最初にご報告方々皆様にお断りしておくと、現在私が“兼業”で働かせていただいているいくつかのお仕事の1つとして、このビジネスロー・ジャーナルに関わるお仕事があります。そういう立場になってから、ステマと後ろ指を指されぬようブログtwitterを問わずBLJのネタには触れないように心がけてきたのですが、今月号の記事は、いわゆる「コンプガチャ問題」を法務パーソンという立場から総括するという意味で触れないわけにはいかず、ご紹介させていただく次第です。
BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2012年 08月号 [雑誌]販売元:レクシスネクシス
(2012-06-21)
販売元:Amazon.co.jp
おすすめしたいのは、“[Focus]コンプガチャ規制の教訓”の中の
「消費者庁対応で不覚をとったソーシャルゲーム業界の困惑」
「ビジネスをとめるべきか否か」
と題する編集部による2本の取材記事。この業界に関わる方だけでなく、日頃のビジネス適法性判断や行政対応にたずさわる法務パーソンにとって、多くの教訓が得られる記事になっています。

前者記事は、ガチャが問題視され始めた2011年よりもっと前にさかのぼり、ソーシャルゲーム業界法務担当・弁護士(匿名)と消費者庁表示対策課責任者(片桐課長)双方の対応・動きを、両者のコメントをもとに時系列で整理をしたもの。
「消費者庁への事前照会は行っていた」と主張する業界関係者のコメントに対し、消費者庁片桐課長が
コンプガチャについて認識したのは12年になってからです。
そもそも日ごろから匿名の相談も多く(中略)相談を受けたら簡単な記録は作りますが、件数があまりにも大量なので、詳細なものではありません。と回答するなど、予想はしていたこととはいえ、「相談に対する回答に責任を持てるものではない」という、行政のスタンスがはっきりと言明されています。
後者記事には、ソーシャルゲーム業界法務担当による、赤裸々な「反省」の弁。
特にこのコメントは、すべてのイマドキ経営者およびイケイケ法務に読んで聞かせたい。
1社でも中止すれば、業界全体が違法ビジネスをしていたとみなされかねません。同じだけの危機感を持っていれば、そろって撤退することも可能でしょうが、実際には各社の置かれたポジションが異なるので、それは困難です。結局のところ、リーガルリスクの面において、“やってみて問題があるなら止めればいい”を実行するのは想像以上に難しい。今回つくづく感じさせられました。目に余るようになれば法務がどこかでブレーキをかけてやろうと最初のうちは思っていても、業績に対する責任や業界の雰囲気は法務にコントロールできる領域ではなく、それは現実には無理だった、そうこうしているうちに5月5日の読売報道で不意打ちに遭った、という状況が、クリアに伝わってきます。
経営がビジネスの違法性を判断するとき、法務パーソンは根拠を求められます。しかし、その根拠は多くの場合条文にストレートに現れていません。だからといって“行政解釈”に頼りすぎると今回のような「どんでん返し」が発生し、また“会社の良識”を信じてもその時の空気に流されてどこへやら。
法務パーソンとしてはそうなることを肝に命じ、「フィジビリティスタディ」と称する怪しげな新規事業の開始(笑)に騙されまたは面倒がって問題を先送りするのではなく、「Xヶ月に1回、◯◯な状態になっていないか△△を検証し、条件が満たない場合はストップする」というような明確な停止条件(解除条件)や、法的レビューを定期的に行う仕掛けについて、開始時に稟議書等で握っておく必要があるなと思いました。
(私がこの記事を書いたわけではありませんが、)取材に応じていただけなかった関係企業等もある中で、匿名とはいえお話を聞かせてくださったソーシャルゲーム業界関係者のみなさま、そしていったんの収束を迎えた問題とはいえ、まだ余韻冷めやらぬ言及が難しいこの時期に法律解説・コメントを寄せてくださった神戸大学大学院 泉水先生、株式会社電通 中西法務1部長、東京大学 白石先生ほか皆様にこの場をお借りして感謝申し上げると共に、一法務パーソンの立場からは、企業法務における適法性判断と行政対応のリアルケースを記した貴重な資料として、大切にスクラップしておきたいと思いました。









