企業の立場から、自社に対する営業妨害や嫌がらせを目的としたインターネット上での誹謗中傷にどう対処するかのノウハウを、あますところなく伝えてくれる実用書。
ネット上の書き込みに対して企業がどのような法理論で対抗しうるかという本はあっても、では具体的にどのように手続きをすればよいかは言及がなかったり、反対に、プロバイダ責任法等を活用した削除請求等の具体的対処法がまとめられていても、視点があくまで個人の名誉・プライバシーを回復することに特化したものだったりと、その法理論と具体的対処の両方を企業目線だけに立って一気通貫で一冊にまとめてくれている本は無かったと思います。いや私が知らないだけで有るのかもしれませんが、この本まで具体的には書かれていないでしょう。
フローが整理され、
各種申立て書式の記載例・訴状サンプル等が掲載されているのはもちろんのこと、
・2ちゃんねるを相手に削除請求する際のシンガポールでの登記簿の取得方法
・削除請求前の証拠保全の方法(印刷/スクリーンショットにはURLがすべて入ってないと無意味)
・仮処分手続き当日の裁判所での持ち物リスト
・裁判所と発生するやりとり
・所要時間(午前11時までに書類提出・供託が完了すれば、当日午後4時に仮処分発令)
といった細かいところまで、弁護士である筆者の実務経験を披露するかたちでレポートされています。順序や理論はわかっていてもやってみなければ知りえない、まさしくノウハウがこの本にはすべて公開されています。
本書冒頭でもネットデマや誹謗中傷に苦しめられた有名文具会社や不動産会社の事件が紹介されていますが、これは他人ごとではありません。実際、私の所属組織も、インターネットメディア上に掲載されていた記事を読んだある識者および複数の自称識者が「これは◯◯社(私の所属組織)のことだろう」とSNSに一方的に推測に基づく批判を書き込まれ、その結果
「あの会社がそんなことをしているとは思わなかった」
「他のユーザーは知っているのだろうか?拡散キボンヌ」
「もうあの会社のサービスを使うのをやめよう」
と、ユーザーや一般消費者にネガティブな印象と拒絶感情を広められるなど、現実の被害を被った経験があります。
私も私なりに、ネット上で所属組織に関するネガティブな投稿がなされた際にアラートが立つような仕組みは構築してますので、すぐに当該書き込みに気付き、とあるルートを通じ情報の出元にアクセスし、初期段階で拡散をくい止めることができたものの(とはいえ拡散分含め書き込みは現存しており、被害はあると認識)、日本人的な「強きをくじき弱きを助ける」気質も手伝って、事実確認もなしににそういったデマ・噂・誹謗中傷が簡単に拡散していくさまを目の当たりにしました。
本当に事実無根のデマ・噂・誹謗中傷であれば、企業だからと泣き寝入りせず法的に厳しく対処することも検討しなければと、対抗手段について調査し情報を集めていたところに、この本が丁度よく発売されて助かったという次第です。












