企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

グローバル人事

【本】グローバル企業の人事リストラ戦略 ― 「行きはよいよい帰りはこわい」じゃ困ります

 
弊ブログでご紹介する本をお買い求めくださる方は結構いらっしゃって、いつも本当に有り難い限りです。

もちろん、誰がどんな本を買っているかはこちらからは特定できないわけですが、毎月のAmazon売上集計を拝見していると、随分昔にこのブログで紹介したマニアックな専門書をふとしたタイミングで購入して下さっているのがわかり、「今この本を買ってくださった方は、きっとこんな課題にぶち当たって苦労されているのだろうなあ」なんていう想像を膨らませていたりします。

そんな中、10月分のAmazon売上集計を見ていると、明らかに今どきな傾向が現れていることに気づきます。それは、随分前にご紹介した『グローバル人事 ― 課題と現実』が飛ぶように売れているということ。[グローバル+人事+法務]でググると当該記事がトップに出るということもありますが、グローバル化が企業にとっての切実な課題になってきたことの証左でしょう。

そんなグローバルブームに便乗して、もう一冊ご紹介しよう(笑)という企画。

グローバル企業の人事リストラ戦略 事業再編・撤退における人員整理の法務



日本/アメリカ/イギリス/フランス/ドイツ/中国/オーストラリアの計7カ国の労働法におけるリストラにまつわる法制と慣習のみをまとめた本。ストレートに言えば、いかに安全に従業員をクビにしEXITするかを考える本です。

この顔ぶれの中では俄然中国が注目なわけですが、そこは著者サイド(TMI総合法律事務所)も当然心得ているわけでして、総ページ数300頁のうち60頁あまりを割いて解説する力の入れよう。

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解説の中身も、単に条文を解説していくというものではなく、
・異動・減給
・ワークシェアリング
・一時帰休
・個別解雇
・希望退職制度
・整理解雇
というようなリストラの具体的手法ごとに配慮すべき法律の条文を当てはめていくスタイルが取られているところに、工夫のあとが見られます。例えば、“異動・減給“の項の「法的根拠」の解説を読むと、
職種、職場、職位、賃金等労働条件の更新であり、法的には労働契約の変更(労働契約法第35条、第17条)に該当する。
従って、要件は、1)当事者の合意と2)契約書への記載である(労働契約法第35条、第17条)。
といった具合に。


経営者として、解雇にリスクがあるからという理由でその国への進出をやめるなどというビジネス判断をするはずはありません。加えて、実際にリストラをする重大な局面では、当該国の弁護士にアドバイスを貰うわけで、進出する前から解雇法制を完全に理解しておく必要もないと思います。

そうは言っても、その国の人々の力を借りてビジネスをする以上、「これから進出する国で労働者に対して負う責任の重み」をできるだけ正確に理解した上で進出し、やむなく退出する際にも立つ鳥跡を濁さぬよう備えておくのが、グローバル企業の経営者たるもの(そしてそれを支える法務たるもの)の最低限のマナーだと思います。その意味で、この本はお役に立つことでしょう。

【本】グローバル人事 課題と現実 ― グローバル経営度を測る分水嶺は、役員会議を英語化=ローコンテクスト化しているかどうかにある

このエントリで伝えたいこと

  • グローバル経営とは、ローコンテクスト経営である。
  • 言葉の壁は文化の壁、文化の壁はマネジメントの壁、マネジメントの壁は経営の壁。

英語会議は必要十分条件ではないけれど

楽天が毎朝月曜に全社員を集めて行う「朝会」を英語でやると聞いたときは、何かのパフォーマンスと社員の啓発程度の話かと思ったのですが、

ついに役員会議までも英語でやることにしたそうで。


その話を聞いて思い出したのがこの本。

グローバル人事―課題と現実 先進企業に学ぶ具体策

組織とは、上からの指示と下からの報告相談、さらには横からの関連部門によるサポートや要請といったものによって成り立っているのです。
それぞれの職務についている人々が、それぞれ相手に向かってさまざまな行動を起こしており、その矢印のぶつかるところで議論や再確認、あるいは業績に対する認識のずれが修正され、日々のビジネスの方針が決まっていくわけです。
これからのビジネスの世界は、それがたとえ日本国内向けのものであっても、ますますローコンテクスト化していきます。「いわれなくても、そんなことはわかっているだろう」。かつての日本企業で絆の強さを示すポジティブ表現だったこの発想ほど危険なものはありません。

ここでいう「ローコンテクスト化」とは、世界中に散らばる社員がお互いに共有している知識や経験が少ないことを前提にして、当たり前だと思うことでもあえて明示的に(言葉で)説明していくということ。

この本では、三菱商事・キャノン・トヨタ・帝人・マツダといった、日本“発”のグローバル経営に力を入れている企業の人事部を取材し、まとめてくれているのですが、どの企業も苦労しているのが、この社内コミュニケーションのローコンテクスト化。

イントラネット上にあるような情報をすべて(事実上の世界共通言語である)英語化し、ローコンテクスト化していくことをグローバル経営の最低条件と定義している各社ですが、そもそも英語でコミュニケーションしているもの(議事録・成果物)をそのまま載せるのと、日本語やその他現地語のものを英語化するのとでは、コンテクストを共有するスピードも深さも違ってくるわけで。各企業がその部分で苦労している様が、インタビューの内容からよく分かります。

組織をつなぐコミュニケーションをローコンテクスト化するためには、そもそもの方針・ビジョンといった企業のコンテクストを決定し発信する経営者のコミュニケーションそのものをローコンテクスト化する必要がある
そう考えると、グローバル経営への本気度・実施度は、経営会議を英語でやっているかどうかに如実に現れるように思います。
 
楽天のグローバル展開にかける本気度は、こんなことからも伺えるのではないでしょうか。

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