企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

中国

【雑誌】BUSINESS LAW JOURNAL No.21 12月号一中国の契約なら俺にまかせろとシノギを削る法律事務所達

 
今月発売のBLJで中国企業との契約実務を特集しているとはつゆ知らず、昨日のエントリを書いてました。まことに恥ずかしい限り。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2009年 12月号



法務担当者受けする雑誌記事の作り方

合計32ページにわたり、アンダーソン・毛利・友常/光和/TMI/黒田/高井伸夫/曽我・瓜生・糸賀/森・濱田松本といった大手〜中堅事務所の先生方が、それぞれの得意分野についてまるでシノギを削るかのように文字数いっぱいに濃い記事を寄稿しているこの特集。

・合弁契約、持ち分譲渡契約等および出資契約は、法律上
 中国語を正本にしたうえ準拠法も中国法にしなければ
 ならないとか、

・損害賠償が実損主義なので、契約で損害賠償額のキャップ
 をしても意味がないとか、

・最高人民法院による契約法の司法解釈6条により、定型的
 な契約書式(約款)を提示した企業は、権利・義務を規定
 しもしくは責任を免除・限定する条項について、相手方に
 注意喚起義務と説明責任を負うとか、

・日本での判決は中国で執行できないため、裁判管轄を日本
 にするのは無駄であるとか、

私のように中国企業との契約経験が多くない法務パーソンには、いちいちへぇ〜な小ネタが満載。

そして何よりもこういった各事務所による顕名の寄稿記事がありがたいのは、この分野はこの事務所のこの先生が強そうとか、この先生の説明は分かりやすいなというのが比較できるところ。顧問弁護士事務所のほかにセカンドオピニオンを取りにいくアテをつけることができますからね。

なお巻末の編集後記「Editor's voice」によれば、
ご好評いただいた契約書特集が個別的な問題をより深く取り上げる形にして次号より毎号掲載の予定です。
とのこと。

やはりwebと比較した際の専門雑誌記事の良さは、今回の特集がそうであるように、一定の信用をもつ寄稿者が顕名で、タイムリーなネタを、ある程度まとまった単位で提供してくれるところにあると思います。

次号以降の契約書連載も、今回のようなノリで記事をまとめていただけると、法務担当者受けはすごくいいんじゃないか、と期待してます。

中国ビジネスリスクの今を知るための情報源

 
海外でのビジネスにはリスクはつきものですが、特に中国のビジネスリスクを語る文脈は、昔から中国を知る人が語るものほどネガティブなものが多い気がします。「役人との癒着で入札は決まる」「賄賂は必要悪だ」とか、「知財を無視する国民性がみられる」とか。

確かに、私の少ない経験・知見でも、

契約書を英文で結ぶのを嫌がって中国語versionを正文にすると譲らないのでよくよくチェックさせたら微妙に内容変えてたり、

印鑑はあるもののどの企業も大きな丸にちっちゃい星が入ったようなすぐに複製できちゃいそうなものばかりで、実際に「その契約書は偽造だ」とか主張されたり、

知財絡みで紛争になったときも、ほとんど言いがかりのような著作権法侵害幇助の嫌疑を一方的にかけられたり、

…と、まあ独特な価値観をお持ちの方々だなあと思うところはあるのですが(笑)。

とはいえ、中国の法律やビジネスのあり方も年々そして日々日々変化しています。そんな今の中国ビジネスのリーガルリスクをタイムリーに、そしてなるべくポジティブに理解しておきたい方におすすめできそうな情報源をご紹介します。


日本語で読める本

中国を知る―ビジネスのための新しい常識 (日経文庫)


中国ビジネスのリーガルリスク―中国人の法意識と商事・労働紛争解決法



どちらの本も、中国が改革開放政策に転じた1978年以降の発展の歴史をたどりながら、昔と比較しての最近の中国の法的・政治的・人的リスクを中心に幅広い視野で捉えて、日本企業が外資として参入する際に知っておくべきリスクを論じるもの。

中国を知る』の方はよりマクロな視点でビジネスリスク全般を、『中国ビジネスのリーガルリスク』の方は訴訟法・労働法・会社法の3点を中心にピンポイントでリスクを解説しています。


英語で読めるブログ

残念ながら、日本語で中国のビジネス法について発信してくれているブログはあまり見当たらないので、私がRSSに入れている中でおすすめの中国ビジネス法のブログをご紹介しておきます。

China Law Blog
おそらく英語の中国法ブログでは一番メジャー。更新頻度が高い。

China Law Insight
立ち上がってから歴史も浅く更新頻度まだ低いですが、サイドバーのカテゴリ分けを見ていると、今後発展が期待できそうなブログ。

IP Dragon
中国における知財問題をメインに扱うブログ。写真が多いので、中国の雰囲気も生々しく伝わってくるのが特徴的。


同じアジアにいる限り、どの会社にいても中国とのビジネスの関わりはいやがおうにも大きくなっていきます。中国の勢いに飲まれるのではと脅威におののくばかりでなく、中国の成長の波に乗らせてもらうつもりでお付き合いしたいものです。

中国の労働契約法が日本のそれと比較していかによく出来ているか、12のポイントにまとめてみた

 
ビジネス上の関わりが増えてきたこともありますし、ひょっとしたら将来自分が中国で働く可能性も否定できないので、ただ今中国の労働関連法を勉強中。

もともと存在した「労働法」や各地方市単位で存在した条例を上書きするような形で2007年に「労働契約法」を制定していて、その全体構成に多少のぎこちなさもあるものの、この法律がまた良く出来ていてびっくり。きっと、日本をはじめとした各国の労働関連法の欠陥も研究した上で立法してるんでしょうね。

中国の労働契約法については、今のところこの本『中国労働契約法の実務』が一番分かりやすいのではと思っておりますが、その他見聞きした情報も加えて、特に日本の労働関連法と異なる部分を中心に、中国の労働契約における労働条件まわりのポイントをまとめてみます。

s-shanghai_buildings_by_Peter_Morganphoto by Peter Morgan(from everystockphoto.com)


1.応募時に、企業だけでなく求職者にも説明義務がある

募集をする企業側に募集条件の明示義務があるのは日本でもそうですが、面白いのは労働者側にも「労働契約に関する基本情報」について説明義務を法定しているところ(労契法8条)。これは日本にはありません。
虚偽の申告をした場合、労働契約が一部または全部無効(26条)となる他、企業からの解除(39条)・損害賠償請求(86条)が可能となります。

2.労働契約を書面により締結する義務がある

労働契約は書面で結ばなければならず(労契法10条)、書面化せずに1ヶ月放置した場合は2倍の賃金を払う義務が発生し(82条)、1年以上放置すれば無期雇用契約締結とみなされます(14条)。
日本にも採用時に書面で労働条件を明示する義務は法定されていますが、契約は書面にする必要が無いですし、その義務に違反してもここまでの制裁はありません。

3.有期雇用10年超で、無期雇用への変更義務が発生

中国では有期雇用契約のことを「固定期間労働契約」と言いますが、この固定期間労働契約は、ご多分に漏れず更新が繰り返されていくのが常。しかし、更新が繰り返されて勤続10年を超えると、無固定期間労働契約、すなわち無期雇用契約を締結する義務が生まれます(労契法14条1項)。

4.有期雇用の更新2回目から、雇止めが難しくなる

2回目の有期雇用(固定期間労働)契約満了時に、労働者から無期雇用(無固定期間労働)契約締結を要求できます(労契法14条2項)。なお、解釈により3回目の契約満了時から権利が発生するという説もあるようです。
日本にも、上記3や4のような雇止めの禁止という発想や行政指導はありますが、こんなにはっきりとは年数や回数が法定されているわけでは無い点、見劣りしますね。

5.試用期間は最長6カ月の上限がある

日本の労働法の欠点の一つ。それは試用期間が現前たる慣行として存在しながら、明確な法規制がなされていない点。
これに対して中国では契約期間に応じ、以下のとおり試用期間の上限が定められています(労契法19条)。
・3年以上(無期雇用契約含む)…6ヶ月以内
・1年以上3年未満…2ヶ月以内
・3ヶ月以上1年未満…1ヶ月以内
・3ヶ月未満…設定不可

6.試用期間中は労働者は自由に辞められる

試用期間中といえども企業側には一定の解雇規制があるのに対し、労働者は試用期間中ならば3日前通知で無条件に辞職が可能となっています(労契法37条)。

7.みなし・変形労働時間制の適用には、認可取得が必要

中国では、日本で言うところの事業場外のみなし制・裁量労働制にあたる制度を「不定時労働時間制」、変形労働時間制にあたる制度を「労働時間総合計算労働制」と呼びますが、このいずれも適用には労働行政部門への認可申請が必要
日本の事業場外みなし制や変形労働時間制の一部は認可はおろか届出すら義務にしておらず、それが残業規制を骨抜きにする原因となっている現状とは大違いです。

8.有給休暇未付与の罰則が厳しい

1年超勤務する労働者に対し、有給休暇を5日以上付与する義務があります(労働法45条、職工帯薪休暇条例)。
この点、日本は6ヶ月以上勤務で10日なので手厚いようにも見えますが、取得できなかった場合1日あたり賃金の3倍の報酬を払わなければならない罰則があるところが、日本よりも実効力が高く一枚上手です。

9.長期の「親族訪問休暇」を与える義務がある

これは中国国内でも批判が強いみたいですが、
・単身赴任で配偶者を訪問する場合…30日/年1回
・未婚で父母を訪問する場合…20日/年1回
・既婚で父母を訪問する場合…20日/4年に1回
これらの「親族訪問休暇」という名の長期休暇が有給休暇とは別に付与されます(国務院関於職工探親待遇的規定)。
日本にはまったくない発想ですし、期間長すぎですねこれはさすがに(笑)。

10.解雇だけでなく辞職をするにも30日前予告が必要

いわゆる普通解雇に1ヶ月前予告が必要(労契法40条)なのは日本と同じ。一方で、労働者側からの辞職にも30日前の書面通知が必要とされている(37条)のは、完全月給制や年俸制で無い限り2週間前予告で辞職できる日本とは対照的です。

11.競業避止義務は最長2年間の上限規制がある

中国では転職を繰り返してキャリアアップするのが当たり前だからでしょうか、競業避止義務の設定について2年を超えてはならないという具体的な規定が存在します(労契法23条2項条)。
もっとも、日本の裁判例の多くも2年を超える競業避止義務は無効と判断されるケースが多いですけれど。

12.労働関係終了時に、「経済補償金」を支払う義務がある

日本では退職金を支払う義務までは法定されていません。しかし、中国ではこれが法定され退職時に「経済保障金」を支払う義務があります
労働契約の解除事由によって支払の要・不要が異なり、しかも労契法・労働法・経済補償弁法・各市の条例が複雑に絡んでいるところなので、この画面では整理しきれないのですが、概略以下のとおり。
・合意解除…必要(労働法28条)
・労働者の一方的解除…不要(労契法46条)
・懲戒解雇等…不要(同)
・整理解雇…必要(同)
・定年/死亡…不要(同)
・契約期間の満了…場合により必要(同)
特に、有期雇用の満了時であっても場合により必要なケースがあるのがいかがなものかと。
金額についても詳細な計算式が定められていますが、基本的には「労働者の月賃金×勤続年数」分、つまり、5年勤務すれば5カ月分を支払うというのが基本ラインとなっています。


というわけで、このブログにしては珍しく長文で書き連ねてしまいましたが、是非日本の労働契約法にも取り入れていただきたいアイデアと実効力ある規定の数々に、中国の底力を見せつけられた次第です。

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