企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

元榮太一郎

日本に眠る総額39兆円の「埋蔵サービス残業代」を発掘するという、夢とロマン溢れるビジネスがはじまりました

 
帰り道、電車広告を見上げていたら、こんな広告が目に飛び込んできました。

残業代請求.jp

あなたがやってきた2年分のサービス残業、残業代はいくらになると思いますか?
みたいなクイズ形式の広告で、嫌な予感・・・と思ったらやっぱり弁護士の広告だったんですねこれが。


サービス残業手当回収ビジネスはじめました

広告主は、最近メディアでもお顔をよく拝見する法律事務所オーセンスの元榮太一郎弁護士。近著『刑事と民事 こっそり知りたい裁判・法律の超基礎知識』は弊blogでも紹介させていただきました。

確かに、基本給の額と残業実態を証明する資料(すなわち給与明細とタイムカードコピー)さえあれば、比較的簡単に立証・請求できるのが残業代。しかも、遅延損害金だけでなく、労基法114条に基づく付加金の請求が認められれば、労働者はちょっとした退職金並みの収入が得られるわけで。

世の中には、年俸制や定額残業手当制と称して残業手当を支払わない会社が沢山あります。きちんと満額払っている会社があるのかと思うぐらいに。
国税庁の平成18年末「民間給与実態統計調査」をベースに、いったいその全体額はいくらかと計算してみると、
・サラリーマン人口 4,485万人
・その平均給与 435万円
・うち低く見積もってサービス残業分が10%
・遅延損害金、付加金は含まず
としても、労働者が遡って請求できる2年分の総額として
435万円×10%×2年分×4,485万人=39兆円
の債務が企業側に眠っている計算にwww。

この広告のとなりには、さくら中央法律事務所のクレサラ過払い金回収の広告が並んでいて大層シュールな絵だったわけですが、きっとこの手のサービス残業代回収ビジネスを手がける弁護士さんは激増するんでしょうね。

従業員の正当な権利ですので、あえて肯定も否定もしませんけれども、こうしてみると、(弁護士の大量増員のおかげでしょうか)いつのまにか日本も“立派”な訴訟社会になったものです。

【本】刑事と民事 こっそりと知りたい裁判・法律の超基礎知識―訴訟社会の相場観

 
冒頭刑事ドラマを引き合いにしながら、刑事裁判と民事裁判の違いという基礎的な部分から訴訟がどういう仕組みと流れで行われるのかを解説してくれる本。

刑事と民事―こっそり知りたい裁判・法律の超基礎知識



「○○なトラブルで訴訟になると××になります」式

タイトルから、そして弁護士が書いている本ということから、裁判上の手続の違いの解説がずっと続く硬派な本かも・・・と思っていたところ、意外にも本の中盤以降はビジネスと日常生活でおきがちな訴訟のケースをいくつも紹介しながら、弁護士の視点で判決の相場観を教えてくれる読みやすい本でした。
仮に時給換算で2,000円の賃金を得ている人が月平均20時間のサービス残業をしていたとしたら、支払われるべき残業代は2年間(24ヶ月)で120万円にもなる。会社側は、裁判の口頭弁論終結時までに、残業代を任意に払わないと、さらに2年分の残業代と同額の「付加金」が加算され、その付加金には5パーセントの利息がついてくる。本来の残業代にも6パーセントの利息がつき、退職した場合はさらに利息は上がり、14.6%の利息がついてくるのである。かなり多額になる。
受けるのが行政処分か刑事処分かは、切られるのが「青キップ」か「赤キップ」かによって決まる。交通違反は種類ごとに「点数」が決められており、程度が重いほど点数も多い。その点数が1〜3点なら青キップ、6点以上なら赤キップだ。
どの程度の痴漢なら迷惑防止条例で済むのかというのはきわめて微妙な問題だが、一般的には、「下着」の外側なら迷惑防止条例、内側なら強制わいせつということになっている。世間の常識と合致しているかどうかはわからないが、少なくとも、われわれ法曹関係者にとってはそれが「常識」だ。
被害者が警察に通報したからといって、ただちに逮捕されるというわけではない。あまりに悪質な場合はいきなり刑事罰の対象となることもあるが、基本的には、まず警察からストーカー行為に対する警告が出される。それに従わず行為をくり返せば、次は公安委員会からの禁止命令。これはいずれも役所からのものだから、行政処分である。その禁止命令にも従わなかったときに、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という刑事罰が待っているのだ。

こんな調子で、弁護士としての経験から行政罰を超えて刑事罰になる一線や、訴訟になった場合の判決の相場観を教えてくれます。
言葉の使い方に気を配らないととたんに難しくなる法律の話を、テンポよく、身近に感じられるネタを取り上げて、とても読みやすく仕上げていると感心します。私もブロガーとして大いに見習わせていただきたいです。 

なお、どちらかというと刑事系の話が多いので、法務パーソンとして業務に役立つ知識というよりは、お酒の席で話すと喜ばれる雑学的な知識が中心にはなっています。

著者の元榮太一郎さんは、アンダーセン毛利から独立され法律事務所オーセンスを開所、それだけにとどまらず弁護士ドットコムの立ち上げ、その他著作活動も活発に行われている若手弁護士。おそらく、この本を書かれたのも、訴訟社会化と法曹人口拡大が進む中で、そういったご自身の活動を世に知らしめるマーケティング活動の一環と思われ、失礼を承知で申せば、商魂逞しい方なのかもと。

溢れるバイタリティをもてあまして、とにかく思いつくことを確実にやりきっちゃうタイプなんでしょうね。
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