企業法務マンサバイバル

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アプリ

スマートフォンアプリにおける音楽著作権処理の落とし穴

 
スマートフォンアプリのプラットフォーマーが定めるデベロッパー規約を読んでいると、その解釈やあてはめに悩まされることは少なくないのですが、iOSのデベロッパー規約(iOS Developer Program License Agreement)の中にこの条文を見つけたときも、「んんっ?」と我が目を疑いました。

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3.3.18 Any master recordings and musical compositions embodied in Your Application must be wholly-owned by You or licensed to You on a fully paid-up basis and in a manner that will not require the payment of any fees, royalties and/or sums by Apple to You or any third party.

(私訳:3.3.18 デベロッパーが配信するアプリにembodyされた原盤・音楽著作物は、デベロッパーが全権利を保有するものか、Appleからデベロッパーまたは第三者に対して分配される金銭に依存しない一括払いベースでライセンスされたものでなければならない。)

つまり、「アプリ配信によってAppleからデベロッパーに支払われる分配金のうち、〇%をBGM利用料として支払う」といったスタイルでの許諾契約ではNGということになります。さらに続く後段には、

In addition, if Your Application will be distributed outside of the United States, any master recordings and musical compositions embodied in Your Application (a) must not fall within the repertoire of any mechanical or performing/communication rights collecting or licensing organization now or in the future and (b) if licensed, must be exclusively licensed to You for Your Application by each applicable copyright owner.

(私訳:加えて、アプリが合衆国外で配信される場合、アプリにembodyされた原盤・音楽著作物は、(a)著作権管理団体が現在または将来に渡り管理する公衆送信権の範囲内であってはならず、かつ(b)ライセンスされたものである場合には、適切な著作権保有者からそのアプリ向けにデベロッパーに対して独占的にライセンスされたものでなければならない。)

とも定められています。日本で有名作曲家等を招聘しアプリのBGMを制作させて利用許諾を得るような場合、作曲家がJASRACメンバーであると、基本的には著作権をJASRACに信託することになるかと思いますが、そうするとこの規定に抵触してしまう気がします。


それにしても、Appleはなぜこんな細かいことまで規約を定めているのでしょうか?思うに、Apple自身以外にDL/ストリーミングモデルの音楽配信ビジネスをiOSのプラットフォーム上で行わせないように、という思惑がありそう。さらには、音楽著作物の権利者から直接Appleに対してアプリ(にembodyされた音楽著作物)の配信差止めやフィーの分配請求が来てしまうような面倒を避けたい、という意図もあるのではと推測。

スマートフォンアプリの権利処理の場面では、どうしても高精細な画面を生かした映像・画像の権利にばかり目がいきがちですが、フィーチャーフォン時代との違いとしてBGMが当たり前のように実装されるようになってもいますので、このあたりも注意が必要になります。
 

オンラインアプリサービスでのユーザーデータ譲渡・引継ぎの現場(追記あり)

 
スマートフォンアプリの姿をしたオンラインサービスが花盛りです。

すべてのサービスが順調に売上を上げ、終わることなく提供されるのであれば問題ありません。しかし、色々な事情でサービスを継続できなくなるアプリも、今後大量に発生することでしょう。そのとき、ユーザーがたくさんいる状況だったりすると、おいそれとはやめられないのが、オンラインサービスのつらいところです。ベンチャーから大手まで、今いろいろな会社がオンラインアプリサービスに乗り出していますが、この後々の責任をよく考えないで手をだすと、結構大変だと思います。

利用規約に基づき、ユーザーに告知してサービスを終了する。これが一番シンプルな方法です。しかし、何万人もユーザーがいるサービスだと、終了に納得できないユーザーも一定数いるかもしれないし、せっかくのユーザーデータ資産ももったいない。じゃあどうしよう?ということで、二番目の選択肢として考えられるのは、サービスをまるごと他人に売却して、他人にユーザーデータを引き継ぐという方法です。これは法律的にいえば「事業譲渡」となります。

そんなことは昔からウェブのオンラインサービスでは少なからず行われてきたことですし、会社法や個人情報保護法上の手続きさえきちんと踏めばできるはずなのですが、スマートフォンアプリの場合、実務上悩ましい問題が一つあります。それは、アプリマーケットにおいてアプリはデベロッパー(企業)アカウントごとにGoogle/Apple等プラットフォーマーに管理されており、そのアプリの持ち主をデベロッパー自身が勝手に変更することはできない、という問題です。

現在進行形でサービス譲渡(引継ぎ)をしているアプリに遭遇


当然ながら自社のデベロッパーアカウントをまるごと譲渡するわけにはいきませんし、アプリ単位でデベロッパーアカウントを変更するということもプラットフォーマーは実務上認めていないと聞きます(※追記参照)。じゃあどうすればいいんだろうと思っていたら、実際に大手デベロッパーがオンラインアプリサービスを譲渡(引継ぎ)している現場に運良くでくわしました!

実際私もちょくちょくプレイしていた、EA社の"World Series of Porker(WSOP)”というオンラインポーカーアプリ。これが、新興デベロッパーPlaytika社に譲渡されることになったようです。昨日たまたまEA社のアプリをたちあげたら、タイトル画面に続き、こんな同意画面が。

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なるほど、ゲーム内の仮想通貨ボーナス付与を移行インセンティブにしていますね。ちなみに、画面の一番下にあるほそ〜い字のサービス規約・プライバシーポリシーのリンクは、新アプリのデベロッパーであるPlaytika社のものとなっており、この画面で規約等の同意を取ったことにするつもりのようです。

同意ボタンでアプリ間の移行がされるわけではない


さて、先の同意画面の真ん中の「インストール」を押すと、自動的に新アプリがインストールされてユーザーデータが移行されるのかな?と思いきや、そうではありませんでした。ここでは単に、Playtika社アカウントのWSOPアプリがダウンロードできるマーケットページに飛ばされます。通常通りAppleID・パスワードを入力してダウンロードすると、旧アプリと似たようなアイコンの新アプリがダウンロードされました。

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新アプリを立ち上げてFacebook連携をつかったログインをしてみますが、この時点ではまだ旧アプリのユーザーデータは引き継がれておらず、まったく新規ユーザー扱いでした。一方、旧アプリは現時点でもまだプレイでき、ユーザーデータもそのまま残っています。どうやら、先ほどの同意画面に表示されていた12/20までは旧アプリ上でプレイをさせ、12/20になると旧アプリから新アプリにプレイヤーデータを反映させるつもりのようです。

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オンラインサービスですから、1つのユーザーアカウント(サーバー内のユーザーデータ)に対し2つのアプリからアクセス可能にするのは(不可能ではないものの)危険を伴います。結果、旧アプリを告知期間終了ギリギリまで生かしつつ、新アプリではその日まで(新規ユーザープレイはできるが)移行対応は何もしない、こういう方法をとるしかなくなるということなのでしょう。

引き継がれるのが嫌だったら、期限までにオプトアウト


なお、先ほどの旧アプリの移行同意画面には、「データの移行をしたくない場合は、2013年12月20日までに設定からデータの移行を無効にしてください」との記載があります。つまり、移行がいやだったら拒絶の意思表示をするオプトアウト方式ということですね。実際、旧アプリ内の設定画面を見てみると、こんな風にオプトアウトボタンがありました。

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本アプリの個別具体的手続きは、12/20になってみないと確かなことはわかりませんが、結局、一般論としてオンラインアプリサービスでユーザーデータを譲渡するには、
1.旧アプリとは別に、ユーザーを迎える新アプリを譲受デベロッパーが用意する
2.移行を望まないユーザーはオプトアウトをするよう、一定期間告知する
3.オプトアウトしなかったユーザーデータを、ある期日をもって新アプリへ反映する

という方法となる模様。

この方法で問題になるユーザーがいるとすれば、移行期間中一度も旧アプリを立ち上げず、2のオプトアウトの機会に気付かなかった人でしょうか。アプリって、しばらくやらないと平気で1ヶ月とか放置しますから、気づかないユーザーさんもいるかもしれません。


自分が実際に検討する際の貴重な資料になりそうなので保存。


2013.12.1追記

※に関して、そういえばAppleがアカウント間のアプリ譲渡を認める変更をしたという話を@kataxさんがしていたのを思い出しました。
今年6月ごろに、デベロッパー向けのiTunes Connectのメニューに、“Transfer App”というメニューが足されて、アプリの譲渡はできるようになっているようです。アプリ譲渡マーケットも立ち上がっているみたいですね。

iPhoneアプリを譲渡できる Transfer App をやってみた。
アプリの売買・譲渡は盛り上がってくるか?

とはいえ、オンラインサービスのユーザーアカウント移行までが自動化できるものではなく、法律上当然に求められるユーザーの同意を取ってきちんと移行するには、実務的には上記EA社/Playtika社のようにアプリを2つ併行させる方法しかないんじゃないかと思います。
 
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