現時点での和文契約書式(ひな形)本の決定版。ご紹介が遅くなったのは、私のミスでした。





昨年発売された当初パラパラっと読んで「特に見るべきところはないなあ」とすぐにPDF化してしまったため、ほとんど読まずにいたのですが、BLJブックガイドでの有名企業法務系ブロガーronnor先生の評や、さらに最近一緒にお仕事をはじめた先生から「いろいろあるけどこれがやっぱりベスト」との評を聞き、読み直したら確かにその通りだったので、また紙の本を買い直してしまいました。


類書との明確な違いを感じるポイントが、条文と判例が丁寧に参照されているところ。本書のような書式・ひな形集では、通常、「法律の原則は概略Aであるが、実務ではそれはさておきBという考え方がよく取られ、結果このような条項となることが多い」と、後段の実務的な解説が喜ばれることもあって、前段の法律上の原則に関する厳密な解説が端折られる傾向があります。本書はそこを一歩踏み込んで、基礎となる条文、そして判例に垣間みえる契約実務(よくある条項例)の限界も紙幅の許す限り解説し、それを踏まえた上でひな形の条項解説をするというスタイルが徹底されています。そのおかげで、ひな形を加工しようとする際に応用が利くのです。また、新入法務パーソンの方であれば、先輩社員からOJTで教わる契約実務を裏付ける法的根拠を学ぶのに、参照されている条文・判例を引きながら通読するなんて使い方もよさそう。


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すでに類書を数冊持ってるからもう要らないよ、とお考えのベテランの方にとっても、そろそろアップデートは必要な時期かもしれません。特に賃貸借契約やソフトウェア開発契約の分野では、平成20年以降も裁判例が多数出ています。経産省・JEITAモデル契約書にIBM対スルガ判決等の動向を踏まえて改良を加えた本書のひな形とその解説をチェックするだけでも、価値があると思います。
 
秘密保持義務の例外に上場企業にとって必須のはずの証券取引所からの開示要求対応が含まれてない(ronnor先生が突っ込まれてました)といったモレもありますが、法務パーソンの間でひな形書式本として昔から「定番」と言われている本(弊ブログでは紹介していない某書)には、それ以上に不正確な記述があったりします。対して、こちらは有斐閣 × 阿部井窪片山印の「お墨付き」。おそらく、債権法の改正が成るまでは、この本が最良の定番ひな形本とされることでしょう。

食わず嫌いは損をすると思います。