リスクモンスターさんといえば、そのおどろおどろしい社名に似つかわしくないほのぼのした怪獣のキャラクターでおなじみ(?)の、企業の信用情報調査やコンサルティングを手がける会社。商社の中でも審査部門のアグレッシブさで有名な旧日商岩井の審査部門ご出身者が設立されたんですよね。

そのリスクモンスターさん編著の与信管理本と聞き、「きっとそういう自社宣伝バイアスが掛かった本なのだろう」、そう思ってしまった者の一人として、平にお詫び申し上げます。
与信管理論販売元:商事法務
(2012-04)
販売元:Amazon.co.jp
商事法務さんからの出版、「与信管理論」という大上段なタイトル、クリーム色の高級感あふれる装丁、P740を超える厚さ、そして¥7,600(税別)というお高い値段に、只者ならぬ威圧感を感じてはおりましたが、ページを繰ってみると、超正当派どころか、これまで私が色々買い集めてきた与信管理実務書の数々に書かれた要素をすべて包含した上で、かつ他の与信管理本では触れられてこなかった実務的なノウハウが詳細に書き込まれた、“ザ・ベスト・オブ・与信管理本”でした。
これだけの厚みならば、他の本の要素を全て包含していると言っても「当たり前じゃん」と思われてしまうと思いますので、他の与信管理本との違いに注目をしてご紹介してみると、まずわかりやすいところでは、与信限度額申請書のサンプルがとっても具体的に載っていたり(P112)

与信管理の体制構築について述べられた第2章では、会社が抱える与信リスクの変化をどう経営にレポートしたら伝わるかについて、具体的なアイデアが図入りで紹介されていたり(P130)

定量・定性・商流分析の方法論について述べられた第4章では、決算書の読み方は当然のこと、資金繰り表やはたまた法人税申告書の詳細な読み方・チェックポイントについてまで述べられていたり(P314)、

与信管理の社内研修や後輩教育でいつも説明するのが難しいなあと思っていた「商流を把握する」とはどういうことかを、絵入りで分かりやすく説明していたり(P358)、

もちろん、与信管理体制作りの話だけでなく、契約書による保全や債権回収の法務実務についてもしっかりとサンプル条文付きで触れられているので、ご安心ください。
私も企業審査の仕事を前々職・前職と続けてきて、自分なりのノウハウを書き留めながらつくった「自分マニュアル」があります。会社によっては、そういったものを先輩から引き継ぎ、どんどん書き足し業務マニュアルとして共有文書化しているところもあるでしょう。この本は、リスクモンスターの前身とも言える日商岩井の審査部門の人々が作ったそういう「門外不出の業務マニュアル」が、間違って世に出てしまったのではないか?と思うようなクオリティでした。
そして何より、冒頭で触れたように、これだけ充実のノウハウを「流出」させながら、この本の中でリスクモンスター社の宣伝に走ってないところがすごいです。ごく数枚だけリスモンさんのサービスのスクリーンショットが貼り付けられているぐらいで、信用調査機関の紹介の使い方を解説するページでは、東京商工リサーチさんや帝国データバンクさんを紹介しているのに、肝心の自社を紹介しないという奥ゆかしさなのですから(笑)。
ところで、この本を思い出したように紹介したのは、ちょうど昨日、ツイッターで意見をよく参考にさせていただいている高橋先生が、こんなことを仰っていたから。
-@kamatatylaw
契約書チェックというのは単に文面だけ見て誤字を直したりするのとはずいぶんと違う。まず,業界の取引慣行,力関係,その契約をすることによって当事者がその後どのようなビジネスを念頭においているのかを徹底的に調べなければならない。
2012/06/10 08:41:40
-@kamatatylaw
判例秘書で裁判例を検索してどんな紛争があるのかを念のために確認することもある。ネットで業界事情を調査することもある。取引相手は日経テレコンとかで調べることも普通。毎朝新聞を読んでいない人は業界事情に疎いことがあるのでよくない。
2012/06/10 08:42:24
私も、契約書審査に無駄に時間をかけるよりも、取引先企業審査の体制をしっかりとつくることのほうがよっぽど重要で生産性が高く、また楽しい仕事なのではないかと常々思っています。もっと言えば、取引企業審査の体制を作らずに契約書チェックの体制だけ整えている会社は本末転倒ではないかと思うことも。契約書に支払サイトひとつ定めるのだって、取引企業審査の目線がないと「このタイプの取引でこの相手方、なのにこの長さは何か理由が?」っていう質問を現場にできないでしょうし、質問ができなければ妥当性も判断できません。ただサイトを短くするだけの修正だったら誰でもできますしね。
その一方で、そういった取引先企業審査の体制をつくるために何をどういう順番で進めていけばすればいいか、審査とは・与信管理とは何かを説明したり文字にまとめたりするのは、暗黙知の領域が多く難しいことだとも思いこんでいました。しかしこの本は、それに必要な知識・ポイントを思いつく限り隅から隅まで見事に言語化しています。共著の松田綜合法律事務所の先生方含め、プロ中のプロたちが集まると、こういう良い書物ができるんですね。










