Googleの有償サービスの規約やFacebookの利用規約を見ると,契約当事者がなぜかアイルランド法人になっています。
これはどうやら節税のためらしいという話は耳にしていたのですが,西村高等法務研究所『アジア進出企業の法務』の中で,その種明かしを図解とともにしてくれていましたので,勉強がてらそのポイントをメモ。
- Double Irish with a Dutch Sandwitchと呼ばれる手法。アイルランドに二つ会社を設立し(図中IrXとIrY),その間にオランダ法人を挟み込むスキーム
- まず,アメリカ本社からIrXに対し,IPなどの無形資産を“実質的”譲渡(アメリカ国外のグローバル市場における使用権のみをIrXに譲渡するコストシェアリング契約を締結)することにより,海外事業に関するIPを無形資産としてIrXに切り出す
- グローバル市場からの収入は,海外事業の拠点として設置されたIrYが事業所得として得,その大部分をライセンス料という形でIrXに移転させるが,IrYからIrXのライセンス料にアイルランドの源泉税がかからないよう,アイルランドとの租税条約によって使用料などに係る源泉税が免除されているオランダ法人を経由して支払う
- さらに,IrXの事業の本拠は英領バミューダ(またはケイマン)に設置する→アイルランドの租税法上は管理支配地主義のため,IrXに集まる利益に対して課税されないこととなる
これにより,グローバル市場の収益に係る実効税率は2.4%まで圧縮されていると言われています。さらにアイルランド現行税制では,一定の条件を満たせば外国親会社への特許使用料支払いに源泉税が課税されなくなっているそうなので、IrY to ダイレクトにアメリカ本社への支払いも可能になりはじめているとのこと。
このようなことができる税制をなぜアイルランドが設けているのかといえば,ある種の企業誘致策であり少額でいいから税金を稼ぎたいという思惑があるから。その一方で「脱税」されるアメリカとしても黙っているわけにもいかず,同様のスキームを採用しているアップルに対し,10兆を超える利益の課税逃れを行っているとして,今年の5月に入ってから議会上院が追求をはじめています。
日本の税法では,英領バミューダに実質的に利益を集積させているとしてタックスヘイブン対策課税を適用することが可能であり,この節税スキームは通用しないようです。とはいえ,契約のグローバル化が進み海外での売上シェアが高まっている企業,かつ“事業の本拠地”“恒久的施設(PE)”が捉えにくいIPやクラウドを用いたビジネスに関わる法務の方は,このあたり研究されると面白いんじゃないでしょうか。
ちなみに個人的なアイデアですが,企業単位ごとに税金を納めるのではなく,プロジェクトや契約ごとに税金を収めるようにしてはどうかと。そうなると,契約書上の裁判管轄地がその案件の納税地ということになるのでしょう。案件で紛争がおきなければ税収が入り,揉めたら裁判所がその紛争解決の面倒をみてやらなければならないという徴税国目線でみたリスク・リターンの関係で考えると,とっても合理的なような気がして悪くないアイデアだと思うのですが,いかがなものでしょうか?本当にそうなったら,裁判管轄条項の契約交渉が国の利益を代表した戦いにもなるわけで,法務担当者としては新しいやりがいもでてくるというものです(笑)。











