ついに出てしまいました。1冊まるごと準拠法/裁判管轄/仲裁条項の理解・適法性・ドラフティングだけにテーマを絞った超専門書が。


国際契約実務のための予防法学―準拠法・裁判管轄・仲裁条項国際契約実務のための予防法学―準拠法・裁判管轄・仲裁条項
著者:道垣内 正人
販売元:商事法務
(2012-05)
販売元:Amazon.co.jp



タイトルからは学術的な本を想像していたのですが、どのような文言であれば法的に有効な条項となるかといった具体的ドラフティングの技術や、実際に有効性が問題になった事例・裁判例にまで言及されており、それでいてその背景として必須となる国際私法の理論から紐解いて整理がされているのがこの本のすごいところ。冒頭の「本書の目的」を読むと、法律実務書としてこれ以上に正しく美しい整理・解説方法はないなと溜飲が下がります。

「枝葉」の剪定をするからといって、技術論に終始するだけでは足りない。「木」全体のことを知らなければ、適切な剪定はできない。また、正しく「木」を扱うためには、「森」の体系を知らなければならない。「森」を知り、「木」を知ってはじめて、「枝葉」を正しく理解し、それを適切に扱うことができるだけではなく、「枝葉」についての新しい問題に直面した際にも誤りのない判断ができるはずである。
上記の目的の達成のため、本書は以下のような構成となっている。
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.1 「森」 国際私法基礎国際民事訴訟法基礎国際商事仲裁法基礎
.2 「木」 契約準拠法決定ルール国際裁判管轄ルール仲裁合意ルール
.3 「枝葉」準拠法条項のドラフティング裁判管轄条項のドラフティング仲裁条項のドラフティング

こんな風に、表で本の構成・体系がほぼ表現できてしまう本というのも、なかなかお目にかかれるものではありません。当然、読み手としても探しやすい・理解しやすいわけで。

さらにダメ押し。巻末の4章には、実務ですぐ活用できるチェックリストまでもがついています。

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道垣内先生は「ベテランであると自認されている方々は、まず4をご覧になり…」と書かれていますが、このチェックリストには各章の番号へのリンクまでも親切に脚注に振ってあるので、むしろこの本に詰め込まれた溢れんばかりの知識をすぐには吸収しきれない初級〜中級法務パーソン(自分含め)は、今日明日レビューする国際契約書のボイラープレートをこれに照らし、必要な章から読み込んでいくという使い方をしてはいかがかと。

道垣内先生が「森」と表現される国際私法の世界は、入り口からして奥が深すぎて、できるだけ立ち入らないようにしていたところが正直あります。数々の法律基本書・実務書を取り上げてきたこのブログでも、国際私法の基本書を紹介していないのはその現れ。「準拠法はMOUの段階から日本法にすべく仕込みをし、紛争解決手段もNY条約締約国だったら裁判ではなく仲裁合意にしておこう」ですませようとしていたわけですが、その一本槍では交渉がまとまらなかったときにどうするのかのソリューションはなく、相手方の案を飲むということだけしか無かったように思います。

英語力もさることながら、相手方の提示してきた条項案に対し、その有効性にまでツッコミが入れられて時に形成を逆転できるくらいの国際私法の確かな知識と実務能力とがなければ、本当に頼りになる国際契約法務パーソンにはなれない。そのことをイヤというほど思い知らされますね。