ウェブサービス業は、製造業等と違いグローバルに打って出るのが容易なのと引き換えに、サービスを立ち上げたばかりのベンチャー期からグローバルな顧客対応を求められる宿命にあります。そういった企業の法務部門には、外国の個人顧客宛に英文で書くお詫び状に関する相談がくるようになるはずです。

それで思い出したんですが、1年半前ぐらいに、(日本語での)お詫び状の書き方に関する私なりのノウハウをブログでご紹介したことがありました。

法務マンが教える安全なお詫び状の書き方
お詫び状は、

1)お詫びの言葉
2)経緯
3)原因(再発防止が可能なら再発防止策)
4)改めてお詫びと許容の依頼(補償する場合はその内容)

この様な構成で書くのが通常ですが、3において発生した事象の原因をどのように分析するかが最大のポイント
そもそも防ぎようがなかったことについてだけはお詫びしない
「できるだけお詫びをしないようにする」のではなく、発生した事故が防げたものなのか/防ぎようは無かったのかという<原因>をきちんと意識・分析した上で、<お詫びと許容の依頼>に書く内容を決める

相手が外国人であっても、基本的にはこのフレームワークの通りで問題ないのですが、英文、とくにアメリカ的サービスであるApple、AmazonそしてZappos等のカスタマー対応メールを見ていて感じる特徴は、日本のようなお詫びにはじまりお詫びに終わる“しおらしい”・“へりくだった”対応では決してないという点です。どちらかというと「頼り甲斐のある雰囲気」「肯定的なトーン」の演出に骨を砕いていて、それが上手な会社が顧客に受け入れられていると思います。以前このブログでご紹介したZapposの個人情報漏洩事故の際のカスタマーへの対応メールはこの典型と言ってよい実例ですが、実際あの後問題が拗れたとかZapposの評判が落ちたという話は聞きません。これがいわゆる文化の違いというものなのでしょう。


ここで、最近書店で見つけて重宝しているこの本のP90〜92から、カスタマーへの返答例文を一つ引用させていただいて、どのような言い回しを使えば「頼り甲斐のある雰囲気」「肯定的なトーン」を演出できるのかを見てみたいと思います。シチュエーションは、ウェブサイトで注文した商品が届かないというクレームに対するお詫びメールです。


カスタマーサービスの英語――お客様の苦情・要求にはこう対応したい!カスタマーサービスの英語――お客様の苦情・要求にはこう対応したい!
著者:ロッシェル・カップ
販売元:研究社
(2012-08-25)
販売元:Amazon.co.jp


Dear Ms, Amani,

Thank you for getting in touch(1) and we're very sorry that you have not yet received your order.

I have done some research(2), and would like to let you know that the order left our facility via DHL on January 9th. Normally, DHL shipments would arrive at your location within two weeks, but since it has been longer than that I'm glad that you let us know about it(3).

I am currently following up(4) with DHL in order to get more information from them on the whereabouts of your shipment. They told me that it may take up to three days to do a thorough trace and search. I will get back to you as soon as I have some concrete information from them.

Thank you for your patience, and I'm very sorry for this inconvinience. We do appreciate your business, and are looking forward to getting your shipment to you(5).

Sincerely,

Naoki Saito
Shipping Clerk
 ※下線は私が勝手に付けてます。

いかがでしょうか。日本語同様【1)お詫びの言葉 → 2)経緯 →3)原因 → 4)改めてお詫びと許容の依頼 】のお詫びフレームワークはしっかりと守られていますね。
その一方で決定的に異なるのは、日本語では「申し訳ございません。DHLに調査を依頼し、所在判明次第報告の上再手配をいたします。ご不便をおかけし恐れ入りますが、お時間を頂戴したく存じます。」のように、平謝りモードになるところを、
  1. (2)(4)の "have done" "I am currently -ing" のような表現で、責任をもって能動的に調査・対応を遂行していることを強調し、
  2. (1)(3)(5)のように、"very sorry" とお詫びしつつも "Thank you" "be glad"を強く打ち出した言い回しを用い、クレームを下さったことにさわやかな“感謝”で返してしまう
という点、トーンの違いがはっきりと見て取れるのではないでしょうか。

なお、今回引用させたいただいたこの本では、
Chapter 1 お詫びが必要でない場合
Chapter 2 すぐに返答できない場合
Chapter 3 こちらに非があるが、すぐに解決できない場合
Chapter 4 お詫びして、対策を提示する場合
Chapter 5 顧客の要望に応えられない場合
Chapter 6 再度要求を断る場合
というケースに分けて、お詫びフレームワークに忠実に、
・電話対応を想定したSpeaking Example
・メール・レター対応を想定したWriting Example
にそれぞれについて2例ずつ応答例文が載っていて、大変参考になります。

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こう書けば必ず許してくれるというワケではもちろんありませんが、日本語のお詫び文を直訳したものとは全く異なるということ、顧客が返事に期待するトーンに文化的な違いがあるということは、覚えておいて損はないかと思います。