森・濱田松本法律事務所の古市啓先生からご恵贈いただきました。ありがとうございます。

多岐に渡り細かい法的論点が散らばるプラットフォームビジネスを徹底的に分析し、「事業軸」と「法律軸」の2面から体系化。運営事業者の立場からはもちろん、ユーザー企業の立場で読んでも役に立つ本です。


プラットフォームビジネスの法務
岡田 淳 (著), 中野 玲也 (著), 古市 啓 (著), 羽深 宏樹 (著)
商事法務
2020-11-12



プラットフォームビジネスを類型化して論じようとしても、「何か」と「何か」にまたがるビジネスが多いため、綺麗に分けられずに挫折しがちです。私が共著した利用規約本でも、ウェブサービスを分類しようと試みて苦労をした記憶があります。

この点、本書2章で採用されている「プラットフォームビジネス11類型」は、解説の読みやすさ・分かりやすさの面から工夫を凝らしたものとなっています。

1 ショッピングモール
2 アプリマーケット
3 サービス予約型プラットフォーム
4 検索サービス
5 コンテンツ配信型プラットフォーム
6 SNS型プラットフォーム
7 シェアリングエコノミー型プラットフォーム
8 マッチング型プラットフォーム
9 ヘルスケア型プラットフォーム
10 FinTech
11 モビリティ(MaaS)プラットフォーム

これらの分類の中で、

  • メジャーではあるが意外にその位置付けに困ってしまう食べログ系サービスを「サービス予約型」に(さらにその小分類を「場貸し型」「取次型」「直営型」に)
  • MakuakeやReadyforなどのクラウドファンディングサイトをFintechではなく「シェアリングエコノミー型」に
  • 一見するとプラットフォームビジネスとは見られにくい検索サイトを(広告サービスではなく)「検索サービス型」に
  • 医療系サービスをいずれの類型からも独立させて「ヘルスケア型」に

それぞれ分類している点などには、違和感を感じる読者も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、実際のリーガルリサーチの場面で本書を使う場面を想定すると、この分類の妙が理解できます。各ビジネスの検討から逆引きしたときに、そこに適用される法令・規制についての解説が読者にとって理解しやすいものとなることを第一に優先したこの分類法こそ、本書の発明だと思います。

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こうした事業軸からの分析を「縦糸」に、全ビジネスに共通して適用される「横糸」に当たる法律軸として第3章で解説されるのが、以下の4法です。

1 透明化法(2020年5月27日可決成立)
2 独占禁止法
3 個人情報保護法
4 プロバイダ責任制限法

この4法は、IT領域でビジネスをするなら常に気に掛かる法令ながら、抽象的な規定ぶりも多くどこまでが規制の対象となるのか、実務上もやもやと不安の霧が晴れない分野でもあります。各法ごとの専門書や行政ガイドラインも、必ずしも自社が企図する新しいビジネスへの当てはめには役立たない中で、プラットフォームビジネスに特化した解説が読める本書はそうした霧を晴らすのに役立ちます。

プラットフォーム上で起こりがちなやらせレビュー(ステマ)を規制する景品表示法や、決済手段に関わる資金決済法など、ここでもっとたくさんの法律を「横糸」としてピックアップし論じることもできたと思いますが、あえてこの4法に絞って厚く論じることにした編集方針は正解だと思いました。

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これだけでも十分な内容ではありますが、本書第4章ではさらにボーナスとして、海外でのプラットフォームビジネス規制動向のまとめもあります。将来の日本における規制強化の風向きを読むのにも役立ちます。


今やビジネスにITを使わない企業はむしろ珍しく、現代のビジネスがITを使った「仕組み」で稼ぐものである以上、最初はどんなに小さくとも成長を続ければいつしかそれは「プラットフォーム」になっていきます。プラットフォームビジネスと聞くと、何かGAFAMのような一握りの企業だけの話のように聞こえるかもしれませんが、他人事としてではなく、永続的な成長を目指す企業で働くすべてのビジネスパーソンが理解しておくべき内容が本書には凝縮されています。


はしがきiiiページの宣言にあるとおり、「国内外の制度改正や事例の蓄積にあわせて、本書も定期的にアップデートしていく」をぜひお願いしつつ、私の法律書マンダラにも収録させていただきます。