集約して検索、利用するためには多大なコストが必要だった。このコスト、つまり、先述した4種の規制要因(tac注:法・規範・市場・アーキテクチャのこと)でいえば市場により、公共の場におけるプライバシーはこれまで事実上守られていたのであり、そのおかげで、法は保護を提供する必要がなかったのである。したがって、Suica、ICOCA、クレジットカード、ETC、Nシステム、各種電子マネー、監視ビデオ等によるデータが保存され、それらのデータ利用技術が向上することによって、上記コストが大幅に下がってしまった現在では、法はこれまでのように保護に無関心でいられるわけではないのである。

レッシグの書籍とその理論は、インターネット接続とデジタルコピーの普及による著作権制度の未来に関する彼の言及とも相まってさまざまな分野で注目されていますが、インターネットが存在することが前提となった現代とこれからの法制度のあり方を考える上で外せない人物といっても過言ではないと思います。その彼の理論について、日本に今起こっている身近なプライバシーイシューと重ねながら理解を深めることができるという点でもお薦めできる、一粒で二度美味しい書籍かと思います。