「知的財産も担当している」と言いながら、実は著作権と商標権ぐらいしか取り扱った経験がなく、特許・意匠権となるとよく分かってないという“自称”担当者は、かなり多いと思います。そういう方にとってはまさに福音の書。





架空の電機メーカーがドローンに掃除機を付けたような「ホバリング掃除機」を開発し、キャラクター商品を用いた販促を行う、というケーススタディをベースに、以下のようなテーマをまんべんなく見渡していくという構成。
・特許公報の読み方
・パテントマップ作成
・特許調査
・特許出願
・出願および審査対応
・外国特許出願
・意匠登録出願
・商標登録出願
・著作権その他法によるキャラクター保護
・侵害警告書対応
・模倣品対策・税関対応
・秘密保持・ライセンス・譲渡契約

ところどころ4コママンガ入り、トータル300ページ弱の見かけによらず、設定されたケースが適切なことが功を奏して、網羅性・具体性・わかりやすさが高水準でバランスしています。本書ウラ表紙の見返しをみると、

中小企業といえども、「もの作り」をする上で、知財担当者は不可欠の存在であり、その基本知識・基本業務が1冊で身につけられないかという問題意識から、本書の構想はスタートしています。

親しみやすいスタイルで、しかし内容は中級レベルに自分でたどりつけるように配慮して執筆されています。

との記載があり、まさにその狙いどおりとなっています。浅すぎず深入りし過ぎず、本書に書いてあるところまでは自社内で理解するのが理想的で、ここから先の専門領域は外部の弁理士(または弁護士)に、というレベル設定がパーフェクト。

その例を挙げると、特許実務を知らない方がまず最初につまづく「請求項(クレーム)」の概念について、出願公報を読むために最低限必要な初級レベルの解説と、

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実際に自社が出願書類を提出する際に最低限求められる、特許法第36条に基づいた中級レベルの解説、

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それぞれのレベルに応じて二度に書き分けて理解を深めさせてくれる親切設計で、これまでの特許法の基本書・実務書にみられなかった良さがあります。


現状の日本では、在メーカー知財担当者でもなければ特許について出願も紛争を経験することがなく、業務として取り組む必要性を感じられないという声は仲間内でもよく聞きます。しかし、そういった平和な時代がいつまで続くかは分かりません。

今年に入って所属している業界団体で講演をした際にも、特許の話題についてはかなり反応がありました。また先日も、ウェブサービス企業に勤める知人と私のメンバーの弁理士とが集まる勉強会があり、大手ウェブサービス事業者が実際に出願し登録された特許公報を検索しながら、その読み方や一般論としての対処方法につき簡単なレクチャーをさせてもらったのですが、レクをしている側の私たち自身も、ウェブサービス関連特許の脅威が相当身近なものとして存在するのを確認し、改めてリアリティを感じました。

特許が気になっているが出願したことはない、その必要性・具体的なリスク・やるとして何をどの水準まで準備すればよいかが分からないという方は、まずは本書を片手に自社の同業他社・競合企業の出願を調査して、知らない間に背後に迫っているリスクを実感してみるところからのスタートをおすすめします。