一昨日、デューデリジェンスに関する本を紹介したところ、思いのほかリアクションがあり、「DDだけじゃなく、M&A全体を見渡せるいい本はどれ?」という質問をいただきました。

私からはこの本がおすすめ。

企業買収の実務プロセス企業買収の実務プロセス [単行本]
著者:木俣 貴光
出版:中央経済社
(2010-01)


M&Aの流れを時系列でまとめている概説書が何冊かある中でも、戦略・財務・法務・現場の目線がもっともバランスよく配分されているのが特徴。その特徴が顕著に現れているのが以下写真2ページ。誰が何をどこまで担当するか(すべきか)という役割分担を、社内部門/社外専門家にページを分けて分り易く表形式で整理してくれています。関わった経験が少ない人だと、はじめからおわりまで全部外部弁護士がリードしてくれるんでしょ?と勘違いしちゃったりしがちなところなので、これはわきまえておきたいところです。といいながらも現実は、この写真1枚目の社内の役割分担表にある「M&A担当部門」の役割=司会進行役は、そんな部門がある会社自体がかなり限られているという現実において、法務担当者が期待されたり背負わされたりするのが常。全部を一人で担う能力・経験がなくとも、社内の各部門や社外専門家に協力を仰いで案件をリードしていくために必要な常識・最低限の知識は抑えられていて、こういう本があると助けられます。

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ちなみに、この表の見出し(網掛け)部分が、そのままこの本の章立てに対応しています。網羅性の高さもおわかりいただけるかと。


概説書らしく、「フローチャート」「DDチェックリスト」の類も充実しています。それだけにとどまらず、法務面では、プレM&AフェーズにおけるNDAサンプル/実行フェーズにおける基本合意書・株式譲渡契約書サンプルもついています。著者は純粋法務ではなくFAサイドの方ということもあり、この辺りは期待できないものと思いきや、契約書サンプル中の5ページに渡る表明・保証条項などは、ヘタな法務パーソン向けのMA概説書についているものよりも緻密だったり。シンプルな株式譲渡案件であれば、このサンプルを参考にするだけでも十分かもしれません。

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強いてこの本の弱点を挙げるとすれば、買収スキームの選択について、スキームごとの法的なメリデメ整理・分析が足りないところでしょうか。その辺りに強い本は、また機会を改めて紹介させていただこうと思います。