ブログ『知財渉外にて』の@senri4000さんからGoogle+で教えていただいたこの本を読んでみたところ、素晴らしい本だったので、私からもご紹介させていただきます。

実は、この本のタイトルには「知的財産に携わる人のための〜」という枕詞がついているのですが、ブログでのご紹介にあたり著者・編集者に失礼を承知で、あえてその枕詞を外させていただきました。「知財担当者向け」という先入観なしで、ふつうの法務担当者のみなさまにもこの本を知って頂いたほうがいいのではないかと思ったからです。


知的財産に携わる人のための 標準民事手続法知的財産に携わる人のための 標準民事手続法 [単行本]
著者:高林龍
出版:発明推進協会
(2012-12-18)


法務パーソン向けの民事訴訟法の超入門書としては『小説で読む民事訴訟法』を、書式を含む手続実務寄りの概説書としては『法務担当者のための民事訴訟対応マニュアル』をお薦めしてまいりましたが、執行法・保全法までを含めた訴訟実務と法理論を体系的・網羅的につないでくれるちょうどよい基本書って、よく考えたらなかったんですよね。どうやら著者の高林先生自身もそこに問題意識を感じていらっしゃったようで、

知的財産訴訟の特殊性を理解する前に、日本の裁判制度や民事訴訟法、民事執行法、民事保全法といった民事手続法の全体の基本を理解しておく必要があるが、これらの全体像を分かり易く簡潔に教示している本はほとんどないというのが現状である。本書はその間隙を埋めるべく企図したものである。

と、「はじめに」で述べられています。

  • 訴訟物とは
  • 訴訟の3類型…給付の訴え/確認の訴え/形成の訴え
  • 民事訴訟の諸原則…公開審理主義/口頭審理主義/直接主義/処分権主義/弁論主義/自由心証主義
といった民訴の基礎用語・概念からきちんと説明してくださっているのに、伊藤眞先生の分厚い教科書を読んでいる時のような眠さや苦しさ(笑)を読者に全く感じさせず、しかも訴訟実務の流れまで十分イメージできる心地よい筆致。民事訴訟法だけでなく手続・保全法までカバーしつつ、それでいて200頁足らずのコンパクトな本にまとまっているところがすごいです。とはいえところどころに入る小さな文字で書かれた補足説明まで丹念に読んでいくと思いのほか文字数が多く、読破するのは見かけ以上にホネだったりしますが(こういう本に飛びつくのは私のような落伍者が多いからでしょうか、「はじめに」に「小さい文字だからといって注ではないので、読み飛ばさずに順番どおり読め」と見透かされたようなご注意書きがしっかり書いてあります…)。

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幅広い法分野がこのボリュームに収められているのは、訴訟実務ではあまり問題とならない学術的な部分をバッサリと端折っているからこそ。そして、著者としてはこの切り捨て加減が難しいのだと思いますが、そこは20年近く裁判所で判事・調査官を務められていた経験を持つ高林先生だからこそ成せる業なのでしょう。