企業法務マンサバイバル

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ガチャ

ガチャ確率の開示は法的義務となるか、なった場合ゲームはどうなるのか

 
昨日平成30年1月26日付、消費者庁がガチャ確率表示に関する景品表示法第5条第2号(有利誤認)の措置命令を行いました。以下リリースからの抜粋です。

アワ・パーム・カンパニー・リミテッドに対する景品表示法に基づく措置命令について
イ 実際
  • 本件役務を1回ごとに取引する場合の本件役務の取引1回当たりの「クーラ」と称するキャラクターの出現確率は、0.333パーセントであった。
  • 本件役務を10回分一括して取引する場合の「万能破片」と称するアイテムの出現に割り当てられる1回を除く9回における本件役務の取引1回当たりの「クーラ」と称するキャラクターの出現確率は、9回のうち8回については0.333パーセントであった。

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⑶ 命令の概要
ア 前記⑵アの表示は、前記⑵イのとおりであって、本件役務の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
イ 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
ウ 今後、同様の表示を行わないこと。


オンラインゲームのガチャ(ランダム型アイテム提供方式)の確率表示に言及した措置命令としては初めてのものになります。それもそのはず、各社がガチャの確率を表示するようになったのは2年前、ある事件をきっかけに作られた業界ガイドラインの制定が契機となっているからです。

(フィーチャーフォンの一部ゲームを除き)ほとんどのオンラインゲームがそもそも確率を表示していなかったところ、このような自主規制で表示をせざるを得なくなったことにより、不当表示を発生させる可能性も高まってしまったわけです。上記措置命令の対象会社の行為が故意なのか過失なのかはわかりませんが、だますつもりはなかったようなちょっとした表示ミスでもこのような不当表示として法的責任を問われるというのは、本当に大変だと思います。


さて、ここで確認しておきたいのは、現時点ではガチャの確率表示自体は法的義務ではない、という点です。しかし最近になって、世界の流れがガチャの確率表示をまるで法的義務かのように扱ったり、これから立法していくべきという方向に傾きはじめています。このブログでも昨年11月に取り上げたハワイ州でのルートボックス確率開示立法の動き、そしてアプリ業界のルールメイカーとなってしまっているAppleのプラットフォームルール改正によるルートボックス確率開示強制に加え、ワシントン州でも上院議員が法案を提出したとのニュースが報道されているのは、ご存知の方も多いと思います。

もちろん、ゲームといえども有償で行うものについて、消費者保護、特にお金の取り扱いに関する意思能力が未熟な未成年者を保護すべきというバランスを取るためにある程度の規制は必要でしょう。そのバランスポイントとして、確率を表示して未成年者に現実の厳しさを知らしめるというやり方をとるという手法とせざるを得ないのも、ある意味では妥当に見えます。


しかし、ここで不安が生じます。そこで、単純におカネをバーチャルな「箱」に投入してスイッチを押すと「運」にまかせて何らかのアイテムがいずれか出現する、日本流にいえばガチャ、海外流にいえばルートボックスに限定してそうした法的義務を作るだけであれば話は簡単なのですが、ゲームの世界はそんなに単純ではない、ということです。それは、ゲームと名のつくものに「運」を要素に含まないものは、存在しないからです。


「運」の要素を含まないゲームは存在しない、それは本当か?という方には、たとえば以下の書籍が参考になります。



Cailloisは またゲームを4つの区分,そして2つの尺度により分類し,考察を加えている。 4つの区分とはアゴン〔Agon〕,アレア〔Alea〕, ミミクリ〔Mimicry〕,イリンクス 〔Ilinx〕 である。それぞれは競争のゲーム,偶然のゲーム,模擬のゲーム,眩量のゲームと言い換えることができる (Caillois, 1967(邦訳, 2004))。

(中略)

カジノをはじめとするゲーミングは Roger Cailloisの 分類した4つの区分に重なり合う形で存在するが,すべてのゲーミングには必ず偶然が作用することとなるので,図表3-3に示すようにアレア 〔Alea〕 に内包されると考えることができよう。

3-3

(中略)

すべてのゲーミングはアレア 〔Alea〕 に内包される。そして図表3-4にあるように社会機構の外縁にある文化的形成として成立しているが,イリンクス 〔Ilinx〕 的な要素が強まり堕落すると「中毒」つまり「依存症」となる。

3-4


たとえば、こんなオンラインの対戦サッカーゲームがあったとします。

  • 初期状態では11人の選手の能力は全員一緒
  • 対戦して勝ったプレーヤーは、1人だけ自分のチームにスタープレーヤーがランダムに追加され、次の試合に無料でチャレンジできる
  • 負けたプレーヤーも、お金を支払うことで何度でも再チャレンジでき、次の試合に勝てばスタープレーヤーがランダムに追加される

上記引用文献によれば、選手の獲得の場面だけを見ればアレア(運)のゲームのようでありますが、基底にはサッカーゲームのプレイというかなりアゴン(競争)の要素が強くもありますし、勝ち続けるとオールスターチームが無償でできあがっていく様は、ミミクリ(模擬)的でもあります。

さて、ここで問題です。仮にガチャやルートボックスの確率表示が法的義務となった世界において、この対戦サッカーゲームは、果たしてガチャやルートボックスに該当するものと評価されるのでしょうか?

該当するとした場合、課金行動の前に確率を表示せよとなりそうですが、ある選手を獲得できる確率表示は、どのように表示すべきでしょうか?次の試合をプレイして勝つ確率を含めて、コンピューターがその確率を計算し表示できるのでしょうか?できたとして、その確率表示に意味はあるのでしょうか?

未成年者保護、消費者保護のためにガチャやルートボックスの確率表示を法的義務とすべきという議論は、今後も根強く続くと思います。しかし、そこに踏み込むにあたっては、ガチャとそうでないものの境界線が引けるのか、引けたとして技術的に表示が可能なのか、可能として目的に資するか、確率表示義務に萎縮してゲームがゲームとして成立しなくなる可能性はないか、それらについても考えた上で、ルールメイクしていく必要があります。
 

STARWARS BATTLEFRONT2がガチャ規制の虎の尾を踏む

 
米国ハワイ州の複数の議員が、世界のゲーム課金システムの主流となりつつあるガチャ(randomized loot boxes)課金システムをギャンブルに類似するものとして問題視しはじめ、青少年保護を目的とした規制に向けて動きはじめています。

Lawmakers: Those 'pay-to-play' video games are really just gambling for teens(HAWAII NEWS NOW)

Hawaii News Now - KGMB and KHNL

議論の発端となったのは、世界の最大手Electoronic Arts(EA)社がDisneyから版権を得てリリースした「STARWARS BATTLEFRONT2(SWBF2)」。私もPCゲームは好きなので多少やるのですが、同作は、ルーク・スカイウォーカーやダース・ベイダーなどの人気キャラクターを、最初から使わせない「キャラクターアンロック」システムを採用。苦労してアンロック(解放)したキャラクターを強化するガチャ課金へと強く誘導しているのでは、という批判が高まっています。

私たち日本人になじみが深いこれまでのガチャ課金システムは、“課金をして仮想通貨を購入し、ガチャを回せば強い能力をもったアイテム・キャラクターが数%の可能性で手に入るが、課金をしなければ決して手に入らない(あきらめるか、仮想通貨が無償配布される日を待つか)”、というものです。

他方日本以外の国では、こういったガチャ課金システムはユーザーから受け入れられず、明確な法的規制をしているのは韓国・中国等一部の国だけにもかかわらず、導入されているゲームは多くありませんでした。代わりに主流となっていたのが、ガチャアイテムをスキンと呼ばれる着せ替えコスチュームに限定したタイプの課金システムです。近年人気のOverwatchなどは、このタイプに該当します。

これに対し、最近になってEA社が積極的に取り入れ始めていたのが、“長時間プレイすることでリワードポイントを貯めてアイテム・キャラクターを入手するか、それがいやならガチャ課金で運を天に任せるか”という二択を迫る課金システムです。

中でもSWBF2は、人気キャラクターが使えるようになるまでの時間が1キャラクターあたり約40時間、人気の7キャラクターすべてアンロックして使うためにはおよそ300時間、かつそれらキャラクターをアンロックしても、その能力を強化するアイテムを手に入れるためにガチャ課金をしなければならないという、過酷なゲームバランスを採用。Disney社の人気IPゲームとして注目を浴びただけに、ガチャ課金圧が強すぎ、もはやギャンブルではないかという批判が集まってしまいました。あまりに批判が強かったからか、それとも何らかの圧力が働いたのか、最近になってEA社はユーザーに謝罪し、ガチャ課金を休止してアンロック時間も短縮するという対応を始めています。

SWBF2sorry


ここ日本では、消費者庁によって(コンプガチャは違法だが)ガチャ課金というアイテム販売方式そのものは景品表示法上違法ではないと判断され、公式な見解もでています(「インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A」Q16など)。その後も、何度か問題となる事案が発生しながらも、業界団体によるガチャの表示に関する自主規制の努力が続いています。この表示さえ適正であれば、警察も賭博規制をしようという動きは今のところありません。

今回問題が勃発している米国でも、これまではガチャ課金を直接法規制しようという動きは見られず、自主規制団体のEntertainment Software Rating Board (ESRB)も、「ガチャ課金はギャンブルとはみなしていない」というコメントを一部メディアに表明していたところでした。

冒頭リンクの現地テレビ局リポーターによれば、ハワイ州の議員らは、カリフォルニア州やミネソタ州等の議員を巻き込んで規制に向けて議論を進めているとのこと。これが全米に広がっていくのか、ハワイ州にとどまった議論となるのか。しばらく注視が必要と思われます。
 
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