この1年ほど、新聞を始めとしたマスメディアが労働と法規制の問題に関心を寄せ、取り上げ続けた時はなかったのではないかと思いますが、
その最初から中心にいつも据えられ、政権が変わってさていよいよどうなる・どうするという瀬戸際的雰囲気が出てきた非正社員問題、派遣労働禁止への動き。
なぜ非正社員の問題を解消しなければならないと言われ始めたのか、そしてその解決の処方箋としての派遣規制を強化するのは正しい方法とは言えないのではないかという点について、簡潔な論理と文体で理解させてくれるのがこの本です。
『労働市場改革の経済学
著者八代先生の結論は、派遣を規制して無理矢理正社員化を目指すのではなく、「日本最大の公共ビジネス」であるハローワークと民間の職業紹介を中心に据え、就業先の選択肢を拡大することを通じて、労働者に企業への交渉力を与えるべきというもの。
まさに私もそれを願ってこの業界に身を置く事になったわけで、このご意見には全面的に賛同するのですが、そんな中で最近思っているのは、誰が何をすれば労働市場の健全な流動化が始まるのかということです。
長くなる話を無理矢理端折って私の結論を述べさせていただければ、人材サービス業が「統計的差別」を乗り越える知恵を開発すること、これに尽きるかと思っています。
「統計的差別」とは、年齢・性別・学歴などによって、確率論的に人を選別することをいいます。
簡単には解雇できない日本の法律・慣習の中で雇用する立場の企業からすれば、企業的視点で貢献度が採用時点で目に見えるならば苦労しません。それがわからないために、目に見える年齢・性別・学歴というデータに頼り、統計的に長期雇用に耐えうるであろう組み合わせ=<男性・若年齢・高学歴>で人を選んでいるという現実。このことは、以前から何度か意見を申し上げてきました。
▼正社員という“踏み絵”―解雇規制という負担を強いられても日本企業が「終身雇用」にこだわる本当の理由(企業法務マンサバイバル)
この現実を、長期雇用の維持を前提に差別禁止という強制力で解消しようとしているのが今の日本のやり方。そういった規制が全面的に不要だとまでは言いませんが、強制的アプローチだけでなく、企業の悩みをうまく解消する方法も考えてあげることが、建設的な議論のためには必要だと思います。
長期雇用を前提とする雇用の法律・慣習を疑い見直すことに加えて、その求人企業において採用すべき人はどんな人かを分析する手法と、その求職者の真の職業能力を年齢・性別・学歴などのステレオタイプに頼らずに分析する手法との両方を開発すること。これができれば、労働問題が政争の具にされることなく解決するのではないか。
政治をネガティブに批判していても何も始まらないので、私はこのことを信じて、今人材サービス業に身を置く自分にできることを、しっかりとやっていきたいと思っています。









