著者のお一人である三浦法律事務所の尾西祥平先生からご恵贈いただきましたが、そうでなくても、自分で買って書評を書いたであろう、素晴らしい労作です。
先月出版したばかりの拙著『利用規約の作り方』で私が骨を砕いたのは、「法律を知らない方に向けて、法的リスクを共感していただけるエピソードと実例を挟みながら、わかりやすい言葉で法律のエッセンスを解説する」という作業でした。利用規約という限定的な法領域でもそれなりの作業量となり、苦労して書き上げたという自負がありましたが、これに対し本書の著者下平将人先生・尾西祥平先生が、この作業を、およそ企業法務で取り扱うことになるであろうすべての法領域にわたって漏れなくやり切ってしまわれたのが本書です。

全法分野をカバーしたからこその、583ページ・背表紙35mmという厚み。各法分野・テーマごとに、まず起業家が陥りやすいリスクのあるあるストーリーを創作し、漫画家にもイメージを伝えつつ、そのストーリーに対応させながら法律のエッセンスを法律用語をできるだけ使わずに解説していく。日々法改正や規制のアップデートがされていく中で、想像するだけでも恐ろしい原稿作業量です。優秀な弁護士の方であれば能力的には「できる」のかもしれませんが、これを自分のためでなく、読者のためにやり遂げようという目的意識や自己犠牲の精神があるかは別問題でしょう。
なのにお値段は税別2,600円(!)。1ページ10円という暗黙のしきたりが未だ存在する法律出版社からは絶対出せない、お買い得すぎる価格設定にも驚きです。弁護士から3日間コース・30万円でレクチャーを受けたとしても足りないぐらいのボリュームと質なのにもかかわらず。
さらに本書の素晴らしい点として、法律のエッセンスの解説だけでなく、以下のような「著者の実務経験上、このへんが勘所/落とし所だと思っている」という主観も、きちんと添えてくださったところを挙げたいと思います。
・設立時の株式数は何株にしておくべきか
・取締役会を設置するタイミングはいつがいいのか
・実務上よく見る契約類型トップ10
・スタートアップが契約書の中で注意すべきクリティカル条項TOP6
・創業者株式の希釈化はどの程度までが限界か
・内部統制上不正出金を防ぐ5つのポイント
安定した大企業で、30人も法務担当者を雇っていれば、リスクや注意点の洗い出しはいくらでもできます。しかし、設立後数年の会社は法務以外にも気にしなければならないことがたくさんある中で、このステージの経営者が知りたいのは「最低限注意しておくべきこと」「優先順位を高くすべきこと」です。スタートアップをよくサポートしてますよと標榜する専門家であっても、ではこの辺についてどう思いますか?と質問してみると、「Aという考え方もあれば、Bという考え方もとりえますね」と玉虫色の回答が返ってきがち。そうしたポイントについて、誤魔化さずにはっきりと文字にして書籍として世に出していただいたことがありがたい。
個人的には、そんな中でも著者お二人が多く関わっていらっしゃるであろう「創業期」と「IPO直前期」の法的リスクの解説に、高い熱量を感じました。特に、資金調達周りの法務については、会社法上の理論や専門用語について説明できる弁護士はたくさんいますが、なぜその具体的方法が業界スタンダードとなっているか(例えば優先株式が最も多く使われているのはなぜか)という背景知識についてまでは、実はよくわかっていないという方も少なくないように思われます。
この点について、VC・CVC側の立場で書かれたテクニカルな法律書籍はいくつかあったものの、起業家支援の立場のリスクも交えて詳しく、しかもわかりやすく語れるのは、この領域にコミットしている著者お二人のサポート経験の賜物だと思います。
起業家向けとされている本書ですが、正直、この一冊を熟読した上で、必要な領域について専門書を数冊買い足しながら学習をすれば、スタートアップから上場手前までの1人法務の仕事の8割がたはこなせると思います。
先月出版したばかりの拙著『利用規約の作り方』で私が骨を砕いたのは、「法律を知らない方に向けて、法的リスクを共感していただけるエピソードと実例を挟みながら、わかりやすい言葉で法律のエッセンスを解説する」という作業でした。利用規約という限定的な法領域でもそれなりの作業量となり、苦労して書き上げたという自負がありましたが、これに対し本書の著者下平将人先生・尾西祥平先生が、この作業を、およそ企業法務で取り扱うことになるであろうすべての法領域にわたって漏れなくやり切ってしまわれたのが本書です。

全法分野をカバーしたからこその、583ページ・背表紙35mmという厚み。各法分野・テーマごとに、まず起業家が陥りやすいリスクのあるあるストーリーを創作し、漫画家にもイメージを伝えつつ、そのストーリーに対応させながら法律のエッセンスを法律用語をできるだけ使わずに解説していく。日々法改正や規制のアップデートがされていく中で、想像するだけでも恐ろしい原稿作業量です。優秀な弁護士の方であれば能力的には「できる」のかもしれませんが、これを自分のためでなく、読者のためにやり遂げようという目的意識や自己犠牲の精神があるかは別問題でしょう。
なのにお値段は税別2,600円(!)。1ページ10円という暗黙のしきたりが未だ存在する法律出版社からは絶対出せない、お買い得すぎる価格設定にも驚きです。弁護士から3日間コース・30万円でレクチャーを受けたとしても足りないぐらいのボリュームと質なのにもかかわらず。
さらに本書の素晴らしい点として、法律のエッセンスの解説だけでなく、以下のような「著者の実務経験上、このへんが勘所/落とし所だと思っている」という主観も、きちんと添えてくださったところを挙げたいと思います。
・設立時の株式数は何株にしておくべきか
・取締役会を設置するタイミングはいつがいいのか
・実務上よく見る契約類型トップ10
・スタートアップが契約書の中で注意すべきクリティカル条項TOP6
・創業者株式の希釈化はどの程度までが限界か
・内部統制上不正出金を防ぐ5つのポイント
安定した大企業で、30人も法務担当者を雇っていれば、リスクや注意点の洗い出しはいくらでもできます。しかし、設立後数年の会社は法務以外にも気にしなければならないことがたくさんある中で、このステージの経営者が知りたいのは「最低限注意しておくべきこと」「優先順位を高くすべきこと」です。スタートアップをよくサポートしてますよと標榜する専門家であっても、ではこの辺についてどう思いますか?と質問してみると、「Aという考え方もあれば、Bという考え方もとりえますね」と玉虫色の回答が返ってきがち。そうしたポイントについて、誤魔化さずにはっきりと文字にして書籍として世に出していただいたことがありがたい。
個人的には、そんな中でも著者お二人が多く関わっていらっしゃるであろう「創業期」と「IPO直前期」の法的リスクの解説に、高い熱量を感じました。特に、資金調達周りの法務については、会社法上の理論や専門用語について説明できる弁護士はたくさんいますが、なぜその具体的方法が業界スタンダードとなっているか(例えば優先株式が最も多く使われているのはなぜか)という背景知識についてまでは、実はよくわかっていないという方も少なくないように思われます。
この点について、VC・CVC側の立場で書かれたテクニカルな法律書籍はいくつかあったものの、起業家支援の立場のリスクも交えて詳しく、しかもわかりやすく語れるのは、この領域にコミットしている著者お二人のサポート経験の賜物だと思います。
起業家向けとされている本書ですが、正直、この一冊を熟読した上で、必要な領域について専門書を数冊買い足しながら学習をすれば、スタートアップから上場手前までの1人法務の仕事の8割がたはこなせると思います。













