企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

_広告・消費者法務

一億総ブランディング時代におけるフリーライドリスク


ダイヤモンドオンラインの永沢弁護士の記事
から。

サーティーワンアイスクリームが、コールドストーンクリーマリーを、「キャッチコピーが類似している」として不正競争防止法に基づき訴えたとのこと。著名表示の冒用(フリーライド)を主張されているようです。

そのキャッチコピーというのが・・・
『We make people happy』=『サーティーワンアイスクリーム』
『make people happy』=『コールドストーンクリーマリー』

だったらしい(笑)んですが、まあ、残念ながらどちらも一般人には著名表示としては認知されてないでしょうし、仮に認知されていたとしても、あまりにも一般的な英語表現にすぎないような。

今回のキャッチコピーが著名表示にあたるかどうかの結論は裁判所にお任せするとして、他人が築き上げた著名表示(ブランド名など)を勝手に用いるなどして、営業上の信用や名声に便乗することを、フリーライドといいます

そういえば、求人広告の世界でも、ときどき気になる記述を見かけるんですよね。
ホンダや日産、富士通、京セラなど大手メーカーの開発に携わる当社。
プレイステーションのコントローラーには、当社の技術が生かされています。
中田英寿さんも当社のシューズを愛用!

特に、知名度の低い技術会社・部品メーカーにとっては、自社の魅力を伝えるためには、著名な会社・商品の名前(ブランド)を借りるのが一番手っ取り早いもの。

こういった求人広告程度では、(その内容が嘘でなく真実なのであれば)「フリーライドだ!」と非難されることはないのかもしれません。

しかし、“ブランディング”が企業戦略の重要なテーマとなり、そのためにコストをかけるようになってきている昨今、今回のサーティーワンのように、フリーライドに対する権利保護意識も高まっていく方向にあることは間違いないでしょう。

法務部門・法務担当者は、そろそろフリーライドリスクに対する意識を高めておくべきではと思います。

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【本】実例・差別表現―求人広告における就職差別は、「NGワードを覚える」ことでは解決しない

就職・転職メディア業を営む会社には、一般的に「求人広告の表記チェック」業務があります。

チェックの観点は主に2つ。
1)労働条件が労働基準法に抵触していないか
2)人権上問題となる表現はないか

特に2)については、広告を作成している本人に差別意識がなくても、慣用句のようにNGワードを使ったり、文脈上差別的な表現になってしまう場合があります。

何がNGワードで、どういったものが差別的表現にあたるのか、法律では特に定められていません。基本的には言論・表現の自由が憲法で保障されているわけですから。

じゃあ法律で禁止されていないから何を書いてもいいかというと、ひとたび世の中基準に外れた、弱者を傷つけるような差別的な表現を使おうものなら、これまた憲法で保障されている個人的人権の尊重を侵害する行為として、各人権団体から徹底的に糾弾されるばかりか、監督官庁から指導されるリスクすらあるのです。

日々移り変わる世の中の差別意識を敏感に察知し、適切な表現に修正する。アンテナの高さ・感性・言語力が要求される仕事がこの表記チェックの業務になります。

ですので、就職差別についての社内教育も、社内用の表記マニュアルも随時改訂するなど、時代が求める水準に合わせて随時修正する必要があります。そのためにも、私の中の差別表現についての知識を定期的にバージョンアップすることが必要になるわけですが、特に役立っているのが今月改訂再発されたこの本。


著者は小学館で37年間、差別表現の観点から出版物をチェックする仕事に携わられていた方。こういったお仕事に携わられている方は非常に限定されているだけに、その貴重なノウハウを本にして頂けただけでも、大変ありがたいお話です。
(しかも別の出版社で絶版になったものを、今年になって再発してくれたんですね。ナイスです、ソフトバンククリエイティブさん。)

この本では、
・差別とは何か
・差別表現の実際例
・差別表現がひとたび発生すると、人権団体からどのように
 非難され、責任を取らされることになるのか
が、実際の裁判例・糾弾事例をたくさん踏まえて書かれています。

たとえば、就職・転職メディアがおこしがちなNG表現事例で言えば、「最終面接に伴い、身元調査を行う場合があります」というような表記。

企業としては、本人の職務経歴に虚偽がないかを本人同意のもと照会する行為一般を「身元調査」と表現する場合もあるのですが、この言葉は被差別部落出身者に対するもっとも象徴的な差別表現にあたります。

そこまで特殊な事例ではないけれど、ちょっと気を抜くと起こしてしまいがちな典型的差別表現が、
「全体で○人、うち女性は○人の部署です」
「女社長」
「営業マン」
という女性差別につながる表現。

十数年前まではおそらく意識されずに求人広告に記載されていただろうこのような言葉も、男女雇用機会均等法も強化され、もはや言い訳の余地はなくなってきています。

そのほか、「屠殺業」、「用務員」、さらには文脈によっては「運転手」といった職業名も、職業差別として使ってはいけない表現にリストアップされはじめています。

このように、星の数ほどある差別表現事例を読んでいると、差別の問題は、もはや「NGワードは何かを覚える」というアプローチで解決できるものではなく、時間をかけて歴史を学び、今の世の中で起こっていることを観察し、偏見・ステレオタイプに苦しんでいる人の痛みを知ることが必要ということが、痛いほどよくわかります。

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