利用規約ナイトVol.2を明日に控えて、利用規約に関するあるあるネタを1つ。
ウェブサービスの利用規約を作るときって、類似のサービスの利用規約を参考にするか、インスパイヤ(のまネコ懐)されるか、おもいっきりパクるかしてますよね?ね?

もし契約書や利用規約のような法律文書に著作権がみとめられるとすると、パクったら著作権侵害になるわけですが、この契約書・利用規約のパクリは許されるのか?という議論については、地裁判決にもかかわらず有名な土地売買契約書事件(東京地裁昭和62年5月14日判決)の以下判決文がよく引き合いにだされて、「パクったって大丈夫だよ!」と一般的に説明されていたりします。
著作権の対象となる著作物は思想又は感情を表現したものでなければならないが、本件文書は原告らの希望する契約条件ないし意思を被告会社に伝達するための文書にすぎないから、著作物には該当しない。
本件文書の記載内容は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であるとはいえないから、著作物ということはできない。
しかし、昨今流行りつつある、サービスの特徴をスクリーンショット等も用いながら豊かな表現で書いているような手の込んだ利用規約を安易にパクるとちょっと危ないかも、と思わせる裁判例もあるのです。それが駒沢公園行政書士事務所日記さんで昨年ご紹介されていた、火災保険改定説明書面事件(東京地裁平成23年12月22日判決)。
以上で述べたような本件説明書面の構成やデザインは,本件改定の内容を説明するための表現方法として様々な可能性があり得る中で(甲3ないし5,弁論の全趣旨),本件説明書面の作成者が,本件改定の内容を分かりやすく説明するという観点から特定の選択を行い,その選択に従った表現を行ったものといえるのであり,これらを総合した成果物である本件説明書面の中に作成者の個性が表現されているものと認めることができる。
以上によれば,本件説明書面は,作成者の思想又は感情を創作的に表現したものであって,著作権法2条1項1号の著作物に当たるものといえる。
本件説明書面の著作権の使用料相当額について検討するに,本件説明書面は,原告の第一営業部長の地位にあったY1が,相応の労力と時間をかけて作成したものであり,その内容には,本件改定を分かりやすく説明するための工夫が見られること,また,被告による複製行為は,本件説明書面をほぼそのまま複写するというものであり,その複製及び頒布の部数も345件の多数にのぼっていること,被告は,本件説明書面の複製物を,自己の営業目的に利用しており,これによって,説明書面作成の手間を省くなど,相応の営業上の利益を得ているものといえることなど,本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると,上記使用料相当額は,15万円と認めるのが相当である。
かいつまんで状況を説明すると、原告である損保代理店が作ったお客さま向け保険契約説明書面を、代理店契約が解除となった後にAIU保険がコピーし、しかもその原告の代理店の元お客さまを含む300件超もの保険勧誘に使ったというもの。代理店が顧客開拓のために苦労して作ったものなのだから、それをパクって利益を得たなら15万円の使用料を払え、という判決が下されたというわけです。説明書面の実物が見てみたい方は、裁判所サイト上のPDFでご覧いただけます。
契約書や利用規約そのものの著作物性について争ったわけではないですが、この判決文の理屈でいうと、GoogleやFacebookが率先してすすめているような、手の込んだデザイン・レイアウト・分かりやすさを追求した表現を備えた利用規約の中には、著作物性が認められるものもでてくるでしょう。ウェブサービスは似たものも多い中、利用規約をゼロから作るとなると弁護士に相談したりと時間もコストがかかるからと、その似ているサービスの利用規約をパクってすませているケースも結構ありそうです(というか、よく見かけます…)。しかもウェブサービスの場合、300件などという数ではすまないでしょうから、そこそこの使用料を払わされることになるかもしれません。


著作権に関する文献の中にも、まさにこのような契約書の著作物性について丁寧に言及している本があります。以前もご紹介したのですが、北村行夫・雪丸真吾編『Q&A引用・転載の実務と著作権法』26-27頁(中央経済社,2005)がそれ。
Q&A 引用・転載の実務と著作権法販売元:中央経済社
(2010-11)
販売元:Amazon.co.jp
Q 契約書は、著作物ですか?
A 契約書によります。
契約書は、合致した両当事者の意思表示を表現したものですから、「思想の表現」です。ただ、その表現が創作的かどうかという点は、契約書によりけりと言うほかありません。
もし契約書が、民法に定める典型契約で、しかも当該契約の要件部分や債務不履行に関する民法の規定を反映したものに過ぎないものであれば、その表現には創作性はないので著作物とは言えません。
しかし、特殊な法律関係を形成する条項で、そのことを明確にするために表現上工夫を要した場合には創作性ある著作物となる余地があります。
そういえば最近、「自社サービスに対する不満を流布する行為」を禁止行為の一つとして列挙した利用規約が話題になっていますが、これなんかは、他社の利用規約には見られない斬新さをもった特殊な法律関係を形成する利用規約として、著作物性を備えていると言えるかもしれませんね(棒読み)。









