このへんの記事をきっかけに、法務パーソンではない友人・知人数人から民法改正について尋ねられるという経験をしました。

時代遅れの約款に法務省がテコ入れ?(スラッシュドット・ジャパン)
アプリケーションなどの利用など、必ず読まされることの多い「約款」。記載されている内容は重要だが、ほとんどの人は読み飛ばして Yes を選択していることが多い。この約款をめぐるトラブルが頻繁に発生していることから、法務省は関連する民法を見直す動きを見せているらしい (MONEYzine の記事より) 。

法務パーソンからすれば、「何をいまさらそんな話をしているの?」「べつに約款をめぐるトラブルが頻繁に発生しているから民法改正するわけじゃないよね・・・」と苦笑されるかもしれません。しかし、実際はそういった民法改正を知ってる人のほうが少ないのであって、日常生活の中で“契約”を意識するのはウェブで「利用規約に同意」ボタンを押すときぐらいの一般市民感覚からすれば、そういった日常生活にも影響や変化を及ぼす法改正があるんだよって言われてはじめて、「あ、なんか自分たちにも関係ある話なんだ!」と思えるということなんですよね。関係者のみなさんは「3年前からきっちり議論してました」とおっしゃいますが、普段法律を意識せずに生活できる一般人には、その改正の方向性や内容はおろか、民法が改正されようとしているということすらまだぜーんぜん広まっていないんだということは、特に法改正を強力に推進されようとしている内田貴氏やその他関係者のみなさまにはぜひご理解いただきたいところです。

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「国民が民法を読んで分かるようになるのは無理」というびっくり発言by内田貴氏もあったよみうりホール3/16講演会にて撮影


ちなみに、その約款に関して、民法改正で何がどう変わろうとしているのかを正確にお知りになりたい方は、今まさに法務省が国民に広く意見を求めるためのパブリックコメントの手続中で、そこに資料としてアップロードされている「民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明(PDF)」のP377ー390に記載されています。簡単にまとめると、
1 規制対象となる「約款」とは何かがはじめて定義される
2 約款が利用者との契約条件として有効に組み入れられるための要件が明確化される
3 約款の中で利用者が予想もしないような条項(不意打ち条項)は無効とされる
4 合理的な周知・通知がなされれれば、事業者が途中で約款を変更しても有効とされる
5 約款の中に不当な条項があった場合は無効とされる
の5点。1と2はこれまで不明確だった点の明文化、3と5は利用者保護のための、4については事業者にとっての約款の法的安定性を担保するための改正、といったところ。


冒頭紹介の記事にあるように「約款をめぐるトラブルが頻繁に発生している」のは事実だと思います。でもそれは、法律が約款について規律していないことが原因なのではなくて、たんに約款が必要になるような一対多サービスを利用する人の絶対数が多いから、ということなのではと。そもそも、「約款とは何か」「有効な約款・無効な約款とは」を一生懸命法律に書き込んだところで、(契約時に目の前に掲示される約款・利用規約すら読まない)一般の方が果たしてその法律を読むのでしょうか?法律で規律されるとトラブルが減るんでしょうか?結局のところ、約款・利用規約を事業者が読みやすくわかりやすくする工夫をしたり、契約行為に対するリスク認識を利用者の努力で向上させるなどして、お互いが真の合意形成をする習慣を身につけなければ、何の解決にもならないのではないのではないかと、私は考えます。
 
ということで、こちらをもって私からのパブリックコメントに代えさせていただきたいと思います。