森・濱田松本法律事務所の先生方による、企業法務パーソンに対象を絞った民法改正ポイント集が登場。


条文から分かる 民法改正の要点と企業法務への影響
末廣裕亮 (著), 篠原孝典 (著), 河上佳世子 (著), 畑江 智 (著), 青山大樹 (編集)
中央経済社
2015-05-28


民法改正への実務対応の第一歩は、個々の改正項目が、従来のルールを変更して新たなルールを導入する改正であるのか、従来の判例や一般的学説を明文化する改正に過ぎないのかを見分けることであると思う。
そこで、本書では、まず現行法・判例学説の状況を努めて客観的にまとめ、それとの対比で改正内容が上記のいずれかの種類に属するかを正確に位置づけ、その上で法改正が企業法務に及ぼす影響を分析するように試みた。

というコンセプトのもと、39の項目ごとに【 改正ポイント・短評 → 現行法の内容/改正法案の内容(条文新旧対照表付き) → 企業法務への影響 】という流れで、つとめて簡潔・平易にまとめられています。

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2006年に一部民法学者らによって私設の「民法(債権法)改正検討委員会」が設立され2009年に法務省として公式に検討を開始し2011年頃には改正されることがほぼ既定路線になって以降、実務家サイドからの反発もあってこの数年若干足踏みしていた民法(債権法)改正でしたが、今国会の決議をもっていよいよ終止符が打たれようとしています。改正にかかわった関係者みなさんはいろいろな思いを抱えながらも、とりあえずはほっと一息というところかと思いますが、私たちの仕事はこれから。曲りなりにも実務を通して学んできた民法の、最も企業法務で使われてきた条文たちが変えられてしまうのですから、メモリーを間違いのないように“上書き”していく必要があります。

各法律専門誌等でも改正法案のポイントや注意点をまとめたものが出回っていますが、それらと比較した本書の良い所は、個別解説において「中間試案」や「要綱案」での議論をほぼ無視してくれている点にあります。この数年、民法改正の動向を逐一フォローしていた方にとっては、改正検討の経緯やそれらの中間案と最終法案との違いについて言及されているほうがありがたいのでしょう。しかし、私のように日頃不勉強な者にとっては、そういった情報は“上書き”作業には不要というかむしろ邪魔だったりするわけでして。

インターネット業界にいると、どうしても定型約款に関する規定の新設ばかりに目を奪われてしまいがちでした。こうやって一冊の本で具体的な条文とともに変更点を一覧できるようになって、日々の契約にかかわる総則や典型契約に関する規定変更の方が、よっぽど実務影響が大きいんだよなと実感します。その改正項目のうち半分以上が従来の判例理論の明文化(本書P3)に過ぎないとはいえ、ちょっと気が重くなってきました。