昨日に続きまして、法律書マンダラ2016の情報法部門より、弊ブログでは未紹介だった12月の新刊をご案内します。
『インターネット法』よりももう少し幅広く、かつさらに法学的な切り口で、情報全般に関する法律と基本概念を体系的に整理する本書。中でも特に集中的に論じられているのが、媒介者=プラットフォーム事業者が負うべき法的責任についてです。
私有地においてビラを配布したことが住居等侵入罪(刑法130条)等の法令違反に問われた事案は著名なものだけでも相当数存在するが、そこでは、実際には土地所有者・管理者の権利と表現の自由との調整が問題となっており、多くの場合、私有地内での行為だけに、いわゆるパブリックフォーラムの法理の適用も困難であり、後者に不利に解決されてきた。
このように、私人の管理する場における表現の自由という主題は新しいものではないが、インターネットにおいては私人の管理する場で行われる表現の量や種類が圧倒的に増大しており、それだけに問題は深刻となる。そこで、情報法においては、公権力、プラットフォーム等の情報媒介者、一般利用者という三面構造を前提とする必要がある。(P33)
アプリストアにおいては、OSの開発者たるプラットフォーム事業者が特定の決済手段の利用をアプリ提供者に強制し、他の決済手段の利用を認めていないことがある。これは決済に関する情報(顧客情報、販売金額等)を集中的に取得し、プラットフォーム事業者としての地位を強化するという事業者の戦略と考えられるが、このような行為は独占禁止法上、不公正な取引方法等に該当する場合がある。(P81)
近時、プラットフォーム事業者の利益水準の相対的な高さに注目が集まっており、一部のコンテンツ事業者はこれを不満に感じている。プラットフォーム事業者の利益水準が高いこと自体は、それがプラットフォームのイノベーションにつながるという側面もあり、責められるべきものではない。ただ、プラットフォームに関わる事業者全体の余剰や、消費者余剰を考えた場合には、利潤の適性な配分については検討の余地がある。そこで、コンテンツの多様性、プラットフォームの効率性(イノベーションの促進)等、プラットフォームに関わる社会厚生についてどのように評価すべきかが課題となる(P81脚注)
このような、プラットフォーム事業者の市場独占によって発生する弊害についての言及が随所になされている点が、一番の読みどころとなっています。
ITビジネスに携わる中で、プラットフォーム事業者が有する圧倒的な優位性に脅威を感じることや、取引の媒介者として本来負担すべき法的リスクの一切を他者に転嫁しようとする態度について憤りを感じる機会は増える一方です。この一年は、その問題意識について関係者にご理解いただくための活動を、私なりの方法でさまざまやってきました。しかし、官公庁にはそういったプラットフォーム事業者と利害が一致する部門があり、この問題で困っている当事者に対し理解を示そうとしない・見てみぬふりをする向きも少なからずあるようです。
そんな中、海外ではライドシェアリングサービスについてタクシー事業者との衝突が、そして日本では民泊あっせんサービスと近隣住人との衝突が取り沙汰されはじめています。2016年も同様の問題が次々と顕在化し、これまでのような対応では済まされなくなるのではないでしょうか。
来年以降は、違ったアプローチでこの問題に取り組んでいきたいと思っていたところ、その法的理論武装の助けとなる頼もしい文献がこうして出版されたのは喜ばしいことです。












『魔法の世紀』
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