Legal Operations(リーガル・オペレーションズ)とは、

経営の視点で法務を捉え直し、法務をより経営に役立つものに変革していく取組であり、専門職(本書「はしがき」iより)
ACCの2022年調査によれば、弁護士資格を持たないLegal Operationsのシニアポジションの基本報酬(インセンティブ・ボーナスを除く。)の中央値が3,700万円を超えている(P4より)

とのこと。

私はてっきり、「法務業務の現場における効率化・カイゼン活動」程度の浅い認識をしていましたし、職人気質の法務パーソンからは、彼らが忌み嫌う「攻めの法務」のことばかりを考えるものと誤認されている節もあるように思います。

米国企業で生まれたこの概念を正しく広め、日本企業にどう適用していくべきかについて、実際に日本企業で先進的にリーガル・オペレーションズを遂行する経験者たち26人が寄り集まり、生の体験談を交えて書かれたのが本書です。


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本書を購入する直前に、編者でありCLOC Japan発起人でもある鈴木卓先生よりそのお考えの一端を拝聴していた上、本書の元になった商事法務ポータルでの連載も熟読していたつもりでしたが、書籍化にあたり連載内容がブラッシュアップされただけでなく、途中途中に「Interview」コーナーで企業内でのリーガルオペレーションズ導入の苦労話などが新たに加えられたことで、没入感を持って一気に読了してしまいました。

そのポイントを私なりに一言でまとめるならば、「会社の全容が見えている(つもりの)法務だからこそ、人の振り見て我が振り直せ」です。

法務という仕事が、所属する企業の行動を法令等に照らして客観的に評価し、リスクを抽出・解消する立場であることからか、自身の業務も客観視できているという自己評価に陥りがちです。しかし、その所属企業・業界ごとのその特殊性にかまけて仕事をタコツボ化させ、効率化や高度化を怠っているような事例も見聞きします(自分を振り返ってもそれは否定できません)。

本書でいうLegal Operationsの実践とは、そうしたタコツボ化を回避するためにも、CLOCが取りまとめたフレームワークである「CLOC CORE 12」にまとめられた視点ごとに、法務組織のが陥りやすいワナや至らぬ点を自覚することからスタートします。


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では、自組織の至らぬ点が自覚できたら、それをどう直せばいいのでしょうか?多くの読者が、解決に役立つおすすめのリーガルテックでも紹介してくれるのかな?と期待するでしょう。しかし、「CLOC CORE 12」には、組織が目指すべき方向性は示されていますが、具体的なソリューションやツールまでは示されていません。だからこそ、本書の存在価値があります。

本書では、自組織の課題を発見した法務パーソンたちが、企業の中で実際にどのように振る舞いその解決に向けた行動をしているのかを、現在進行形で具体的に語ってくれています。これをそのまま真似すれば同じように成功できるという保証はないものの、同じような境遇に陥った法務パーソンが、どのぐらいのエネルギーと行動量を使って当該所属企業内でその課題をクリアしてきたのかを知ることは、手掛かりとして大変参考になる情報です。


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リーガル・オペレーションズの概念が日本でも普及する中で、私個人にとって最も関心があるテーマが、ALSP(Alternative Legal Service Provider)の未来です。

ALSPは、一般に、従来の法律サービスを提供する法律事務所以外の者で、伝統的な法律事務所のモデルとは異なる新しい手法(法務領域以外を含むコンサルティングやテクノロジーの利用)で、リーガルサービスを提供する会社等の組織を指す。(P156)

つまり、弁護士等有資格者ではない法人に対し、法務業務をアウトソーシングするというもの。日本では弁護士法の壁があると言われ、米国においても全く規制がないわけではありませんが、既成事実として大企業を中心に急速に普及しています。十数年前にこのブログのタイトルに「サバイバル」を冠したのも、まさに法務組織のアウトソーシング化が進み、自身の存在価値がより厳しく問われるようになるのではという危機感からでした。本書にも、ALSP普及後の日本の法務の未来予測が記されています。当初予定されていた法曹人口の拡大によるものとは少し違うシナリオではありますが、いよいよ現実のものになりつつあります。

なお、CLOC CORE 12のフレームワークと聞いて、「出羽守的に海外発のコンセプトをゴリ押しされるのは嫌だなあ」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。この点、本書の著者らは「日本で」「日本企業において」この概念を導入するには?をきちんと論じてくださっているのでご安心を。むしろ、みなさん同じような悩みを抱えながら諦めずに歯を食いしばってらっしゃるのだなあと、励まされるはずです。

1人法務にはちょっと早いかもしれず、一定規模の組織への成長過程にある5年目以上の中堅法務の方におすすめの書籍です。本書に示された共通言語と共通フレームワークの上で課題解決の具体的アイデアを共有し合うことで、悩める法務パーソンが救われればと思います。


Legal Operations の実践
商事法務
2024-03-12