さて、先日のエントリの続き。
日本語の契約を英文契約に翻訳する際など、オリジナルな英作文をする際にはなくてはならない“用語集(glossaries)”。この分野では、先日のBLJのブックガイド2013で紹介されていた原秋彦先生の『使いこなしたいビジネス法務英文グロッサリー』や、弊ブログはじめ数々の法務ブログで推薦されている『英文契約書ドラフティングハンドブック』などがあります。これらの本はきっとこれからも定番であり続けると思いますしコンパクト・シンプルで使いやすい本なのですが、反面バリエーションがないという欠点がありました。また辞典としては定番な『ローダス21 最新法律英語辞典』も、英和がメイン。日本語から検索した際に、対応する単語・熟語・連語が一覧できる辞典があったら…、そんなニーズに答えてくれる用語集がこれ。
英文契約書のための和英用語用例辞典著者:野副靖人
販売元:中央経済社
(2012-06-07)
販売元:Amazon.co.jp
私自身、企業の中で英文契約書を訳したり作成したりしてきましたが、その際に苦労したのは日本語の契約条文を英文に翻訳する際に使いやすい適切な参考書や辞書が乏しく、日本語の契約条文をどのように英語で表現するかに関して大変苦労しました。
本書は、日本語の契約条文を英文に翻訳する際に役に立つようにと考えて作成したものです。
このコメント通り、東京銀行(現三菱東京UFJ)の法務担当者であった著者自身が冒頭に書いたような苦労を解決するツールとして書きためていた虎の巻をそのまま出版しちゃいました、という感じの本。しかも、単なる「用語集」ではなく「用語用例辞典」とあるように、一つの日本語見出しに対して、
・用語=単語・熟語・連語
・用例=契約文例
がセットになっているのが特徴。実際に業務で使ってみると、用語からたどっているにもかかわらず、自分が作ろうとしていた言い回しがまさに用例として載っていて、そのフィット率の高さに驚かされます。少し英語の言い回しが固いなという印象もあるのですが、それでも、何もないところから自分で作文するよりは圧倒的に早くなって助かります。
しかし、そもそも論として、日本語の契約書をこういった用語集で無理やり翻訳するという態度が適切なのか?という指摘もあるでしょう。『ビジネス法務 2013年 01月号』P45では、佐藤孝幸弁護士がこんなことを仰っていました。
いみじくも「英作文は『英借文』」といった英語の大家がいたそうであるが、私は英語を母国語としない日本人が英文を作ることはほとんど不可能と考えている。まして、解釈の相違を生むような文章は許されない契約書のような法律文書であればなおさらである。
繰り返すが、ごく単純な事務連絡のための電子メールといった場合を除いて、自分の頭だけで英作文をしようとしてはいけない。そのようなことをすれば、いずれ大きな事故を引き起こすであろう。母国語を英語とするプロの書いた文章を借用させて頂くことが肝要である。
たしかに佐藤先生がおっしゃるように、英文契約には英文契約流の、コモンローを踏まえた重厚な言い回しがあって、それをおさえずに見よう見まねで英作文するのは事故を招きかねないのも事実です。しかし、一方で英語がネイティブではない我々が日々世界を相手に商売をしなければならなくなっているというのも事実で、危険だからといってすべての契約書のネイティブチェックを受ける時間や金が常にあるわけではありません。原則としては英借文をこころがけ、プロによるチェックを前提としつつも、このような本を“脇差”としていざとなれば刺し違えリスク覚悟で立ち向かい、傷つきながら実践力を磨くことも必要となってきているように思います。










