弊ブログでも話題にしてきた賞金制eスポーツに対する景品表示法の景品規制について、消費者庁のスタンスがだんだんと明らかになってきました。

東洋経済さんが、消費者庁表示対策課の担当者に取材をしたという記事がこちら。

eスポーツの高額賞金、阻んでいるのは誰か(東洋経済ONLINE)

結論から言うと、興行性のあるeスポーツ大会の賞金は「景品類」に該当しないと考えられるとのことでした。前述のようにいくつか質問を用意していたのですが、いきなり1つ目の質問ですべてが解決です。
では、なぜ興行性のあるeスポーツ大会の賞金が「景品類」に当たらないのかというと、大会における上位者のプレーに対する賞金は「仕事の報酬」と見ることができるからです。
「景品類等の指定の告示の運用基準について」には8つの項目があり、5項目の(3)に「取引の相手方に提供する経済上の利益であっても、仕事の報酬等と認められる金品の提供は、景品類の提供に当たらない(例 企業がその商品の購入者の中から応募したモニターに対して支払うその仕事に相応する報酬)」と記載されています。
この5項目(3)により、興行性のあるeスポーツ大会に参加するプレーヤーのパフォーマンスは仕事として認められ、優勝賞金は仕事の報酬とみなされるようになるわけです。

消費者庁としては、むかーし昔に作った通達に「仕事の報酬等」ならOKって書いてあったのを利用して、しかし「興行性のある」というどこにも書いてなかった謎の要件を(そっと)加えて、この範疇に収める解釈を出しておくのが妥当、というご判断のようです。

ゲーム好き一般人として、結論は妥当のように思っていますが、景品規制のあり方としては、法の下の政省府令のさらに下の、「告示」に書かれた言葉の解釈を示した「通達」をさらに消費者庁が解釈したものだけを根拠に違法・適法を論じていることに、少しばかり異常さを感じます。

そんなことを考えながら、懸賞景品規制について法、告示、通達の中から特に関係する文言を並べて眺めてみました。ご入用の方は、こちらからコピペしていってください。

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このまま告示や通達による解釈で乗り切るなら、少なくとも、「仕事の報酬等」「興行性のある」についての要件定義を、告示や通達で出すべきではないでしょうか。それはそれでかなり滑稽な感じがしますが。

なお、告示・通達とは以下のとおりで、法令とは異なるもの。

国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)
第十四条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
2 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。

今後、高額の懸賞金を供する事業者も現れて立派な経済活動となるであろうeスポーツ業界。このような微妙な行政解釈だけを頼りにビジネスを展開することに、事業者として不安を覚えるのも無理もないでしょう。

「景品表示」法とひとくくりにするのでなく(おそらく今後も必要であろう不当表示規制と切り離して)、これほど解釈も微妙な、そのわりに世界の主要国の中でもかなり厳しめの景品規制がそもそも必要なのか、というところからもう一度考え直したほうがいいのではと思います。
 

2018.3.25 追記

コメント欄にて、「興行性については、経産大臣の国会答弁にもあったようです。ジュリストの最新号の論考にも紹介されてました」との情報をいただきました。ありがとうございます。

早速経済産業大臣の答弁を確認してみました。第196回国会 予算委員会 第7号(平成30年2月7日)の議事録から。

○世耕国務大臣 御指摘のeスポーツは、例えばゲームでやるサッカーの対戦模様とか、そういったものを多くの人で見て楽しむというものでありまして、非常に今盛り上がっていまして、今、全世界で十億ドル程度の市場規模があって、これからも年間一三%ぐらいで成長していくだろうというふうに見ています。

 これは、単に興行としてその大会が盛り上がるだけではなくて、その戦っている映像が例えばユーチューブとかで配信をされて、それがまたビジネスになっていくとか、いろいろな広がりもあって、日本のコンテンツ市場全体の拡大に寄与するというふうに考えています。次期アジア大会でも、競技として取り上げられるというような話も出ているようであります。

 ただ、法律的にいろいろひっかかるようなところがあって、例えば賭博に当たるんじゃないかとか、風営法の届け出が必要じゃないか。これはそれぞれの法律で判断していっていただくしかないわけですけれども、特に景表法、景品表示法にひっかかる。

 要するに、高額商品が出る場合は景表法に抵触するのではないかという指摘もあったわけでありますけれども、これは、経産省も間に入りまして、消費者庁と関連団体の間で整理をさせていただきまして、プロのプレーヤーが参加する興行性のあるeスポーツ大会における賞金は、これはあくまでも仕事の報酬ということで、法律上の景品類には当たらないという形で整理が行われたわけであります。

 そして、さらに、先月、一月二十二日に、今まで三団体に分かれていたのが日本eスポーツ連合という形で一本化をされました。こうやって一本化をされて、今後プロスポーツ化に向けた動きが本格化をすれば、高額賞金が出る大会の開催など、eスポーツの活性化の環境が整っていくのではないかというふうに期待をしております。

 経産省としては、この日本eスポーツ連合と連携を図りながら、eスポーツを健全に発展させて、日本のコンテンツ産業の振興に取り組んでいきたいと思います。

ゲーム業界と古くから結びつきの強い経産省だけに、業界団体がすすめるプロスポーツ化を後押ししたいという思いが詰まった答弁になっており、また本件について消費者庁に対してもかなりの圧をかけていることが伝わってきます。

私が疑問に思っている興行性を要件とする点については「経産省も間に入りまして、消費者庁と関連団体の間で整理をさせていただきまして、プロのプレーヤーが参加する興行性のあるeスポーツ大会における賞金は、これはあくまでも仕事の報酬ということで、法律上の景品類には当たらないという形で整理が行われた」と述べています。「プロ参加」という要素が加味されそうな様子がうかがえますが、これを要件にしてしまいますと、Youtube配信などでゲームだけで生計を立てていくことも可能となった今、ゲームのプロとは何かという答えのない議論に陥ってしまいそうです。

そもそも、景表法担当大臣による発言ではないことも含め、これだけでは今後の業界にとってプラスの方向に影響を与えるものとはならないような気がしますので、やはり正式に消費者庁から告示なり通達なりをはっきりと出していただいたほうがよい(というか、繰り返しですが景品規制撤廃の方向で考えたほうがいい)のかなと思います。

なお、ジュリスト2018年4月#1517は、大江橋法律事務所の古川昌平弁護士によるもの。上記経済産業大臣発言については出版タイミングの関係で軽く触れる程度でしたが、すでにインターネットでも公開されている平成28年消費者庁照会と白石忠志教授の論稿「eスポーツと景品表示法」(東京大学法科大学院ローレビュー、Vol.12 2017.11)をベースに、一般ユーザー観戦大会についてオープン懸賞告示に照らして顧客誘引性がなく適法と解釈することの是非について、さらに検討を深めた非常に丁寧な論稿になっていました。

筆者の理解不足の故かもしれないが、前述のとおり、個人的には、商品又は役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる場合には、当該経済上の利益は、客観的に顧客誘引のための手段となっていると言わざるを得ないのではないかと考えている次第である。

例えば、ゲームメーカーが、参加資格を高度な技術レベルを有する者に限定したeスポーツ大会を主催する場合に、当該メーカーが成績優秀者に対し提供する賞金は、当該大会に出場し得る者による高度な技術を駆使したプレイを見せるための原資としての性格を有するとは言えるだろう。もっとも、当該ゲームソフト購入後の練習によって一定の技術を習得することはあり得るし、大会への参加を1つの目的として当該ゲームソフトを購入しようとする者は相応にいるのではないか。そのため、当該大会について顧客誘引性が「ない」とすることは困難ではないかと思われる。

この古川先生の指摘については、私も同様の懸念を覚えています。