リスクマネジメントの本として読むとすっきりしますね、この本は。

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階


衰退を避け、企業の成長を持続させるためには何がポイントになるのか。
環境が変化している兆しを掴めるかどうかだとか、過去の成功体験を否定ができるかどうかだとか、よく言われることはいずれも「言うは易く行なうは難し」。その「難し」に成功した企業・失敗した企業を並べて観察して法則を見出そうというのが、ビジョナリーカンパニー1に続く今回の著者の挑戦。

曰く、企業が衰退へ向かう下りのステップは

 第一段階 成功から生まれる傲慢
 第二段階 規律なき拡大路線
 第三段階 リスクと問題の否認
 第四段階 一発逆転策の追及
 第五段階 屈服と凡庸な企業への転落か消滅

の5つ。

違法すれすれの強引な営業手法、あまりにも不平等でハイリスクな条件での契約、頻発する企業内部の組織再編・・・思うに、私たち法務パーソンは、第二段階に真っ先に気づき、第三段階にブレーキを掛けられるかどうかの真っ只中にいて、その責任の大部分を担う存在ではないでしょうか。しかしその一方で、法務から「最近危ない契約をよく見る」というような定性的な側面だけを捉えてアラームを鳴らしてばかりいると、「お前らの部署はいつもそうやってブレーキを掛けてばかりだ」と、オオカミ少年のようになってしまいがちな存在でもあります。

私たち法務パーソンが肌で感じとった危険な兆候が山勘ではないことを裏付ける“リスクセンサー”足りうる定量的なデータがあわせて示せれば、アラームにもう少し説得力を持たせることができるのでしょう。著者は、この危険な兆候を裏付けるデータの例として、以下の3つの指標を例示しています。

とくに注意すべき指標は何だろう。われわれの調査では企業の場合、粗利益率(売上高に対する粗利益の比率)、流動比率(流動負債に対する流動資産の比率)、負債比率(自己資本に対する負債の比率)の悪化が嵐の到来を示す兆候になっている。われわれが行った財務分析では、調査対象とした衰退企業十一社はいずれも、第四段階に移行する時期に、これら三つの指標のうち少なくとも一つが悪化トレンドにあった。

普段から財務分析をやっている方には、メジャー過ぎて面白みのない指標であり、落ち目企業だったらこのあたりが悪化トレンドになるのは当たり前だと思われるかもしれません。しかしここで大切なのは、契約や法律行為の是非をジャッジするにあたって、普段こういう数字とは別世界の人間になりがちな法務が(たとえ簡単な指標であっても)こういったデータも横目で見ながら現場・経営に語れているかどうか、ということ。

この3つの指標に限らず、現場・経営に対して自信をもってアラームを鳴らすための、自分と自分の会社ならではの確かな“リスクセンサー”を持ちあわせていたいものです。