ソーシャル業界は、個人の本能的欲求を直接的に掻き立てて課金・広告収入を得ているだけに、コンプライアンスの難易度も高い業界だなあというのは、私自身が片足を突っ込んでみて日々感じているところです。

やまもといちろう×楠正憲「ネット業界“ソーシャルの次”を本気で考える」(エンジニアtype)
やまもと テクノロジーをマネジメントする人も、テクノロジーを使って事業をドライブしている人も考えなきゃいけないパラメータが増えていきますよね。でも、現状はこういう着眼点さえ持っていない人がほとんどだから、あらかじめ問題を起こさないようにしていくこと自体が難しくなるってことでもあるわけです。

 ネットにしてもソーシャルにしても、まずは何がどうグレーな状況なのかってことに僕ら作り手自身が自覚的でなければなりませんよね。
やまもと 元も子もない抽象論になっちゃいますが、結局は利便性とリスクの間で許容できるバランスを見つけながらやっていくしかないってことですかね。

 これは例えが悪いかもしれませんが、交通事故で年間何千人も亡くなっても自動車は禁止されていませんが、こんにゃくゼリーで赤ちゃんが亡くなることは1人だって受け入れられない。世の中ってそういうもので。だから、これからのソーシャルWebの最適解を見つけるためには、やはりユーザーや規制当局を含む「社会」とキッチリ向き合うことを前提にどうリスクを取るか、慎重に判断するしかないでしょうね。

どんなに利便性が高かったり革新的な商品・サービスを提供して世の中のお役に立っていたとしても、ここで挙げられている「こんにゃくゼリー」の例のような、社会が食べることを許してくれない“禁断の果実”もあります。私たちが知りたいのは、この禁断の果実と食べてもいい果実の見分け方です。ただ法律を勉強してそれに基いて慎重に判断していればいいかというと、そうではないからです。

Adam-mange


koni akiさんのGoogle+の投稿
法律で禁止されてるからやっちゃダメなんじゃなくて、やっちゃダメだから法律で禁止されている。
この大前提を理解せずに「法律(あるいは校則)で禁止されてるからやっちゃダメ」と育てられ、それに疑問を持たないのであれば、不文律に至っては「法律で禁止されてないからしてもいい」という理屈になるので、そりゃ他人との大きなズレは生じるだろうなぁと。

おっしゃるとおり、常に先に法律で「やってはいけないこと」を明記するのは限界があるわけで、コンプライアンスが単なる法令遵守ではない、と言われる所以は、まさにこの点にあります。だからこそ(コンプガチャがそうであったように)後からこじつけのような理屈がつけられて違法とされたわけです。しかし、「感覚」「センス」に頼って禁断の果実を見分けようとしていると、その業界に長く染まった人ほど嗅覚は鈍り、見分けられなくなり、「法律で禁止されていないからしてもいい」となりがちです。

「感覚」「センス」に頼らずに、禁断の果実の見分け方を言葉で表現した原理原則のようなものはないだろうかと思っていたところ、クーリエ・ジャポン1月号P103〜にこんな記事がありました。


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▼あなたが「地球温暖化」に無関心な理由を教えよう(COURRIER JAPON)
人間の脳は、主に次の4つの特性を持つ危険に反応します。
「意図的な」「非道徳的な」「切迫した」「瞬時に起きる」危険です。この4つは、人間の脳に組み込まれている“警報”を鳴らし、行動を促します。裏を返すと、こうした特性を持たない危険には、行動を促したりはしない。残念ながら、「温暖化」は、4つの特性の一つも持ち合わせていないのです。
たとえ些細なものであっても、何かしらの意図がある行動に、私たちは否でも反応してしまいます。ですが自然の災いはそうではありません。もしワールドトレードセンターに飛行機が突っ込んだ要因が落雷によるものだったとしたら、事故の日付を覚えている人などいないでしょう。
わたしたちの道徳観を刺激するものとは何か。それは、太古の昔から人間にとって重要だったこと、つまり「食べ物」と「セックス」に関するものです。「大気」や「化学」などではありません。
将来、痛い目に遭わないよう、人にいまから準備させるためには、おだてたり、しつこく言い続けたりしなければなりません。反対に、ホッキョクグマが近日中に絶滅するとわかっていれば、皆さんは今すぐにでもそれらを見に行くでしょう。
髪が薄くなっていく現象のように徐々に起きていく変化ならば、私たちはすんなり受け入れることができます。反対に、ある朝起きたら突然、丸坊主になっていた、なんてことは到底受け入れることはできない。そんなことがあれば、私は頭髪クリニックに走っていって、植毛してもらうでしょう。

こんにゃくゼリーにせよコンプガチャにせよ最近また騒がしくなりはじめたプライバシー問題にせよ、企業が叩かれる要因はこの「人間の脳が反応する4つの特性」に触れた時。何か新しいこと・刺激的なことをやろうとすれば人間の防衛本能が反応するという意味では、ソーシャル業界だけの問題でもなさそうです。

禁断の果実を見極める基準として法律が役立たなくなってきたのなら、人間の防衛本能の限界のような、法律にこだわらない基準を考えてみるというのも、企業法務パーソンの醍醐味でありやらなければならないことかなと思っています。