民事法研究会から刊行されている専門誌『現代消費者法 NO.25』で、スマートフォンをめぐる諸問題が特集されていました。
2年縛り契約、SIMロック、広告における不当表示、未成年による決済問題と、既に他所でも語り尽くされた論点が並ぶ中で、森亮二先生が、アプリビジネスに携わる事業者なら誰もが知っているが甘受している「あの問題」について、新しい法的論点として触れていらっしゃいます。
優越的地位の濫用の問題は、アプリマーケットプレイスにおいてより顕著である。
実のところ、アプリマーケットプレイスの中には、ユーザーから返金要求があると、店舗であるアプリ提供者に通知することなく、簡単に返金に応じるところがある。しかもその際にアプリマーケットプレイスとしての取り分(以下、「コミッション」という)をアプリ提供者に返金することはしない。たとえば、あるユーザーが100円のアプリを買ったとして、アプリマーケットプレイスのコミッションは30円、アプリ提供者の収益は差し引き70円である場合、このユーザーから返金請求を受けるとアプリマーケットプレイスは100円全額をユーザーに返金する。しかし自分のコミッションの30円をアプリ提供者に返すことはしない。
アプリマーケットプレイスはモールよりもなお、アプリの流通経路として独占的な地位を占めている場合があり、優越的地位濫用の問題は、モールよりもはるかに深刻なものであると考えられる。
おそらく、この問題について法律家が真正面から論稿として取り上げたのは、これが初めてなのではないでしょうか。
アプリビジネスは、スマートフォン端末とそれを支えるOS、マーケットプレイス、決済システムによって成り立っています。それらを構築するプラットフォーマー(Apple、Google、Amazon)は、エンドユーザー(消費者)との接点に関し、端末・ソフトウェア・決済手段のすべての面から完全に支配しており、もう一方の取引参加者であるアプリ提供者は、そういったプラットフォーマーの支配に服しながら取引に参加するという、弱い立場にならざるを得ない構造となっています。このような中で、アプリサービスにおける消費者問題は、
1)広告等表示の責任(景品表示法・特定商取引法・消費者契約法)
2)前払式支払手段の販売・管理責任(資金決済法)
3)個人情報の取扱い責任(個人情報保護法)
といった部分にも、だんだんと広がりをみせています。
これまでの考え方によれば、単純に「インターネットモールとテナントの関係に準じるもの」として、消費者問題への対応責任はアプリ提供者がすべて負うのである、という風に片付けられてきたように思いますが、森先生の指摘にもあるとおり、プラットフォームの態様によっては、このような考え方が見直されるべき点も出てくるのではないかと考えます。










