音楽業界と音楽著作権実務に大きな影響を及ぼすニュースが飛び込んできました。ちょうど弊ブログでも9月のシルバーウィークに音楽著作権のエントリを連投していたんですが、あれは虫の知らせだったんでしょうか・・・。
▼エイベックスがJASRAC離脱 音楽著作権、独占に風穴(日本経済新聞電子版)
音楽最大手の一角、エイベックス・グループ・ホールディングスが同協会に任せていた約10万曲の管理を系列会社に移す手続きを始めた。JASRACから離脱し、レコード会社や放送局から徴収する使用料などで独自路線を打ち出す。
使用料はCDの場合で税抜き価格の6%、放送の場合は各社の放送事業収入の1.5%を徴収。著作権者への利益還元に役立ってきた。ただ、同協会が著作権管理を独占していることで、レコード会社や配信会社は使用料で有利な条件を引き出しにくいのが実情だ。これが音楽市場の活性化を妨げているとの指摘もある。
エイベックスは子会社のエイベックス・ミュージック・パブリッシング(AMP)を通じ、JASRACに音楽著作権を預けてきた契約を一斉に見直す。今後は系列のイーライセンス(東京・渋谷)に委託する。コンサートなどでの楽曲の演奏権を除くすべての音楽著作権が対象になる。
エイベックスさんといえば、その昔、コピーコントロールCD(CCCD)を大真面目に広めようとした(そして失敗した)歴史があります。当時ダンスミュージックが好きでDJもどきをやっていた私としては、エイベックスさんの得意分野であるトランス系アーティストのCCCDがDJ用機器で読み込めず、ユーザーとして大変困らされた記憶しかないのですが、CCCDといい今回の動きといい、「多少の波風を立ててもアーティストと音楽業界の権利を意地でも守る」というそのスタンスは、まったくブレていないということなのかもしれません。
ところで、記事を読んでいて音楽著作権処理の実務に関わる者として気になったのは、「演奏権を除く」とある点です。音楽著作権を管理団体に預ける際には、下図のようにその著作権の支分権のまとまりごとに信託・委託範囲を指定することになるのですが、JASRACに信託しない道を選ぶ場合、現時点では演奏権の管理(権利行使)が事実上行えません。
その結果どうなるのかというと、たとえば、音楽著作権者の立場として放送以外で大きな収入源となりうるカラオケでの利用において、通信カラオケ業者に対するネットワーク配信に関する公衆送信権と店舗設置カラオケ機器への複製に関する複製権に係る使用料は徴収できても、そのカラオケ機器を設置して演奏している(客に歌わせている)カラオケ店舗に対する演奏権に係る使用料を徴収できない、つまり、その分の著作権者としての収入も得られないということになります。
なぜこうなっているのかと言えば、演奏権の管理には大きな手間がかかるから。全国に支部を持ち、店舗を実際に足で回る多数の徴収担当者を抱えているJASRACだからこそ、この演奏権管理に実効性が担保できているというのが現状なのです。こういった理由から、著作権者としての利益を最大化しつつフレキシブルな音楽著作権管理を実現するための実務として、演奏権のみをJASRACに信託し、その他の支分権をイーライセンスに委託するという組み合わせワザを使うケースもあったりします。
ということで、エイベックスさんも日経記事タイトルにある「JASRAC離脱」とまではまだいかなくて、実は演奏権だけは(しばらくの間)JASRACに残すんじゃないかな?と推測しています。そうでないと、ユーザーとしてもエイベックスさんの楽曲が演奏できないということにもなりかねませんし。なお、いったん全信託していたJASRAC管理楽曲につき、演奏権だけを残してその他の支分権を引き上げるということが実務上できるのかどうかは、私も詳しく知りません。
いずれにせよ、イーライセンスがJRCと統合されエイベックス傘下に入るという動きもあり、将来この演奏権の管理についても強化が図られ、硬直的だった音楽著作権実務にブレイクスルーを実現してくれることを期待しています。










