そのほとんどが、現場担当者に「とりあえず挨拶代わりに結んでおけばいい」とすら思われ単なるペーパーワークになりがちな契約書である一方で、それをレビューをする法務が手を抜くと怖いことになることもある秘密保持契約について考える不定期シリーズ。

本日は、外資系企業を中心に契約書に規定されるケースが増えてきた「残存情報」条項について。


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残存情報(残留情報と表現される場合も多い)条項とは、以下のようなもの。

1 本契約の各当事者は、秘密情報にアクセスしたもしくは秘密情報を取り扱った受領者の従業員等(以下、「取扱従業員等」という。)に、当該取扱従業員等の意志にかかわらず記憶として残存する情報(秘密情報に含まれるアイデア、コンセプト、ノウハウ等を含む。以下、「残存情報」という。)が生じうることを確認する。
2 本契約の各当事者は、残存情報についてはいかなる目的のためにも自由に使用することができ、取扱従業員等の職務を制限もしくは限定する義務、または残存情報を使用した成果について開示者に対価を支払う義務を一切負わない。

初めてこれを見たときは、「そんなのOK出すわけないでしょw」と二つ返事で削除の回答をしたものですが、特に米国企業は、この条項を入れるのに必死になってきます。そしてそれは米国でビジネスをするのが当たり前になっている日本企業も例外ではなく、元キヤノンの伝説の弁理士丸島儀一さんも、その著書『知的財産戦略』でこう述べていらっしゃいます。

知的財産戦略
丸島 儀一
ダイヤモンド社
2011-10-07


(前段でクリーンルーム管理ポリシーでの契約交渉について述べた上で)しかし、ここまでしても完璧に秘密を守れるわけではない。情報を知った人が部屋から出てくるときには頭の中に情報が入っているはずであり、だれにもコントロールできない。そして、頭に入った情報は「目的以外の使用の禁止」にも関係してくる。
秘密情報が自分の知識となった技術者が他の仕事をする際に、この知識を使わないということはありえない。(中略)そこで、頭の中に入ってしまった情報については秘密情報と見なさないという例外条項を設けるように交渉しておくべきなのである。この例外条項が認められなければ、「きちんと管理したにもかかわらず、そこから情報が出てしまうことに関しては免責である」という方向に持っていく。とりわけアメリカなど外国の企業と秘密保持契約を結ぶ場合には、これは欠かせない。

ということで、削除交渉をするにもこちらから入れる交渉をするにも、平行線を辿ることが多い本条項。
実務の落としどころとしては、

ただし、残存情報はメモや音声等記録に残しもしくは再製してはならず、受領者は本契約により認められた場合を除き残存情報に含まれる秘密情報を第三者に漏えいもしくは開示せず、また本条によっても開示者の特許権、著作権およびノウハウを含む知的財産権について受領者にライセンスを付与するものとみなされない。

を追記してお互い矛を収める、といったところでしょうか。


細かいことをいえば、もう二つほどやっておくべきことがあるのですが、それはまたどこかで。