家の積読の山の中に1年近く紛れてしまっていたのがこの本。なぜ今、その積読の山からこれを取り出したかといえば、著者のお一人である増田雅史先生ご本人にお会いする機会に恵まれたからなんですね。


デジタルコンテンツ法制デジタルコンテンツ法制 [単行本]
著者:増田雅史・生貝直人
出版:朝日新聞出版
(2012-03-07)


初めてお目にかかった席で先生自ら私にこの本をご恵贈くださろうと差し出され、瞬間黙って受け取ってお茶を濁そうかとも思ったのですが、根が正直な私は「実はすでに購入済みなのですが、まだ読めていないんです・・・。」とご本人を前に告白(恥)。その節は大変失礼しました。

さっそく拝読させていただいて、もったいない1年間だったと反省しきり。タイトルからは、イマドキのデジタルコンテンツネタをのべつ幕無しに並べておいしいところだけを法的に論評する時事ネタ本なのかと予想していたのですが、そのまったく逆で、俯瞰の“高度”はあくまで一定に保ちながら、デジタルコンテンツに関わる国内外の法律をすべて見渡して整理してしまおうという野心的な「鳥瞰図」作成へのチャレンジを、見事にやり遂げられている本でした。余白のゆったり感やすっきりとした図表から一見情報量が少ないように見えるのですが、読み進めていくと、どうしてこんなに少ない文字数で網羅的な概説書が書けるのかと不思議な気持ちになります。


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しかも、著作権の基礎→プロバイダ責任法→コンテンツ振興法→知財信託解禁→個人情報保護法→日本版フェアユースの流れ→通信と放送の融合→青少年保護→“場”の提供者の責任とカラオケ法理→NTD・ブロッキング・フィルタリング→ライフログとプライバシー・・・と時系列に沿って、さらにはWIPO新条約/米国DMCA/EU電子商取引指令/3ストライクルール/ACTA/TPP/SOPAといった国際的動向との関係性も解き明かしながら、澱みない物語のようにすらすらと読ませる筆致は見事の一言。

その鳥瞰ぶり・語り口の澱みなさがどのくらい完成度の高いものかは、目次の前に収録されているこの見開き4頁にわたる“デジタルコンテンツ法制年表”をご覧いただければ伝わるんじゃないでしょうか。これはデジタルコンテンツを業として扱う者にとっては宝の地図にも値する貴重な資料だと思います。


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ここ数年、blogやtwitterをはじめとする情報ツールが発展して、法律の時事ネタやキーワードがタイムリーに耳に飛び込んでくるようになりました。しかし、そうした断片的な情報のままでは何の役にも立たないなあという課題感ばかりを感じる今日このごろ。そんな中でこの本を読むと、情報収集の後の一番面倒な整理・意味付けの作業を超頭の良い方々に代わりにやってもらってしまったような、なんだか申し訳ない気持ちになります。学生時代、学期末試験前にあわてて友達から借りたノートを開いたら、仮に自分がその授業にすべて出席していたとしても到達しえなかったであろうわかりやすさでまとめられていて、思わず友達を神と崇めたくなった、そんな気分でしょうか。