10年後に食える仕事、食えない仕事著者:渡邉 正裕
販売元:東洋経済新報社
(2012-02-03)
販売元:Amazon.co.jp
「グローバル時代にサラリーマンがどうサバイバルするか」をテーマにした本がたくさん出版されていますが、そこで共通して述べられているのは、
・日本語以外の言語(英語・中国語)を身に付ける
・できるだけクリエイティブな知識労働に携わる
という2点です。
対してこの本が特徴的なのは、あえて逆説的な立場を取り、そういった本で理想像とされる<グローバル×知識集約的>な職業を「無国籍ジャングル」と名付け、“(実力で戦い抜いて勝てればメリットは大きいものの)世界の70億人が競争相手になることを考えると決して賢い選択ではない職業”と位置付けている点。ではどうすべきかというと、日本人メリットが生かせる右上の象限「グローカル」もしくは右下「ジャパン・プレミアム」な職業を選ぶべきだと。
中でも、企業法務パーソンのようなバックオフィスの職業は、意外にも資格制度があるような専門的な仕事ほど、選び方を間違えると危険な「無国籍ジャングル」や、陥ったら最後抜け出せなくなる「重力の世界」にはまりやすい職業の代表例として取り上げられています。
「財務や経理の仕事はルーティンで定型的な作業が多い。ざっくり言うと全体の7割は外注できる感覚があり、それらは最低賃金になっていくでしょう。逆に残り3割は判断が必要なコア業務なので、国籍に関係なく業務遂行能力が求められます。(略)」
経理・財務の仕事は顧客(乗客)に対して行われるものではなく社内向け業務であることから、日本語によるコミュニケーション力が最優先事項にはならず、日本人メリットが働きにくいのである。
財務・経理系のキャリアで生き残るには、無国籍ジャングルで戦い抜けるぐらいの研鑽を積むか、対社内向けの業務ではない分野、例えば財務分野のコンサルティングに進出して顧客をつかみ、「グローカル」化する方向が考えられる。
ここでは代表例として財務や経理の仕事が挙げられていますが、法務も同じように判断業務に携われる一握りの法務部門責任者だけが高給を取り、メンバークラスの法務パーソンの給与はグローバル化とアウトソーシング化が進むことでどんどん低賃金化して二極化が進んでいくものと私も思います。
「管理の業務はどこまでアウトソースできるか」「バックオフィスは誰を顧客と捉えるべきか」という話は、管理部門仲間の酒飲み話でしばしば交わされる鉄板ネタなわけですが、著者の分類法によれば、アウトソースできるような業務(ex.定型的な契約書レビューのような業務、現地弁護士法人に任せた方が多くの場合割安な国際法務)、従業員向けの業務(ex.社内研修、相談業務)ばかりに偏ってしまうと、企業そのもののグローバル化に飲み込まれ、日本人メリットが通用しなくなり、「重力の世界」に落ちていくというわけです。
日本人メリットにすがりつくのは“タコツボ”的発想でありよくないと考える方も少なくないと思われますが、いずれにせよ法務パーソンだから手に職で生き残り易いとか、希少価値があると慢心せず、
・アウトソースし得る仕事(契約書レビュー、国際法務)の時間的シェアが高くなり過ぎてないか
・顧客(従業員等の社内顧客ではなく)に対して直接の影響・価値を生み出せているか
を常に意識し、法務の中でもそういった仕事を積極的に選んでいく態度が、より必要になっていくのは事実でしょう。単に英語ができないとヤバそうだから英語を勉強して、英文契約書をレビューできるようになって・・・と反射的にスキルだけを身につけるような態度に終始しないよう、気をつけていきたいものです。
※なお余談ですが参考までに、弁護士については、資格があるからというよりも、相手にする顧客と関係者が日本人だからという理由において、以下引用部のように「グローカル」な生き残りやすい職業だと位置付けられています。
日本語の微妙なニュアンス理解が決定的に重要となる仕事は、やはり「生え抜き日本人」の独壇場である。たとえば弁護士は、裁判所で裁判官に主張を認めてもらわねばならない。裁判官の「心証」が判決に大きく影響してしまう仕組みになっているため、言葉遣いは、見た目の印象と共に重要となる。
裁判官は、国家公務員特別職なので、国籍条項によって100%日本人だ。育ったカルチャーの異なる外国人が日本の法廷で勝負しても、同じ土俵では戦えず、不利になるだけ。仮に規制緩和で資格の相互認証が行われ、外国人弁護士が日本で活躍できるようになったとしても、やはり活躍は難しい。
さらに弁護士は、3「信用&コミュニケーション」の条件も満たす職業である。日本人の顧客に、対面で日本語によって相談に乗るのが仕事なので、これが外国人に置き換わることは難しい。










