このエントリでは、10/5開催予定のリーガルテックLTに向けた準備と論点整理も兼ねて、法務・知財業務の人から機械への業務代替可能性や、企業法務・知財パーソンが今後力を入れていくべき領域について、考えてみたいと思います。

「人ならではの仕事」を特徴付ける3つの要素


リーガルテックの未来に関する論考をいくつか読んでみた中で、人ならではの機械には代替されにくい仕事とは何か、人と機械のすみわけについて、ビジネス法務2017年7月号の特集「リーガルテックの最前線」に掲載された野村総研上田恵陶奈さんの記事(P12-16)が分かりやすく参考になりましたので、一部を紹介させていただきます。

(オックスフォード大と野村総研の)共同研究では、AIは一部の職業を代替できる可能性があるが、代替できない職業もあるという結果になった。では、AIが技術的に自動化しにくい、苦手とする特徴とは何か。要約すると、「創造性」「ソーシャル・インテリジェンス」「非定型」という特徴がある場合である(下記【図表1】)。逆に言えば、「創造性が必要ない」「ソーシャル・インテリジェンスを必要としない」「定型」の特徴を持つ職業は、AIなどで代替できる可能性が高い。

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McKinseyの調査によれば、現時点のテクノロジーを前提とした場合、全職業では約半分の業務が自動化可能であるけれども、弁護士については23%の業務のみが代替可能とされる。Deloiteは、今後20年で弁護士事務所人員の39%が代替可能と予想している。代替できる範囲に違いはあるが、いずれも2つの点で共通している。すなわち、法律事務所の業務はAIによって自動化される可能性があることと、代替できる範囲は半分未満にとどまり人による業務と共存することである。

野村総研の上田さんは、記事全編にわたり、法律業務の多くは(プロフェッショナル集団である法律事務所であっても)テクノロジーによって代替されていくが人に残る領域はあり、機械と仕事を奪い合うのでなくテクノロジーをうまく使いこなす側にまわることで、人ならではの3つの特徴を生かした高付加価値業務にシフトを進めるべきだ、と述べています。

ではその高付加価値業務とは何か、代替されない業務とは何かを具体的に見極めて、将来求められるであろう経験・スキルを今から戦略的に身につけていきたいところです。

法務・知財の業務別代替難易度


そこで私は、法務・知財の求人広告に記載されている業務をリストアップし、それらを先に紹介した「創造性/ソーシャルインテリジェンス/非定型」の3つの切り口で、私の独断によるテクノロジー代替難易度をランク付けしてみました。特に、Aが2つ以上ついたものは代替可能性はかなり低い(できたとしてもシンギュラリティ以降)だろうということで二重丸を、Aが1つついたものも今後10年は代替困難だろうということで一重丸を、それぞれつけています。

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こうやって眺めてみると、現時点で「C」ランクを付けざるを得ない業務は、実はすでになんらかの形(法律特許事務所・サービサー・請負事業者への委託、派遣社員の活用、システム化)で代替・アウトソースがはじまっている領域であることがわかります。これらの業務が人の手から離れ、ますます機械化されていくであろうことについては、それほど異論はなさそうです。

一方、議論が分かれるのは「B」ランクの業務でしょう。特に、現状の法務・知財パーソンのメイン業務である契約書・特許出願書類等の法律文書作成業務は、業務時間に占めているボリュームが多いだけに、本当に代替されてしまうのかは興味深いところです。この点、当然に案件によって創造性がアウトプットの差を生んだり、非定型で複雑な処理が一部混入していることで機械化がかえって非効率になったり、ということはあるでしょう。しかし、そういった特殊なものを取り除いた大部分が機械で自動化可能ならば、これらの業務も早晩テクノロジーに代替されていくのだと思われます。

そうなると、がぜん「A」ランクが付く業務に注目が集まってきます。法的リスクを早期に発見・切り分けしこれを乗り越えていくための法律・知財相談、人間の感情が交わるからこそ機械だけでは手には負えない訴訟・トラブル・危機管理、そして近年法務の領域拡大エリアとして注目を集める法そのものを動かしていく渉外・公共政策・・・、いずれも、法的トレーニングを積んだ基礎があった上での総合芸術的な業務分野です(水野祐先生が提唱される「リーガルデザイン」の目指すところと多くが重なります)が、この辺の業務の経験を今から積極的に取りに行き、自分の血肉としていく行動力が求められます。

テクノロジーで生まれる余力でシフトチェンジ


法曹人口の拡大による契約書業務の低価格化に危機感を感じこのブログを始めた12年前、契約書作成半自動化サービス「契助」がリリースされてアメリカでもLegalZoomやRocketLawyerといったテック系企業が勃興しはじめた4〜5年前、そして日本でもAIを用いたリーガルテックサービスが矢継ぎ早にリリースされはじめた現在。ゆっくりとしかし確実に業務自動化の足音は近づいてきています。

約10年後の2030年、B〜Cランク業務の多くがテクノロジーによって代替される(かもしれない)未来に備え、自分から積極的にテクノロジーを手懐けてCランク業務を省力化し、生まれた余力でクラッチを切っていち早くAランク業務へシフトチェンジしていく。そんな戦略が理想的です。
 

ビジネス法務 2017年 07 月号 [雑誌]
中央経済社グループパブリッシング
2017-05-20