日経の一面に「企業とルール 国際契約の落とし穴」という特集が上/下2回にわたって組まれていました。

国際契約の落とし穴(上) 映画・アニメ、交渉力 悩み(有料会員限定)
国際契約の落とし穴(下) 裁判・仲裁 救済に限界(有料会員限定)
  • 東宝東和が、映画の興行収入予算割れを補填する契約をタテに米国映画制作会社相手に訴訟をするも、資産のないダミー会社で回収できなかった話
  • コーエーテクモが、支払いを求めて中国の運営委託先に乗り込むと、会社ごと消えていた話
  • コンテンツ分野で海外勢から不利な条件を出されても精査せずにのんでしまい、苦労している事例いくつか
  • 丸紅が、融資返済請求事案についてインドネシア最高裁で勝訴したにもかかわらず、同じ内容で別の同国内裁判所に訴えられて負けた話
  • ゴルフ場開発会社投資家らが、合弁会社株をベトナム側に渡したが、代金が支払われず仲裁を申立て認められた後、現地裁判所で「仲裁手続違反」を理由に取り消し判決が出た話
  • 信越化学工業が、中国企業2社に光ファイバー素材の代金支払いを求め、日本仲裁で支払い命令を得たものの、中国の裁判所で拒絶された話

を紹介しながら、国際契約においては、相手を見極める営業センスだけでなく、紛争解決条項を含めた契約条件を慎重に詰める法務センスも磨かなければならないとの論調。上編の最後には、

経済産業省によると、映画やアニメなどコンテンツの国内市場規模は約12兆円だが、輸出比率は5%程度にすぎない。もうかる仕組みを契約にどのように盛り込むのか。契約力向上という課題を抱えるエンタメ産業は、日本企業全体の縮図にもみえる。

と、所属するエンタメ・コンテンツ業界が名指しされ「お前の“契約力”をどうにかしろ!」と、自分が怒られているような気分になりながら、国際契約力ってなんだろう?と沈思黙考。

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するとシンクロするように、今朝ほどネットで見つけたのがこちらの記事。

The High Court confirms that a contract can be made in two different jurisdictions
  • 2005年に、CIT(英)とUPD(米)の二つの企業が、NDA交渉で準拠法・紛争解決条項について交渉。
  • UPDはファイナルバージョンをCITにメールで送信した際に、「CITの要求を飲めない」として準拠法・紛争解決条項を削除して送付。CITはこれをプリントアウトしサインして返信し契約締結。
  • その後も取引は関連会社を交えて継続していたが、2010年にあらためてNDAを締結。この契約の準拠法・紛争解決条項は、テキサス州と定められた。
  • 二者間で知財紛争が発生し、2件の訴訟のうち1件についてCITが2005年のNDA違反を主張。
  • 英国裁判所が、2005年のNDAが成立したのは、CITがサインした英国であることを理由に、英国・テキサス両地を準拠法・紛争解決地とすることを認めた。

うーん、この2005年のやりとりは、どこかで見たことのあるような風景(苦笑)。日本から見れば「国際契約の玄人」であるはずの日・英企業も、契約の現場で発生している現実はさほど変わらないのかもしれないなあと思いました。


などと安心している場合ではなく、人のふり見て我がふり直せで考えますと、国際契約において私たち法務パーソンがお手伝いできることは、紛争が起きた時にどう頑張るか、ではなく
  1. 契約交渉の場面で多少面倒でも条件を曖昧にして終わらせないこと
  2. そもそも紛争が起きにくい契約書をつくること
  3. 紛争が起きても解決に向けた手続きがしっかりと規定された契約書としておくこと
なのでしょう。特に、3については、たまにひな形集で見かけては半分馬鹿にしていた「訴訟・仲裁申立の前に代表者同士がface to faceで協議する義務」なども入れるようにしたほうがいいのかな、などと思い始めております。