本書は、ソフトウェアを題材としつつも、あらゆるビジネスにおいて必要な「契約」一般についての解説本になることも意識して執筆した。従って、ソフトウェアに限らず、有形・無形のあらゆる「財」の開発・取引に関する契約に応用可能な本を目指した。
正直、はしがきにあるこの水戸先生のご挨拶を見て、「青林書院の『法律相談』シリーズってQ&A形式で各論を学ぶ本ですし、この体裁でそんな本を目指すのまちがってますしwww」とツッコミを入れながら軽い気持ちで読み始めたんですが、読み終わった後にTMI総合法律事務所にお詫びに伺おうかと思うほど品質の高い本でした。その宣言どおり、ソフトウェア開発に限らず契約分野においてこのIT時代に必要とされる民・商・知財法の基礎を美しく整理したうえで、アジャイル・クラウド・OSS等といった要素を含む現代的ソフトウェア開発契約を締結するための応用までを丁寧に&完璧に整理しまとめています。今後数年は私の座右の書となること間違いなしの本です。
ソフトウェア取引の法律相談 (新・青林法律相談)販売元:青林書院
(2013-01)
販売元:Amazon.co.jp
たとえば、ソフトウェア開発契約における瑕疵担保責任・契約不履行・損害賠償責任といった民法の教科書的な基礎部分について、実務書を標榜する本に限って「まあこのへんはみなさんご存知だと思いますし、厳密な法律論は必要に応じて概説書とか注釈民法読んでもらえればいいと思いますけど」でごまかされたり済まされてしまうものがよくありますが、この本では、
- ソフトウェアの瑕疵とはそもそもどのように定義されるものなのか
- バグ・システムエラー・セキュリティホール・ウイルス等は瑕疵にあたるのか
- 履行遅滞/不完全履行/履行不能に分けて、具体的には何がどこまで相手方に請求できるのか
- 損害賠償の額の算定、そしてその立証において何が求められるのか
- 損害賠償の上限設定や違約金(損害賠償の予定)の規定には法的な限界はないのか
さらに、応用部分として、
- アジャイル開発契約を個別の準委任契約に分解された契約の総体と捉えて契約する場合、具体的にはどのような基準・部分で契約を分割し結合すべきか
- モジュール/ルーチンの権利留保条項を設けるのはいいとして、実際のところ留保の主張・防御に無理・限界はないのか
- OSS(オープンソースソフトウェア)を取り込んで新しいソフトウェアを開発する際に、どのような点に注意して権利処理すべきか
なお、当ブログで過去ご紹介したソフトウェア契約関連の書籍の中での想定読者レベル感としては、
入門 『ITエンジニアのための契約入門』
初級 『ソフトウェア取引の契約ハンドブック』
中級 『ユーザを成功に導くシステム開発契約』
よりもちょっと上の、ある程度の法律知識とこの分野の経験・問題意識を持っていることを前提とした中〜上級者向けの本になっている点は、ご購入の際にご留意頂いたほうがいいかもしれません。
青林書院のこのシリーズはいくつか購入しているものの、値段が高いわりにハズレも少なくなく、ぶっちゃけあまりいい印象を持っていませんでした(本ブログでおすすめしたことがあるのは『知財ライセンス契約の法律相談』ぐらい)。Google+で私が運営しているコミュニティで伊藤雅浩先生からこの本の存在をご紹介いただかなければ、ほぼ間違いなく購入しなかったと思います。どうもありがとうございました。










